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ソラノコトノハ~Hello World~

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「まぁ、乗りかかった船だ。話し相手ぐらいにはなってやるよ」
 言いたいことを言って、そっぽを向いた。
『それにコトハ。お昼の時に話し合っていた人達は、悪い人じゃないんでしょう? 誘われて一緒にご飯を食べるぐらいだし……』
「只野さんと本宮くんは……でも……」
 知らずの内に、琴葉の心の声を漏らしていた。言葉を濁す琴葉の気持ちを汲み取って、
勇哉が濁された相手に対してフォローを入れる。
「志津香は悪い奴じゃないよ。まぁ、ちょっと性格はおろいけどな……。まぁ志津香は只野穂乃香の双子の姉なんだから、幾分かは大丈夫だろう」
 しかし、志津香がなんかギスギスしていたのは引っかかるが……。
「でも、何を話しをすれば良いの? 何を……話しても、あの時のように……」
「もう、いっその事。ルーラの事を話すか」
「でも……」
 昼休みの志津香とのやり取りを思い出す。
「あの時は誤魔化しながら話したから、冗談だと思われたんだよ。本当の真実を話して、信じてくれるなら、それで良いし。ていうか、証拠を突き出せば疑いもないだろう」
 勇哉は人差し指を、証拠がある場所――天へと指した。
「まぁ、あまり大きく広めるのもアレだけど……信じてくれなかったら、その時はオレも一緒に馬鹿にされるだけだ」
 勇哉は決めた。琴葉との噂が手に負えないぐらいに広がっている現状で、もうどんな噂が囁かれても気にしないようにと――
「まぁオレは、もう覚悟を決めたよ。今」
 琴葉は何も言わず、ただ俯いたまま。
「ごめん…なさい。こんな時……何を、言ったら……良いのか……」
「別に言いたくなかったら言わなくていいさ」
「村上、くん……」
『コトハ。何も言いたくない時は言わなくていいわ。話したくなった時に話したらいいわ』
 偶然にも勇哉が語った内容と同じだった。
すると琴葉に笑みがこぼれる。
「村上くん、ルーラさん……ありがとう……」
 思いを浮かべると共に言葉を告げた。現時点で、琴葉の話の輪の中にいる二人に。


 勇哉達の話しが一通り終えた時は、既に太陽は山の向こう側に隠れてしまい、暮れていた。
 いつもなら、まだ部活動をしている生徒達がにぎわっているが、来週に実力テストが控えているために、どの部活も当然休みとなっている。
 静寂な校舎を勇哉と琴葉は並んで歩く。
 さっきまで、この夕暮れと同じような暗い顔をしていた琴葉は、少しだが和らいだ表情になっていた。
 この状況を誰かに見られたら、勘違いが余計に拍車がかかるだろう。しかし、勇哉はその事よりも考えることがあった。
 誰に真実を語るか。
 候補となるのは、やはり。
「とりあえず、あの三人には話した方が良いかな」
「三人?」
「本宮宏と只野穂乃香、そして志津香だな。本宮と只野……もういいや。本宮と穂乃香とは中学校時代の知り合いだから、少しは理解があるだろう。たぶん、ルーラとかの話しをしても受け入れてくれるだろうし、あの二人は大丈夫だろう。うん」
 その件に関しては琴葉も依存は無かったが、
「た、只野さんのお姉さんは……」
 あの昼休みの一件で、琴葉にとって志津香は苦手なタイプになったようだ。
「双子だから、仲間外れにしても出来ないだろし……どっちにしろ、本宮とか穂乃香経由で知ることになるだろうしな」
 琴葉の足取りが重くなったのか、歩くスピードが落ちた。
「なぁ小此木、少しは志津香にも感謝してやってくれると知り合いとしては嬉しいな。あいつが居なかったら、あの世紀の大発見は無かったかも知れないんだからな」
「大発見?」
「オレの身体に触れれば、ルーラの声が聞こえるってやつだよ。志津香が、タイミング良く触れていなかったら、もしかしたら永久にルーラの声を小此木は聞けなかったかも知れないんだぜ」
 琴葉しピタっと足を止める。
「どうした?」
「それもルーラさんが言っていた“話は輪を広げる”っていう、ものなんでしょうか……」
「そう……なるかも知れないな。ルーラから志津香。そしてオレが気付いて、小此木に伝えて、そしてルーラの声が小此木に届いた」
「……ルーラさんが言っていたことが、なんだか解ったような、気がします」
「そうか。だったら、ルーラに伝えておくんだな」
「はい」
 琴葉はいつものように両手を挙げ、言葉を念じる。さっきよりも、良い顔で。
『どういたしまして』
 ルーラの言葉が返ってくる。勇哉は、それを琴葉に伝えると、恥ずかしがるようにはにかんだ。
「さて、それじゃ。ルーラの事を志津香達に話すにしても、明日あさっては土曜、日曜で学校が休みだしな。しかも実力テストか……ああ、勉強しないとな……」
 非情な現実がせまり来ることに肩を落とす勇哉。本来なら、そっちの方に気を使わなければならないのだが。
(という訳でルーラ。ルーラの事を志津香達に話すのは、三日後になるわ)
『そうですか……分かりました』
 勇哉はルーラに事情を話しつつ、学校近くのバス停所までやってきた。
「あ、私……バスだから」
「ああ、そうか……。んっ、何かを忘れて……あっ!」
 駐輪所に自分の自転車を置いてある事を思い出す勇哉。
「わりぃ、小此木。オレ、自転車だったわ」
 ここで別れを告げて来た道を戻ろうとすると、
「あ、む、村上くん! ル、ルーラさんのこと……」
 今まで聞いた中では、一番大きな声で呼び止められた。
「とりあえずは、来週のテストが終わってからだな。それまでテストに備えて勉強に集中。それじゃ小此木もテスト勉強、しっかりやれよ」
「う、うん」
 そそくさに勇哉が駐輪所へと向かう中、琴葉は少しより早く来たバスに乗り込んだ。バスの後ろ窓を覗き込み、勇哉の姿を追いかけた。

     ***

『シュベリア……あっ、そっちの言葉ではテストというのですよね。試験のことを』
(まぁな。しかし、試験と言われたら、少々大げさな感じがするけどな)
 わずかな電灯の明かりと自転車を置いた場所の記憶を頼りに、自分の自転車を探す。幸い駐輪所には、ほとんど自転車が無く、自分の自転車はいつもより簡単に見つかった。
『前から思っていたけど、そちらの世界の言葉は他の外国語も組み合わせて使っているのね』
(言葉使いの豊富さと柔軟さに関しては、世界一らしいからな、日本語は)
『試験か……』
(そういや、ルーラも学生とか言っていたな。やっぱり、そっちもテストとかあるのか?)
『………』
(ルーラ?)
『あ、はい。ありますよ、もちろん』
(そうか、やっぱりあるのか)
 どの世界も、どこの惑星も、生徒にとって嫌なものを行うものだなと、ため息を漏らしながら、自転車に掛けていた鍵を解除し、サドルに乗っかる。そして、備え付けている電灯を入れ、準備万端。
「さてと、帰りますか」
 独り言を呟き、ペダルを漕ぎ出す。
(で、ルーラ。そっちのテストは難しいのか?)
『それなりだと思いますよ。でも、しっかり勉強をしていれば、困ることはありませんね』
(やっぱり勉強は必須なのか……)
 何台ものの車に追い越され、テールランプを追いかけるようにペダルを漕いで自転車は進む。
 やがて緩やかな坂道を下りにかかると、ペダルを漕ぐ足が止まる。少しばかりの楽々タイムに突入。