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笑顔の拒絶[Fantastic Fantasia]

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 高台から街を見下ろすと先程まで居た建物はビルに隠れて見えなかった。匂いが、薄まった匂いがレンに纏わり付く。今は其れがそれほど不快ではない。
 初めての街でも心細いと思うことは殆ど無い。半生を旅して過ごしたと言っても良いレンは何処でも馴染むことができたし、殆ど誰とでも意気投合することができた。どこでも寛げるという性質は誇っても良いとレンは思っていた。
 それが、今は少し落ち着かない。此の街が他人に見える。それはきっとあの店を知ってしまったからだ、と思う。知らない場所の中での知っている場所の安心をあの店はレンに与えてしまったから、だから此の街が他人に見える、とレンは幼子が駄々を捏ねる様に漫然と思っていた。
 鋭過ぎる勘は相手の行動を分からせ、対人コミュニケーションにおける圧倒的な優位をレンに齎した。しかしレンは彼の青年の行動が、望みが判らない。


作品名:笑顔の拒絶[Fantastic Fantasia] 作家名:幻夜