小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ソラノコトノハ~Hello World~

INDEX|18ページ/41ページ|

次のページ前のページ
 

「双子ぐらい言えよ。何年だ? 五年近くの知り合いなのに、こんな凄いことを今教えられたら、誰だってビックリするわ! というか、なんで今ここでカミングアウトをするんだよ」
「びっくりさせるために、こうやって高校入学まで内緒にしていたのよ」
 意地悪な笑顔を浮かべる志津香。
 勇哉は横目で穂乃香を見つつ、牛乳パックのストローに口を付けた。
 確かに、眼鏡をかけて髪は長いが、見た目は志津香に似ている。ただ、少しだけ目つきが志津香よりも、ほわんと柔らかい感じがした。。
「ところで、どっちが姉で妹なんだ?」
「あ、それはね……」
 穂乃香は少し困った顔で志津香に視線を送り、志津香が面倒臭そうに話す。
「ああ。私たち、どっちが姉で妹なのか解らないの。というか、教えて貰っていないのよ。どっちが先に生まれたのかは」
「なんで?」
「それは、実のお母さんの教育方針なんです。たった一分二分早く生れただけで姉、妹と判別するのはおかしいという事で、私たちに教えなかったんです」
 穂乃香が補足を加える。
「なんだ、それ。おかしな教育方針だな?」
「私もそう思うわ」
 志津香は呆れたように口にし、穂乃香が苦笑する。
「でも、姉とか妹とか知らなくても困ったことは無いですよ。シヅちゃんはシヅちゃんだし、私は私ですから。ただ、毎回こうして説明をするのは困りものですけどね」
 穂乃香は志津香と比べて大人しいタイプだと、柔和な感じの口調で判断した。
 勇哉は、なんで転校してきたのが穂乃香じゃなくて、志津香なのかと頭の中だけで思うことにした。もし口にしたら、志津香の愛のある拳が飛んでくると長年の経験で学んでいたからだ。
 改めて、志津香と穂乃香を見比べ、やっぱり双子なんだなと再認識しているとルーラの声が響いてきた。
『どうしたんですか? コトハと話してないんですか?』
(どうしたも……今、小此木とオレは。オレの知り合いと一緒にメシを食うために囲われているよ。だから、暫くは小此木とは話せないぞ……)
『え、そうなんですか? それは、楽しそうですね』
(楽しそう?)
 チラっと琴葉の方に目を向けると、自分の弁当に箸を付けたまま俯いていた。
 明らかに、この雰囲気に馴染めていない。
(楽しそうでないヤツがいるけどな……)
 ルーラと会話はしているが、その光景はただ黙っている勇哉に、志津香はお返しにと本題に戻す。
「まぁ、そんなことよりも。なんでアンタと小此木さんが付き合うにようになったキッカケはなんなのよ?」
 双子という衝撃的な事は志津香にとっては軽いものらしく、あまり触れて欲しく無い話題を勇哉に投げかけた。
「付き合うって……。ご期待に沿えられないが、オレと小此木は付き合っていないよ。ただの話し相手だよ」
「ただの話し相手?」
 志津香は琴葉の方を向き、確認を取る。
 琴葉は、いつもの様に「えっあっ」と戸惑いつつも、志津香の問いに促されるままに頷く。
「な〜んだ……。それじゃ、なんで話し相手になったの? やっぱり、小此木さんが毎日昼休みにやっていた儀式が関係あるの?」
 一瞬で、場の空気が固まった。
 勇哉もとより本宮や穂乃香も口を噤んでいる。
 質問した当の本人も「あれ?」と場の変化に気付くも、琴葉はさらに俯いた。
 穂乃香が志津香を優しくも鋭い視線で睨みつけ、それとなく琴葉を気遣う。
 この重たくなった空気を緩和するために、自分から何か言わないといけないと思い、勇哉は口を開いた。
「いや〜キッカケは……。天からの声に誘われたから…」
 嘘は言っていない。
 それに笑いが取れる発言だったと思ったが、今度は志津香が冷ややかな視線と言葉を、勇哉に投げかける。
「なに、それ? アンタもオカシクなっちゃったの?」
 その言葉を耳にした途端、琴葉は弁当箱を持ったまま、さっと立ち上がりその場を去っていった。
 穂乃香は「シヅちゃん!」と諌め、琴葉の後を追いかけようとした。
「僕も行くよ」と本宮も立ち上がると、穂乃香は「私だけでいいよ」と言い、本宮は遠ざかる穂乃香の姿を眺めていた。
「あれ? 今の問題発言だった?」
 突然の琴葉の行動に、状況が掴めない志津香は呟くと、本宮は少し困った表情で腰を落としながら、受け答えた。
「まぁね。小此木さんは、あの行動の所為で昔からバカにされていたから、中傷するような言葉に敏感になっているんだよ」
 志津香は眉をひそめるも、反省を滲ませた顔を浮かべた。
「あれは、ユウに言った事であって……あの子に向けては……」
「あれ、僕の聞き間違いじゃなければ、“も”って言わなかったけ?」
「あれ? 言ったかな? 聞き間違いじゃない」
 しれっと答える志津香に対して、本宮は愛想笑いで返す。そして、流れるがままに勇哉に話しかけてきた。
「でも、村上くん。あの小此木さんと、よく話し相手になったね。それで、どんな事を話しているんだ。中学校の時、僕とほのちゃんが話しても、そんなに話が続かなかったのに……」
「どんな事を話してるかって……」
 ふと、勇哉は考えた。
 本当の事を話しても良いのか?
 ポケットから小銭を取り出そうとして、小銭が地面にこぼれ落ちたぐらいの時間で、結論が出た。
 本当の事を言っても、さっきの志津香みたいに信じないだろうし、冗談で通じるだろうと。
「宇宙人とか、日本語が公用語になっている国は日本以外にあるとか、ちょっとファンタジーな空想話な事とかな」
「へぇー意外だな。小此木さんが、そういった事に興味があるなんて」
 勇哉の予測は外れたみたいだ。本宮は冗談だと思っていないようだった。
 そうこう話をしていると、穂乃香が戻ってくると、開口一番に本宮が小此木の様子を伺った。
「どうだった小此木さん?」
「小此木さんなら大丈夫……と思う。いつもの事だからと言って、自分の教室に戻って行ったわ……」
 歩乃香は、キッと志津香の方を睨み、
「もう、シヅちゃん。言葉使いに気をつけてよね」
 と注意をするが、志津香は「はいはい」と反省の色を疑わせない素振りをし、穂乃香を呆れさせる。
 そんな二人を勇哉は物珍しそうに眺めていると、本日の重要議題を思い出した。
「そういや……双子なんだよな?」
「そうよ」と志津香。
「なんで、双子だという事を隠していたんだよ?」
 志津香はコーラのペットボトルを一口飲み、勇哉の問いに答える。
「隠してないわよ。さっきも言ったでしょう。ただ聞かれなかったから言わなかっただけよ」
「それじゃ、なんで……えっと、穂乃香さんだっけ」
「穂乃香だけで良いですよ。私もシヅちゃんと同じで下の名前で呼びますから。ねぇ、勇哉くん」
 優しく微笑みながら下の名前を呼ばれたことに、勇哉の心臓の鼓動が高鳴った。
「それじゃ、お言葉に甘えて……。穂乃香と一緒に転校して来なかったんだ?」
「そ、それは……」と穂乃香が話しをしようとしたが、志津香が遮る。
「説明するのも面倒なんだけど、簡単に詳しく説明すると父が再婚したの。それで私は父側に引き取られて、穂乃香は父の妹さんの方に養子として残ったの」
 豪く簡単に凄い事を話したが、勇哉は良く理解できていなかった。
「まぁ、複雑な事情があるのよ」