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ソラノコトノハ~Hello World~

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「小此木。今から言うオレの言葉は、ルーラの言葉だからな。ちゃんと聞けよ」
「………」
「そのなんだ。人の輪に入って、楽しい話しをした方が……」
「………」
 黙って聞いているのか……いや、これは――
(おい、ルーラ。駄目みたいだぞ。なんか、話しを聞いていないっぽい)
『聞いていないって、ちゃんと話しているのですか?』
(話してはいるが……上手く話せていないからと思う)
『なんでですか?』
(なんでって…その、恥ずかしいというか…なんというか……)
『恥ずかしいって……ただ私の言葉を伝えてくれれば良いんですよ?』
(そんな事を言うなら、直接自分で……って、伝えられないんだったな)
 勇哉とルーラが話し合っている中、それは無口な間だった。だが、目の前に勇哉がいることが気になる。
「む、村上くん……。ごめんなさい。しばらくは一人にして、欲しいの……」
 勇哉を見ずに琴葉は小さな声で呟いた。
「小此木……」
 言われた通りに、その場から立ち去ろうとした時、勇哉は志津香との出来事を思い出し、ある事を試してみようと思った。
「そうだ。なぁ、小此木。ちょっと試しにオレの肩に触れてみてくれないか?」
「えっ?」
 なぜをそんな事をしないといけないのかと訊ねてくる。
 勇哉は、もしかして自分の憶測が勘違いだったりお門違いだったりした場合、小此木を失望させないために、あえて事の真意は伏せた。
「いいから。触れて何も無かったら、オレは何も言わず帰るよ」
 何で?
 と疑問は晴れないまま、琴葉は優しく静かに勇哉の肩に手を当てた。
 勇哉は、いつもの通りに(おい、ルーラ)と念じ呼びかけた。
 そして、
 『はい、なんですか?』とルーラが答えると、琴葉が「え!」と驚きながら手を肩から離した。
 勇哉の憶測は、どうやら当っていたらしい。
「む、村上くん……今のは……」
「声が、聞こえたのか?」
「うん」と言いつつ、何が起きたのか理解が出来ないままに頷く。
「あれが、ルーラの声だよ」
「え! あ、それって……」
 思いもがけない出来事に驚き、どうしていいのかと困惑する琴葉。
 本当に知り合ってから何回驚いてくれているんだコイツは……と、勇哉は思いながらも、ルーラに事の報告をした。
(という訳で何か知らんが、ルーラの声が直接、小此木に伝わるみたいだから、何でも語ってくれ)
『えっ! という訳って? キョロスケ、それってどういう事なんですか?』
 と、琴葉と同じく状況を把握しきれていないルーラ。
(なんか知らんが、俺の身体に触れていると声が伝わるみたいだ)
『ほ、本当ですか?』
(ああ)
「ほら、小此木」
「あ、はい」
 勇哉は自分の肩を指し、再び琴葉は促されるままに肩に触れる。
『本当なの。コトハ?』
 初めて勇哉ではなく琴葉に対して語りかけるルーラの言葉に、
(聞こえます。ルーラさんの声が聞こえます)
 琴葉はいつも同じに手を天へと差し伸べ、期待に応えるかのように答え返す。
『不思議ですね……。キョロスケ経由で、コトハとは何度も話しあっているのに……こうして直接、声が伝わっていると思うと、なんだか初めて話しているような感じがするね』
(わ、私もです……。え、あ、……キョロスケって?)
『あなたの隣にいる人物のあだ名ですよ』
 チラリと隣にいる人物を見て、キョロスケが村上勇哉だという事を把握する。
『そんな事より。コトハに訊きたい事があるの。どうして、他の人達と話しをしないの?』
(そ、それは……)
 勇哉はルーラの声は聞こえているが、琴葉の声は聞こえてはいなかった。ルーラが語る内容を察し、あえて何も語らずにいた。
 今は通訳者では無く、電話機のような役目に徹することに決めていた。
『いつもコトハが話してくれることは、自分のことや地球のことばかり。たまにキョロスケが話しに加わりますけどね……』
 ルーラは少しの間を置き、
『人と話すのがイヤなの?』
 核心を突く発言に、琴葉の表情が強張る。
(イ、イヤというか……私……こんなんだから、からかわれる事が多くて……それがイヤで。それに……きっと誰も、私なんかと…話したくない、です。だから……)
『でも、私と話しているけど?』
(ルーラさんは特別です!)
 勢い余って、立ち上がる琴葉。
『特別か……。なんで特別なの?』
(そ、それは……ルーラさんは、私の声が聞けた人だし……別の星の人だし)
『そう……。確かに私は、コトハの声が聞こえたけど、私達の会話はキョロスケがいなければ出来ていないのですよ』
 琴葉は、自分の手を置いている人物の方を、そっと見た。
 勇哉は何も黙ったままだった。
『コトハ。それにあなたが、からかわれていて変な人扱いされているとしたら、私は一体何なの? あなた達、地球人と比べたら、私の方がよっぽど変よ』
(ル、ルーラさんは変な人じゃありません。だって……私の声を……)
『声を聞けるんなら、隣にいる人でもアナタの声が聞けるでしょう』
(村上くんは……)
 言葉が思い浮かばない。
 勇哉がいるから、ルーラと話せている。勇哉もまた自分にとって特別なのかと解釈しようとするが。
『私だから特別なんかじゃないの』
 真っ先にルーラが否定した。
『なぜ、私とあなたが話せるのか。それは、コトハが私に、あなた自身の事を話してくれたらから。そして、キョロスケがいるからよ。 コトハの声が、最初はなんだったのか解らなかった時は、不審なものでしかなかった。だけど、その声に耳を傾けて聞いていると、コトハという人が話していることを知った』
 ルーラは言葉を続ける。
 琴葉はただ黙っていた。
『ねぇ、コトハ。私の世界の教えにね。“話は輪を広げる”というのがあるの。話によって人の輪が広がるという意味なの。現に、アナタから私。私からキョロスケ。そして、キョロスケからアナタへと、話しによって輪が広がっているでしょう。だけど、この輪は誰かが欠けてしまったら、もし私がいなかったら。もしキョロスケがいなかったら、それだけで輪は途切れていたのよ』
 ルーラの言葉は、とても落ち着いた口調だった。まるで、母親が優しく子供に言い聞かす御伽噺のように。
『無理とは言わない。でも出来るだけ、あなたと話してくれる人がいるのなら、話しをして欲しいです。コトハのことやキョロスケことの“以外”の話してくれたら、私は嬉しいわ。もちろん、それが楽しい話だったら、なお良しですね』
(でも、何を話したら良いの。何を話しても、馬鹿にされたら……)
『あなたが私に話しをしてくれた事を話せば良いのよ。コトハの事をきっとよく知らないから、相手もどう接すれば、何を話せば良いのか解らないのよ。今までコトハの周りの人達は、きっとコトハの外見だけで判断してしまっていたんじゃないのかな』
 その言葉に、勇哉には思い当たることがあった。
 まぁ、たしかに……なぁ。と口に出さず納得した。
『大丈夫。今のあなたは独りじゃない。私がいるし、キョロスケもいるでしょう』
「なっ!」
 突然のご指名に思わず身体を揺らし、そっと後ろを振り返ると琴葉はパチッ開いた目と合う。
 勇哉は視線を外して少し照れつつ、