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ソラノコトノハ~Hello World~

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『私も出来る、ことなら、いつまでもコトハ、やキョロスケと話しが出来たら良い、なと思いますよ。でも、永遠に続くもの、なんて無いんですよ。もしかしたら明日、キョロスケの命が失うかも、知れないのですから』
(恐いことを言うなよ。てか、えらくマイナス……悲壮的な考えだな)
『ごめんなさい。そういう生活を、していたので、そういう考えをして……しまうのです。でも……現に、声が聞こえなく、なりつつあるんですよ。叶わぬ希望を、語るよりも、目の前の絶望にどう対応する、べきかと思います』
 確かに、そう思う。だけど少しは気を使ってくれても思うのだが。
 それは、ルーラが宇宙人だから、そういう考えが出来ないのかも知れないからだと、勇哉は無理やりに納得しようとした。
『キョロスケ……私も辛いんです』
 その声は震えているようだった。
 もしかしたら、ルーラは最初から覚悟していたのかも知れない。いつの日か声が聞こえなくなる日を。
『それは、キョロスケもそう、でしょう?』
(つ、辛いとかよりも……まぁ寂しい、かな。声が聞こえなくなると……)
『……ありがとう、キョロスケ』

     ***

 ベンチに座り、手の平を空にかざす琴葉が見えた。
 勇哉以外の人達が見たら滑稽なことをしていると思われているだろうが、琴葉は他人の目などお構いなしだった。
 しかし、こんな所で羞恥を感じているのなら、高校の昼休みに中庭で堂々とやってはいない。
 勇哉は息を切らしつつ琴葉の腕を掴み、自分の肩にでも触れてルーラと話せと、半ば強制的に促した。それは琴葉が望んでいたことだったが。
 聞こえてくるルーラの声がいつもと比べて小さかったのが気になったが、すぐにそれが些細なことだと知った。
 ルーラは先ほど勇哉たちと話した事を琴葉に語り、その間、勇哉や本宮は静かに二人の話しが終わるのを待った。
「そ、そんな……」
 琴葉にとって、あまりにも衝撃的なことだったために、思わず言葉が漏れる。
(い、一時的なことじゃないんですか。声が小さくなっているのは?)
『そうかも知れない。だけど、そうじゃないかも知れない。でも、良いことを、考えるよりも悪いことを考えて、おいた方が、そうなってしまった時の心の負担は、少ないわ……』
(そんなイヤです! ルーラさんの声が、私の声がルーラさんに届かなくなるなんて!)
 琴葉の瞳から涙がこぼれだしていた。
『私もイヤよ……。コトハやキョロスケの声が聞こえなくな、るのは……。でも、私は……覚悟は出来ているの。いつの日か聞こえなくなる日が訪れて、しまうのを』
(どうしてですか! 折角、こうやって話せるのに、私の声が聞こえるのに。なんでそんなに簡単に……)
『それは……私がいる場所はコトハのいる場所から遠く離れているからね。こうして声が貴女に伝えられるだけ、でも、普通なら起こりえ、ないことで、こうやって話せることが奇異なことなのよ。それが、普通に戻るだけよ……』
(それでも……それでも……)
「私の声をずっと聞いて欲しいんです。ルーラさんに!」
 思わず心の声を口に出して叫んだ。周りの人たちは何事かとこちらの様子を伺うが、そんな人目を気にすることは無く、琴葉の涙は止まらない。
 二日前といえば……そう。志津香たちがルーラの声を聞いた頃からだ。
 もしかしたら、それが自分の声やルーラの声が聞こえなくなっている原因だと、安易に邪推してしまう。
(きっと……ルーラさんの声が聞こえなくなっているのは、ここにいるから……。本宮くんや只野さんがルーラさんの声を聞いているから……それで弱まっているんだ……)
 そして、琴葉は勇哉たちに背を向けて走り出した。
「小此木さん!」
 本宮が呼び止めようとしたが、琴葉は止まらない。
 突然の事に戸惑う勇哉と本宮。すべきことは、
「お、追いかけよう。村上くん」
 慌てて追いかけようにも、群集の波に飲み込まれて思う通りに前に進めず、二人は琴葉を見失ってしまった。
「なんで、いきなり走り出したんだ?」
 本宮のに疑問に、
「そんなのオレが解かるかよ!」
 そう答えるしかなかった。
「ルーラさんに聞いてみたらどうだい? ルーラさんに何か言われたからかも知れない……といっても、ある程度予想はできるけど……」
「ああ、そうだな」
(おい、ルーラ。聞こえるか? ルーラ?)
 またルーラとの交信が出来なくなっていた。
「また、声が聞こえないの?」
 肯定を表す首の動きをする勇哉。
「どうする?」
「村上くんは、小此木さんを引き続き探して。僕も小此木さんを探しながら、穂乃香ちゃん達を探すよ」
「ああ……そうだな」
 見失ったとはいえ、まだ園内にいるはずだと思った。
「四時になったら、見つけても見つけてなくても、あのフードスポットで集まろう」
 園内に設置されている時計塔の針は午後三時を指していた。そして勇哉たちは別れた。


 勇哉は辺りを注意深く見回しながら琴葉を探すが、人が多く一人一人の顔を見比べていたら人酔いをしてしまった。
「たくっ」と舌打ちをした時に、
『キョロスケ……』
 ルーラが呼びかけてきたが、その声はより小さくなっていた。
(ルーラか。おまえ、小此木に何を言ったんだ?)
『やっぱりコトハに、何かあったんですか?』
 ルーラに先ほどの出来事を説明しながら琴葉を探す。
『そうですか……。私はありのままを話しました。だけどコトハは、それを拒否したんです』
(それで、なんで逃げ出すんだよ?)
『ここから……そして、ヒロシ達と離れたら声が聞こえるようになるからだと』
(なんで?)
『コトハちゃんは、声が聞こえなくなっている原因は、それだと思ってしまったからだと思います』
(それでアイツ、逃げ出したのか……。で、小此木の声は聞こえてくるのか?)
『はい。小さな声で、微かにです、けど……』
(なんて?)
『また独りだけ、で私に話しかければ、声が聞こえる、ようになると……』
 その言葉から、琴葉が中庭で独りぼっちで空に手をかざすシーンが思い浮かんだ。
(あいつ……)
『キョロ、スケ。私の我侭かも、知れませんが……』
(解かってるよ。もうここまで関わってしまったんだ。最後の最期まで面倒を見てやるよ!)
『キョロスケ……ありがとう』
(とにかく、小此木を探すことが先決だな……。ルーラ、何か小此木がどこに居るのかのヒントになりそうなことを語ってきたら、直ぐに教えてくれ)
『解かり……。キョロスケ』
(ん?)
『ひんと……とは、どういう、事ですか?』
(そ、それはだな……)


 ルーラと連絡を取りながら探すものの琴葉を見つけ出すことが出来ず、午後四時近くになろうとしていた。その時、場内アナンスが園内を響き渡った。
「迷子のお呼び出しをします。伊河市からお越しの小此木琴葉さん。お友達がフードスポット内のホットドックハウス・アポロの前にてお待ちしております」
 思わず「ブホッ」と噴出してしまう。
「繰り返し、ご連絡致します。伊河市からお越しの小此木琴葉さん。お友達が……」
 高校生で迷子アナンスをされるとは……自分だったら恥ずかしくて溜まらないなと思いながら、指定された場所に向うことにした。