小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ソラノコトノハ~Hello World~

INDEX|11ページ/41ページ|

次のページ前のページ
 

「って、ルーラが言ってくれと頼まれたから。確かに言ったぞ! オマエも早く教室に行けよ!」

 用件を言い終えた勇哉は、前を向き再び走り出した。すると、また不思議な声がオレに呼びかけてくる。

『あ、キョロスケ』

(ん、今度は何だ?)

『今。声が聞こえて……“よろしく”って』

 勇哉は走りながら後ろを振り返って見ると、そこには琴葉が中庭でいつもしている、両手を天高く挙げている姿があった。

 今になって、その姿の意味を知った為に、オカシナ印象は無かった。そして勇哉は、開始のチャイムが鳴る前に教室に着くために、スピードを緩めずに足を動かし続けた。

     ***

 五時間目の英語の授業を無事に過ごし、六時間目の理科の授業は理科室への移動教室。
 勇哉は委員長を呼びかけて、一緒に行こうと誘った。
 “只野志津香”と幼馴染だという共通点が有ったこともあり、妙な親近感が生まれていた。そして昼休みの時の語り合いで打ち解けたと思ったので気軽に声を掛けたのである。

 それと“小此木琴葉”についての情報を知りたかったので、さり気無く小此木について訊ねる事にした。

「そういえば、委員長さぁ。小此木琴葉と同じ中学だったよな」

「うん、そうだけど」

「やっぱり中学時代からでも、あんな感じだったのか?」

「あんな感じだったね。いつも昼休みにアレをやっていたよ」

 アレとは、もちろん昼休みの儀式のことだろう。
 そんな風変わりなことをやっていれば。

「友達とかは……いないよな」

「小此木さんが他のクラスメートと話している所は、滅多に見なかった。その代わりと言っちゃあれなんだけど、僕とかが話し相手とかになっていたよ」

「え、委員長が?」

「僕だけじゃなく、当時の副委員長とね。でも……僕達が、率先的にというより、先生にお願いされたからでもあるんだけどね」

「まぁ近寄りがたい存在だからな。今でも、そうだけど……」

 勇哉自身も不思議の声―ルーラ―の声が聴こえなかったら、多分、琴葉に声を掛けてはいないはずだった。

 委員長は話を続ける。

「ああいった特異な事をやっていたから、男子とかに結構ちょっかいを出されていたからね」

「そういや……委員長は知っているのか? 何で、あんな事をやっているのか」

「いいや。訊ねたけど、教えてくれなかったよ」

 委員長が知らない事を知っている事に、少しばかりだが優越感を感じる勇哉。

「そういえば、村上くんさぁ。委員長じゃなくて、名前なり苗字で呼んで欲しいんだけど。どうも肩書きで呼ばれるのは、余所余所しいというか……」

「ああ、そうか……。え〜と……」

「本宮宏だよ」

 名前を覚えていないんだろうなと察したくれたみたいで、委員長自ら名乗ってくれた。
「本宮宏ね。OK、覚えたよ!」

 覚え難い名前じゃなくて、ホッとする。ここで話を切るのも淋しいものなので、

「宮本茂だから、シゲルで呼んでいいか?」

 とりあえずボケてみた。

「本宮宏だって」

「ナイス、ツッコミ!」

 それはさて置いて、委員長を“本宮”と呼ぶことにした。
 くだらない事を話しつつ理科室に到着し、何事も無く授業を受けた。そして掃除時間、帰りのHR(ホームルーム)へと時間は流れ過ぎていった。


 帰りのHR(ホームルーム)が終わり、他の学生と同じように勇哉が鞄に教科書を仕舞っている時に、一つの懸念事項に気付いた。

 小此木琴葉と放課後にまた会う約束をしたけど、待ち合わせの場所を決めてなかった。
 琴葉のクラス―七組―へと出向くかと、面倒臭さを感じつつ教室を出ようとすると、

「ちょっと、勇哉。これから真っ直ぐ帰るの?」

 幼馴染の志津香に呼び止められた。

「いや。ちょっち用事があるんだけど……いっ!」

 志津香との話しの最中、ふと勇哉の視野に、ある人物―小此木琴葉―の姿を見つけ、思わず身が固まってしまった。

 小此木琴葉が、教室の入り口の所に突っ立っていたのだ。

 なぜに小此木がここにいるのか?
 あちらも自分を捜していたからだろうか?

 そうこう考えている内に、琴葉の視線が勇哉の視線とかち合うと、勇哉の元へ歩み寄ってきた。

 ヤバイ!

 なにがヤバイって、あの電波ちゃんと知り合いなのかと思われてしまう。思われたら、オレも可笑しい奴だと確実に認定されてしまうと、勇哉はヒドク焦っていた。

「そ、そんじゃ、さようなら!」

 志津香と話の途中だったが、一方的に打ち切り、慌てて教室を飛び出した。
 そして、琴葉とすれ違い様に、ボソリと「オレの後に付いて来てくれ」と呟いた。

 琴葉は案の定、戸惑っていたが、小走りで勇哉の後を追いかけてきた。
 志津香は、勇哉の不自然な態度に疑問に感じつつ、遠ざかっていく勇哉の後ろを追いかけていく女子に視線を外さずに、ポツリと呟いた。

「うん? あの子は……」

     ***

 とりあえず琴葉を連れて、ひと気の無い北校舎四階の調理室の前とやって来た。というのも人が少ない所へと探し歩き回っている内に、ここに辿り着いたのだった。

「あ、あの……」

 琴葉は困惑していた。なぜこの場所にやって来たのか理由が解らなかったからだ。
 そんな琴葉が漏らした一言に、勇哉は改めて琴葉の存在に気付き、本題に移すことにした。

「ああ。え〜と、それじゃ、何処で話そうか?」

「え、えっと……どこでも、良いです」

「どこでもって……。それじゃ、別にここでも良いか?」

 静かに頷く。

「それじゃ、何を話すんだ?」

 琴葉は何を言おうかと慌てふためきながら、カバンの中から何かを取り出そうとする。

 そんな時、『あの、キョロスケ……』と時間通りに、ルーラの声が勇哉の頭の中に響く。

『オコノギという方に会ってますか?』

(ああ、会っているよ。今、オレの目の前にいるよ。で、オマエさんはオマエさんで、何を話したいんだ?)

『あ、待ってください。訊きたい事を書きまとめていたんです。え〜と……』

 ルーラと話していると、琴葉は先ほどのカバンの中から一枚のルーズリーフを取り出し、勇哉に手渡した。

 紙をチラ見すると、ギョッと驚いてしまう程に、びっしりと質問事が書き込まれていた。

「え〜と…これを、ルーラに訊けば良いのか?」

 静かに頷く琴葉。そして、それに同調するかのようにルーラが、

『キョロスケさん、良いですか。私が聞きたい事はですね、二百近くあります』

 これは今日中に終わらないと確信し、ため息を吐いた。

「いいよ、ここまで来れば、最後まで付き合ってやるよ」

 半分ヤケになりつつ、琴葉、ルーラと交互に質問して答える事にした。



 質問を十個ほど終えた時点で、勇哉と琴葉は呆然としていた。
 それは、ルーラが回答した内容が、二人の想像を遥か斜め上を行く内容だったからだ。

 名前、年齢、身長、性別……この質問までは良かった。
 ちなみにルーラは十七歳で、多分身長百六十センチ程度、性別は女性との事。