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ソラノコトノハ~Hello World~

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◆4章「Brand-New World〜新世界〜」



 それはとても、気が重たい一日だった。

 未知との遭遇のコンタクトに成功し、小此木琴葉と話し合いの約束をして、あれから二日間経っていた。
 その間、勇哉は琴葉との約束をちゃんと守り、昼休み・放課後と琴葉と会い、自分を介してルーラと話し合っていた。
 話しの内容は、もちろん地球人の勇哉達にとってはついていけないような、ルーラが住んでいる星“アフィス”の事々だったが、小此木は興味津々と話を聞いていた。


 なんでも、ルーラの世界には四つの言語があり、ルーラが使っている言語はロクソン語という。
 アフィスでは、一番古い言語だと言われている。
 そこで、気になる点が一つあった。
 なぜ、そのルクソン語で話しているルーラが、勇哉達日本人が使っている日本語で話しているのか。
 琴葉は、偶然ルクソン語と日本語は同じ言語なのではと推測した。
「そんな好都合な偶然があるのか? この地球でさえ、二百国もあるのに日本語を使っている国は、日本だけなのに……」
 そう勇哉が言ったあと、琴葉が日本語は日本だけではなく、パラオ共和国のアンガウル州でも日本語を公用語として定められていると、トリビア知識を披露してくれた。いや、それは今は関係無い。
 でも、億千あるかも知れない星のどこかに日本語みたい言葉を話せる生命体がいるかも知れない。それが、ルーラである可能性も無きにも有らず。ついでに、この事をルーラに聞いてみると、
『神のみぞ知る』
 まさにその通りだ。異論は無い。
 その後、ルーラは付け足しで、
『これは、私の憶測だけど……。もしかしたら、心で会話しているからじゃないのかな。口で言葉にして話せば、ルクソン語やニホン語となるけど、心での会話は言葉ではなくて、違う何か……念とか想いとかで、伝わっているかも知れない』
 それを聞いた時は、勇哉は理解できなかったが、その言葉を端折りつつ、琴葉に伝えると、
「以心伝心みたいなものかな」とポツリ。
 その言葉を聞いて、「そういうもんなのかな」と納得するようにした。
 その他にも、あちらの世界には太陽が二つあり、夜という真っ暗な時間は訪れないらしい。そして大陸は、一つの大きな大陸しかないとか。ナイアガラの滝よりも大きな滝があるとか。全長10メートル以上の巨大な鳥が羽ばたいているとか、ルーラの話しが嘘だとしても、そういったフンタジー溢れた話に勇哉は楽しめていた。
 そして、こちらも地球の事について語ったりと大いに盛り上がった。
 ここまでは何だかんだで、良しとしよう。


 そんな風に琴葉との密会みたいなお話し合いをしていたものだから、あっという間に“ある事”が噂されているようだった。
 その噂を勇哉が初めて耳にしたのは、昼休み勇哉に話しかけてくれたいつぞやの名も無き生徒からだった。
「なぁ、村上。お前、電波ちゃんと付き合っているのか?」
 ぶはっと噴出す勇哉。
 そして、追い討ちをかけるように、
「そういえば、放課後とか昼休みとかに会っているっぽいね」
 と、タイミング良く後ろにいた委員長の本宮宏。そして、
「ついに、村上さんにも念願の彼女さんができましたか。ふ〜ん、へ〜」
 本宮の隣にいた幼馴染の只野志津香が畳み掛けるように呟く。
 なんか小馬鹿にしたような感じで、少しむかついた。
 しかし、学校一有名な人物と貴重な昼休み・放課後と話し合っていたら、そりゃ、こういう噂が立つものだ。
 こういう事態は、よくよく考えれば想定できるものだが、如何せんあの時は脳みそが疲弊しきっていて、冷静な思考が出来なかった。
 だから、深く考えず簡単に「ああ、いいよ」と言ってしまったのだと、今になって後悔する勇哉だった。
「あらあら、そうこうしている内に、村上さんの彼女さんがやってきましたわよ」
 志津香はわざと余所余所しい言い方をしつつ、教室の入り口付近にいる琴葉に指を差した。
 思わず頭を抱え込んでしまった勇哉の事情なんて察する事なく、頭の中でルーラの声が響く。
『キョロスケ。コトハとのお話しの時間ですよね。早くコトハに会いましょうよ』
「ああ、もう!」と、少しいきり立ったように席を立ち、小此木の元へ行こうとした時、志津香に呼び止められた。
「ユウ。折角だから今日は私達と昼ご飯にしましょう」
 思いがけない誘いに、思わず戸惑う勇哉。
「な、なんだよ?」
「どういうキッカケで、あの子と話すようになったのかを聞きたいし。ついでにアンタに紹介したい人がいるのよ」
「オレに紹介?」
 そんな風に志津香と話していると、琴葉は琴葉で誰かに話しかけられていた。
 あれは……。
「あら。小此木さん。こんな所で何しているの?」
「え、あ。只野さん……。そ、その……。」
「誰かに用があるのなら、私が呼んであげようか?」
 琴葉が、いつぞやの志津香に似た女子生徒に話かけられてマゴマゴしていると、志津香はその話しかけている人物に気が付き声を掛け、琴葉と共に教室へ呼び入れた。
 志津香に似た女子は、志津香に弁当を手渡しつつ、
「はい、シヅちゃん」
 気軽に志津香のあだ名を呼ぶ、志津香に似た女子。志津香があだ名で呼ばれるのは珍しい事だった。むしろ勇哉は初めて耳にした。
 そして、志津香はその相手を見ながら、サラっと話す。
「紹介するわ。これが私の双子の片割れの穂乃香よ」
「双子!」
 困惑そして驚愕する勇哉。
「あ、もしかして。あなたが村上勇哉くんですか。初めまして、只野穂乃香です。さっきシヅちゃんが言った通り、シヅちゃんと双子なんです」
 志津香とは幼馴染なのに、志津香が双子だったとは知らなかった勇哉は「え、あっ」と戸惑いながら、志津香と双子の妹と仰った穂乃香の顔を見比べるも状況が掴めなかった。
 そして志津香は、話しの輪に入ってこれず、ポツーンとなっていた琴葉の方を向く。
「えーと、小此木さんだっけ」
 いきなり自分の名を呼ばれ、ビクっとする琴葉。
「という訳で、今日は私達と一緒にお昼しましょう」
 何が、とういう訳なのかが解らないからなのか、オロオロする琴葉。
 そんな琴葉の身を案じつつ、志津香の双子の片割れ……穂乃香が話かける。
「いいでしょう。小此木さん。久しぶりに、一緒に食べようよ」
 迷っている琴葉に、隣にいた本宮も琴葉を誘うと、琴葉は俯いた状態で静かに頷いた。

     ***

 勇哉達は、ひとまず購買に立ち寄り、勇哉はメロンパンや牛乳などを買ってから、一同は屋上へと向かった。
 運良く屋上の隅は空いていたので、そこを陣取り弁当を広げた。その弁当を取り囲むように輪になって腰を落とした。
「それで、お二人が知り合ったキッカケはなんですの?」
 ワザとらしい満面のニコニコ笑顔で、志津香が訊ねて来た。
 琴葉は、何を答えていいのか解らずにオロオロと戸惑っている。代わりにと、勇哉が先ほどの疑問をぶつけた。
「キッカケって……いや、それよりも志津香。双子ってどういう事だよ。初めて聞いたぞ」
 まずは、そっちの方が重大なことだろうと。
「言ったことがないからでしょう。まぁ、言っていないのにアンタがそれを知っていたら、ユウは私のストーカーだという事だけどね」