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ソラノコトノハ~Hello World~

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 さっきルーラに言っていたことは違うことに矛盾を感じた。
「ユウ! 何しているの? 早く行くわよ」
 先行く志津香に呼ばれ、その後を追いかける。
 とりあえず昼飯を食っている時にルーラに伝えておくことにした。

     ***

 フードスポットとは、ホットドッグやハンバーガーなどの軽食フードの売店が集まっている場所の総称。
 そこで勇哉たちは、自分が食べたいものを買い、買ったものをテーブルに広げて食していた。
「しかし、こういった所のファーストフードはなんであんなに高いんだ。マックとかモスとか参入してくれれば良いのに」
 一個五百円もするホットドッグを頬張りながら、パンくずと値段に対する不満を溢し、空腹を満たす。
 勇哉を慰めるかのように本宮が答える。
「まぁ、そうだけど。場所が場所だからね」
 そして志津香がジュースを飲み干したところで、
「で、この後どうしようか? バードマン? ゴールドラッシュ? スカイウォーク?」
 志津香がこれからのスケジュール―乗るアトラクション―についての意見を募る。
「シヅちゃん……それ全部絶叫系。もっとゆっくり皆が楽しめるものにしようよ。セグウェイなんてどう?」
「え〜。てか、なにセグウェイって?」
 本宮が持っていた園内マップを机に広げて、行きたい場所を指し合う。
「ほら、小此木さんも行きたい所は無いの?」
 話しに加わらず縮こまっている琴葉に、穂乃香は積極的に話しを振ってみるが。
「わ、私は……どこでも…」
 琴葉は、一言で済ます。
「でも、人が多いし並ぶ時間が勿体無いから、各自別れて自分の好きなモノに乗るのも良いよね」
 意見が纏まらないとみるや本宮が一案を発し、その案に勇哉が賛同する。
「だったらオレは、久しぶりにゴーカートに乗りたいな。前にここに来た時は小学生の時だったからな」
 これ以上、志津香と一緒にいたら絶叫ものばかりになってしまうと恐れたからだ。
「良いね、村上くん。僕もゴーカートに乗りたいし、競争でもするかい?」
「お、サーキットの狼と呼ばれていたオレに挑むのかい」
「それじゃ、各自自由行動にしようか」
 志津香の言葉に勇哉たちは同意する。
 そして志津香と穂乃香は、バードマンのアトラクションへ。
 勇哉と本宮、そして琴葉はゴーカートへ行くことになった。
「小此木さん。私たちと一緒に行きましょうよ」
 穂乃香は誘うものの、
「わ、私は……村上くんと一緒にいく。じゃないと、ルーラさんと話しが出来ないから……」
 志津香はそれを聞くと、そっぽを向いて歩き出した。志津香の表情が少し強張っていたのに、穂乃香は気づいた。
「穂乃香、早く行きましょう」
 先行く志津香は穂乃香を呼ぶ。
「う、うん」
「それじゃ五時ぐらいに、ここに集まろうか」
 本宮の号令で、各グループは目的の場所へ向った。

     ***

 バードマン……最近出来たもので、人間を高く吊り上げて、ブランコのように前へ後へ滑空するアトラクション。ただ、このアトラクションは一人だけではなく、最大三人まで同時利用できるので、カップルとかに人気が……特に無いアトラクションである。
「シヅちゃん。どうしたの、さっきから険しい顔で」
「いやー、流石にこれは戸惑うわね」
 志津香は顔を見上げて、先にアトラクションを体験している人達の様子を見ていたが。
「勇哉くんと小此木さんのこと」
「なっ!」
 思わず噴出し、穂乃香を二度見る。
「なによ、いきなり!」
「勇哉くんと小此木さんが一緒にいたり話したりしていると、シヅちゃんの機嫌がなんか悪くなるんだもん」
「別にそんなこと無いわよ」
「そんなこと無かったら、私の心がモヤモヤとしないわよ」
 意地悪そうな顔を浮かべる穂乃香。
「私たちも勇哉くんとルーラさんみたいに波長が合うんだから」
「ふんっ」と、そっぽを向く志津香。
「た、ただ……腹が立つのよ。あの子を見ていると。もし、ルーラさんと話せなくなったらどうするのよ。勇哉がいなかったらどうするのよ」
 志津香もまた消失感を知っている。大切の人と離れ離れになることの消失感を。
 だからこそ……。
「イライラするのよ。まるで昔の私みたいで」。
「そうか……」
 穂乃香は妙に納得したような顔をしていた。
「小此木さんって、そこが姉さんに似ていたからだ。だから……なんとなく、ほっとけなかったのかな」
「そんなにあの子が気に掛かるなら、一緒に行ってくれば良かったのに」
 ムッとむくれている志津香の左手をそっと握る穂乃香。
「な、なによ」
「今日は、シヅちゃんと一緒に遊びたいの。あの時以来だもんね。シヅちゃんと遊園地で遊ぶのは」
「なっ……ふんっ!」
 志津香は照れを隠すかのように、プイッっとそっぽを向いた。そして、志津香の後頭部から「ふふ」とはにかんだ笑いが聞こえてきた。それが気に食わなかったが、耳が真っ赤にした志津香はここは敢えて堪えた。なぜなら、その笑い声が十分後には叫び声に変わるのだから。


 ゴーカートは、どの遊園地でも一、二位を争うほどの人気アトラクションである。
 勇哉と本宮は、どちらが速くゴールできるか、熱いレッドヒートを競っていた。そして、琴葉はゴーカートの入り口近くのベンチに座っていた。
 そして、そっと空に手をかざし、
(ルーラさん、聞こえますか? 木星遊園地には、私が小さい頃に来たことがあります。だけど結構変わっていて、戸惑いました。そして、生まれて初めてジェットコースターに乗りました。只野志津香さんに無理やり乗せられたんだすけど。もう動き出したときから怖くて、それが段々と頂点に移動するときなんて、もう心が破裂しそうでした。もう絶対に乗りたく無いです。そういえば、ルーラさんの星にもジェットコースターみたいな乗り物はありますか?)
 読書感想文のように伝えたいことを伝え、勇哉達が来るのをただ静かに待っていた。
 琴葉は人が集まる場所は苦手だった。だから、穂乃香に誘われた時には最初は断ろうとしたが、
――(皆さんと遊びに行くんですか? だったら、行って楽しんでください。そして、私に話してください。どんな事で何をしたのか教えてください。それが私の楽しみですから)――
 遊園地に行けないルーラの為に琴葉は出来る限り、今日の出来事や体験をルーラに伝えることにした。
 だから、こうした人込みの中にいても、なんとか耐えていた。
 そして、熱いデッドヒートを繰り広げていた勇哉と本宮が戻ってきた。
「タイムはオレのが速かったな」
「そうだとしても、僕のはコースに一度もぶつかっていないんだよ。村上くんは、どうせスピードを出し過ぎて、ぶつかりまくったんだろう」
「いやいや、そんなドライビングテクニックを自慢されてもな。ゴーカートの本質は、如何に速くゴールしたかだろう?」
 勝ち負けを決めるために、子供じみた議論を飛ばしながら琴葉が座るベンチの元へ近づいてきた。
「あ。待った、小此木さん?」
 ベンチに座っている琴葉は、そうではないと首を横に振る。
「次はどうする。また、ゴーカートに乗るか?」
 久しぶりにゴーカートに乗った勇哉は幼い時の興奮が蘇り、いまだ冷めやらぬご様子。