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ソラノコトノハ~Hello World~

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◆2章「Mysterious World〜ルゥラ〜」



『キョ…ス…キョロ……キョロスケ…』

(キョロスケ?)

 なぜに日本で大人気のアニメ「カエル侍」の主人公の名前を呼ばれているのだろうと勇哉は不思議に思った。

(オレの名前は、村上……)

 そう自分の名前を言いながら目を覚まし、勇哉はゆっくりと上半身を起こした。寝ぼけ目で辺りを見回すが、そこには人の姿はなかった。

(空耳?)

 と思いつつ、勇哉は布団の中に潜り込むと、再びどこからともなく声が聞こえてきた。
『キョロスケ、起きましたか?』

 勇哉はまた、ガバッと起き上がり、辺りを見回す。
 やっぱり、この自分の部屋には自分しかいない。声の元を探ろうと、ラジオやパソコン、ミュージックプレイヤーを見たが、それらには電源は入っていなかった。

 それじゃ、声はどこから聴こえてくるかと考えていると、また声が聴こえてきた。

『キョロスケ。起きましたか?』

 勇哉の頭の中からだった。
 そして声が聞こえてきて、一つ分かった事があった。

(夢じゃなかったのか……)

『夢って?』

(こっちの話しだよ)

 勇哉は素っ気なく返しつつ、奇怪の出来事に関して、ゆっくりと思い返していた。

 勇哉の頭の中に直接響いてくる不思議の声。その声を発している主の名前は、“ルーラ”なんとかと言うらしい。
 そのルーラの声が聞こえるという事は、昨日の出来事は夢ではなく、現実の出来事だったと改めて思い知る。

 勇哉は時計を見て時間を確認すると、目覚まし音が鳴る十五分前。いつもだったら、ここで二度寝をする訳だが……。

『そちらは朝なんですか?』

 この声が、そうさせてはくれないみたいなので、しぶしぶ起き上がり、服を着替え始めた。

(ああ、そうだけど)

『そうなんですか……。あ、今私の所はお昼なんです』

(昼?)

 という事は、この声の主は日本には住んでいないのかと逆算した。

『そうです。ですから、今私はお昼ご飯を食べながら、キョロスケに話かけていますよ』
(どうでもいい情報をどうも…)

 そんなどうでも良い事を話しながら制服に着替えて、台所へと向かった。

 台所では勇哉の母親が朝食の準備しており、いつもギリギリまで寝ているはずの勇哉を見るや驚き、早起きの理由を訊ねてきた。

「珍しい……どうしたの?」

「ただの気まぐれ」

 流石に頭の中に声が聴こえて、起こされたとか言うもんなら、熱が有るのでは無いかと母に心配されてしまう。なので、ありていの理由を答えてみた。

 勇哉は居間にあるテレビの電源を付けると、朝のニュースが放映されていた。
 アナンサーは、どこかの国で暴動が起きたとか、新型ウィルスが発見されたとか、円高とかのニュースを話すが、勇哉はそれを右から左へと聞き流す。

 そんなアナンサーの声と共に、不思議な声が語りかけてきた。

『今日こそは、オコノギという方に、私の事をお話しをしてくださいね』

 そういえば、そんな人と昨日、会って見たものの逃げられたな〜と思い返かえし、少し頭痛がした。本当に熱が出てきたのでは無いかと、自分の額に手を当てた。
 
(話しかけたら、突然逃げられたんだぞ。それだけでも結構イヤな気分になったというのに。それに、何を話すんだよ?)

『そ、それは……今のありのままのこの出来事を話してくれれば……。あ、それと、ちゃんと私の名前をその人に話してくださいね』

(話してくれって……)

 あの小此木琴葉に話しかければ、この呪い―ルーラ―から解放されると思ったのだが。
(そうだ。ちょっと別の話しになるんだけど。ちょっと確認したい事なんだけどさぁ)

『はい、なんですか?』

(オレの……心の声というのかな。まぁ、こうやって、アンタと話しているじゃないか)

『そうですね』

(それじゃ、オレが思っている事々って……全部聞こえているのか?)

『全部って…、どういう事ですか?』

(例えば、呪いとかなんとか、とか)

『いえ、そんなのは……。え、呪いって何ですか! 酷い! 私の事をそう思っているん
ですか!』

(不可解な現象が起きたら、大抵の人はそう思うわ!)

 ツッコミを入れつつ、

――という事は意識的に思い浮かべないと、自分の声はアチラに聞こえていないのか。
 なんとも都合の良い。いや、むしろ都合が良いのか、この場合は?――

 などと、勇哉の懸念事項が一つ解決した所で、朝食を食べなさいと母親に促された。テーブルの席に着こうとした時、自分の部屋から目覚まし音が鳴り響いた。

 そういえば、目覚ましのスイッチをオフにしてなかった。勇哉は面倒臭そうにシブシブと自分の部屋へと向かった。

     ***

 朝食を食べ終わった勇哉は、いつもより早く家に出ることにした。理由は言わずもがな。

『早く、オコノギに会いましょう。そして話しましょう。話せば、この原因が分かるかも知れませんよ』

 ルーラの要求が急かしく煩わしいので、ゆっくり出来ないからだ。
 ひとまず学校に着くまで黙ってくれと頼んだ。

 高校までの通学方法は、晴れの日は自転車。雨の日はバスと決めてある。
 そして、今日の天気は雲一つも無い日本晴れ。玄関口近くの壁に掛けていた自転車のカギを手にし、車庫の隅に置かれている自転車に乗り込んだ。

 高校までは、勇哉の家から自転車で十五分の場所にある。坂道を駆け下り、後は平坦の道を進んでいく。
 何の事故やイベントが起きる事も無く、無事高校に辿り着いた。


 自転車を駐輪場に置いていると、見知った人物を登校してくる生徒の群の中から見かけた。

 あれは昨日、勇哉の雑巾を首筋に当ててきた女子だったが、昨日とは違っていた。
 何が違っていたというと、ショートカットだった髪がセミロングに。そして眼鏡を掛けていた。

 勇哉はヅラを被ってイメチェンでも図っているのかと思ったが、とりあえず幼馴染でクラスメートのよしみとして声をかけることにした。

「おーい、志津香!」

 勇哉の声が聞こえてないのか、名を呼んだ女子は振り替えらず、スタスタと歩いていく。

 ・・・無視されたようで、少し気が悪くなったが。

「まぁ、良いか。教室で会うだろうし……」

 勇哉は自転車にチェーンをかけて、そそくさと靴箱へと向かっていった。

 靴を履き替え、階段を駆け上る。そして教室に辿り着き、生徒達が次々集まる中、勇哉が幼馴染―志津香―の姿を見かけると目が点になった。点になった瞳でジロジロと見つめていたら、

「なにジロジロ見てるのよ。キショイわよ」

 キショイとは、気色悪いの略語だが、ただ見ているだけで、キショイは無いだろう。それよりも、オレがジロジロ見てしまう理由は――

「いや、あれ?」

 ついさっき見た時は、髪がセミロングで眼鏡を掛けていた幼馴染のクラスメートは、昨日と同じ姿になっていた。

「ヅラは?」

「はぁ? 何言ってるのよ」

「いや、さっきさぁ……見かけたんだけど。その時、ヅラを被って、眼鏡をかけてなかったか?」

「はぁ? ……ああ、きっと、あれか……」

 志津香は何か思い当たる事があるのか、納得した表情をした後、不適な笑い顔を浮かべる。