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ソラノコトノハ~Hello World~

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◆6章「Starry World〜声〜」



 志津香たちにルーラの事を話してからは、昼休みや放課後に話す機会が増えた。話すことは、もちろんルーラ絡みの事ばかり。
 ルーラは何者なのか? 身長は? 住んでいる所は何処なのか? などなど。まるで当初の勇哉たちと似たような質問ばかりだったが、本宮はもう少し深いところを訊ねていた。
 酸素はあるのか? 重力は? エネルギーは? などと、勇哉的に言えば「そんなのを知って、どうするんだ?」と、ルーラも少し返答に困っていた。
 先日のファーストコンタクト―志津香たちとルーラの会話―の後で、穂乃香が言うには本宮は宇宙とかに興味があるらしく、いわゆるSFオタらしい。
「なんだ、将来NASA辺りにでも就職したいのか?」と冗談交じりで訊くと、
「それが僕の目標だからね」
 本宮の瞳は本気だった。
 さて、それは置いといて。
「小此木さんは小学校とか中学校の時でも、宇宙との交信をやっていたんでしょう。それがなんで高校生になってルーラさんに届いたの?」
 志津香のふとした疑問に、
「多分、場所的に良かったも知れないよ。テレパシーというのは、電波みたいなものだという説があるから。ほら、羽ヶ崎高って高台にあるだろう。それで電波状況が届きやすくなって、小此木さんのテレパシーの電波がルーラさんに届いたのでいないかと」
 ハードSFオタの本宮が解説と解釈してくれて、一般的な知識しか持たない勇哉たちをなんとなく理解させたが、
「そんな理由なのか? てか、小此木の声がルーラに届くのは良しとして、なんでオレがルーラの声を聞けたりするんだよ。普通だったら、小此木とルーラ間で交信するもんじゃないのか?」
「それは、波長が合ったんじゃないかな。ほら、携帯電話とか無線機とかでもそうだろう。特定の周波や電波で受信送信できる感じで、ルーラさんのテレパシーの波長が村上くんに合っていたんじゃないのかな」
「オレは携帯電話か!」
「そもそも村上くんの場合はテレパシーとかじゃなくて、チャネリングの方が正しいかも知れないね」
「ちゃ、ちゃねリング?」
「チャネリングというのはね、テレパシーの一種なんだけど、テレパシーとはちょっと違うんだ。やりとりができないような相手……例として挙げるのなら、神様とか精霊とかの霊的な存在や未来人や宇宙人とかの未知の存在とかと交信ができる事なんだ。テレパシーは一方的にかつ単独的にしか伝えられないけど、チャネリングはその存在との交信……声を聞くことができる。つまりテレパシーは他の人に自分の声を伝えるけど、チャネリングは他人の声を聞くを主にしている感じかな。ちなみにチャネリングができる人をチャネラーというんだけど、代表例としてシャーマンとかイタコとかがチャネラーと云われているんだ。有名なところでは邪馬台国のヒミコもチャネリングが使えるチャネラーだという説もあるんだよ」
 本宮が目を輝かせてペラペラと語り、専門的な用語が次々と飛び出してくる。こういった専門的な知識はそれらが興味ある人間に語るのなら良いのだが、一般人である勇哉たちにとっては聞くに堪えない話しであり、聞いているだけで辟易してしまう。
 それに、それをルーラに伝えても、
『?』
 と理解してくれる訳が無く、勇哉は噛み砕いて説明するしか無かった。その作業がよりいっそ勇哉を辟易させる。
 だけど、琴葉とルーラとの三人で話すよりは、こうして多くの人と話した方が楽しかった。これが、ルーラが言う“話が輪を広げる”というものだろうか。
 しかし、どうも琴葉の方は、そう思っていなさそうな感じだった。
 そんなルーラ関連の話しをしながら、勇哉たちは今バスに揺られて、ある場所へと向っていた。それはゴールデンウィークに突入する前日に、穂乃香が五枚のチケットを持ってきた事に始まる。

     〜〜〜

「ねぇ小此木さん、勇哉くん。ゴールデンウィークは予定が空いていたりする?」
「一応……今のところは、何も予定は無いな」
 勇哉はサンドウィッチをほお張りながら受け答えた。
「小此木さんは?」
 首を横に振る琴葉。
「だったら、空いている日にでも此処に行かない?」
 穂乃香はおもむろに制服のポケットからチケットを取り出す。
「これは……」
「木星遊園地の無料チケット、フリーパス半額付き券よ」
 穂乃香が持っているチケットの一枚を志津香が引いた。
「どうしたのよ、これ?」
「ほら、あれ。市民活性プロジェクトプレゼントで、ウチに当たったの」
 市民活性プロジェクトプレゼントとは、伊河市では市内活性化運動として、毎週市役所が伊河市民を対象に、抽選で街のレジャー施設などの無料券や商品券が配られるものである。
「あれって、都市伝説じゃなかったんだ」
「当たる時は当たるのよ。で、ちょうど五枚あるし、みんなと遊びに行かない?」

     〜〜〜

 という訳で、こうして駅前からバスで四十分の所にある木星後楽園遊園地へと向っているのだった。
 ちなみに、木星後楽園遊園地とは市を飛び越えて県内でも一番大きな遊園地で日本でも名の知れた有数のレジャーランド。
 そして遊園地の名前にもなっている木製できたジェットコースター『ジュピター』が目玉で、一度来園したのならば是非乗って貰いたい。

「ルーラさんの星にも、遊園地みたいな娯楽施設とかはあるんですか?」
 穂乃香の質問を琴葉がルーラに伝え、
『ありますよ。人気だったのはクルストゥラという所でしたね。拳ぐらい大きさ球を転がして、並べられている柱を倒す遊びをする場所なんです』
 穂乃香や本宮は勇哉の肩に触れ、ルーラの声を聞いている。
「私達の言うところのボウリング場みたいな所ね」
『え、地球でもクルストゥラに似たものがあるんですか?』
「そうですね。でも、こっちでは投げるボールの大きさはサッカーボールぐらいありますけどね」
『え、さっかぼーる?』
 などとルーラと話しながらバスは進む。話しも一段落着いた所で、木星遊園地のシンボルである木製ジェットコースター『ジュピター』が見え始めた。そろそろ到着だ。
 その前に勇哉は、朝から気になっていた事を訊ねた。
(な、ルーラ。なんとなくだけどさぁ、聞こえてくる声が小さいんだけど)
『そうですか? 私はいつも通りに話していますけど……』
(そうか。どこか元気が無いような感じがしたんだけど)
『あら。キョロスケ、心配してくれているんですか?』
(そ、そりゃ具合が悪いと思ったら、訊くもんだろう)
『ふふ』
(な、なんだよ)
『いえ。最初の頃は私のことを煩わしいと思われていたのになと……』
 ルーラの声が聞こえるようになって、七日間以上は経っている。もはや聞こえるという事が普通になってしまっていた。慣れというのは恐ろしい。
 朝起きる時も目覚まし時計の音で起こされるよりも、ルーラの声で起こされる。もはや、生活の一部にまで浸透していた。
(まぁ、危険なものとか怪しいものでは無いと解かったからな)
『そうですか。私もそれなりにキョロスケの事やコトハの事を理解できてきたような気がします』
 その言葉に、なんだか感慨深いものがあった。つい七日間前は、まったく知らない相手、ましてや宇宙人。