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CROSS 第9話 『名誉の戦死』

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 基地の駐屯兵の案内で、山口たちは基地である砦の中を歩いていた。砦のあちこちが負傷兵でごった返していた。中庭には、兵士の死体が積み上げられ、火葬されていた……。城中に、血や死体を焼く匂いなどが混じった異臭が漂っていた。こういう異臭には慣れているはずの山口まで、鼻を押さえるほどだ……。思わず吐いてしまった隊員もいる。
「ここは地獄だぞ!」
すれ違った兵士がニヤリとしながら吐いた隊員に言った。
「ここで死ぬ連中はいいですよ」
案内の兵士が静かに言った。廊下の端に寝転んでいる負傷兵が山口たちを眺めていた。
「あの濃霧の中で戦死した連中なんて、ゾンビみたいにさまよっているらしいですから……」
「ソウルを奪われちまったからか……」
山口が濃霧のほうをチラリと見てから言った。
「ええ。そのまま兵器を使い続けているゾンビもいるらしく、うかつに接近できません」
「それなのに突撃の戦法をとってるの?」
山口のところまで追いついてきた佐世保が言った。彼女は背中にセミオート式ショットガンをかついでおり、散弾の弾束をタスキがけにしていた。案内の兵士は周囲を見回してから、小さな声で、
「まったく、『ミイラ取りがミイラになる』戦法ですよ。ここにいた川口少将と東海林大佐が戦死されてから指揮官になった辻中佐の戦法ですよ。司令部は何しているんだか」
「司令官のアバーナシー少将は、何度も辻中佐に注意文書を送ってるらしいんだけど、無視されてるみたいだな……」
「え? それ本当ですか? 初耳ですよ」
案内の兵士は驚きと憂鬱さが混じった顔で言った。

 その後も山口は案内の兵士から、現状について尋ねていた。やがて、左手に長い下り階段が、右手に対空兵器などが設置されている城壁の上の通路がある場所に着いた。
「指揮官の部屋に行きたいんだったんだけど、どこ?」
「ああ、それならこの右の通路を道なりに進めば着きますよ!」
「指揮官室はオレ一人で行くから、あとの奴らの案内を頼むよ」
「わかりました。それでは、兵営のほうへ案内します」
案内の兵士はそう言うと、山口を残して、左にある長い下り階段を降りていった。その後ろを佐世保を先頭に残りの全員がついていく。ヘーゲルが、「私もいっしょに行きましょうか?」と山口に尋ねたが、彼は「大丈夫だ」と断った。

 城壁の上の通路には、対空機関砲や榴弾砲などの兵器が所狭しに設置されていた。城壁の下には、かつて通路の上にあったと思われる投石機が突き落とされ、そこでバラバラになって転がっていた。対空機関砲のレーザー砲弾が詰まった強化プラスチック製の弾薬箱に寄りかかって寝ている兵士や、冷めたコーヒーを飲んでいる兵士が数人いた。山口に気づいた者は、弱々しく敬礼した。みんなクタクタの様子だった。