CROSS 第9話 『名誉の戦死』
「なるほど、風車か」
基地に近づくにつれ、基地の様子がよく見えるようになってきた……。大きな風車がたくさん基地の外側を向いた形で立っており、霧を必死に遠ざけている。
「風車といえばさ。とある学園都市でのことを覚えてるか?」
ガリアが思い出し笑いしながら言う。
「……ああ、山口さんが街中にある風力発電機を見て、『街の中に風車かよ』と言っちゃった件のことか。すごくスキル持ちの連中に睨まれたな」
「あのときの空気といったら!」
そこで2人とも笑い出した。他の隊員たちは黙っていたが、
「ガリアとウィル!!! 降りる準備をしろ!!!」
山口が怒鳴りながら、彼は、手にしている魔法書にしおりのヒモを挟んでから、バタンと閉じた……。その拍子に、魔法書の中から数枚のカードが飛び出し、床にぱさりと落ちた。山口はそれらを急いで拾い上げると、そのカードについた埃や砂を丁寧に払い落とした。
「それは何ですか?」
ウィルは山口が持っている数枚のカードを指さし、当然の質問をした。山口は、拾ったカードをウィルとガリアに見せた。ふちに変わった模様があるだけで、あとは白紙の不思議なカードであった……。ただ、その中の一枚にだけ、何かの呪文が印されていた。
「これは『スペルカード』というやつだ。幻想共和国で使われて物だ。これに使いたい魔術を書いておけば、いつでもすぐに使えるんだ」
山口は自慢気に言った。
「へー、それもスカーレットさんにもらったんですか」
「車みたいになくさないでくださいね」
ガリアがニヤリと笑いながら言う……。
「黙れ!」
「でも、確かスペルカードって使い捨てじゃなかったですか? それだけしかもらえなかったんですか?」
「この5枚だけだよ。もっと欲しかったら、本1キロにつき1枚だってさ!」
「…………」
そして、山口たちを乗せたエアリアルは、基地の発着場に着陸した。
その基地の名前は『悪魔魂陸軍基地』で、砦を改装して使用していた。砦の周囲に広がる悪魔たちが潜んでいるとみられる濃霧を、大きな扇風機みたいなのが接近を防いでいた。城壁には、コンピューター制御の対空砲や榴弾砲などが設置されており、濃霧の中にいる悪魔たちを威嚇している。城門の前にある幅広の石畳の橋には、数台の戦車が駐車していた。
先に山口たちのほうのエアリアルが着陸し、もう1機のエアリアルがすぐ後ろの位置に着陸した。
「よし、いそいで荷物を持って降りろ!!!」
山口はそうガリアやウィルや隊員たちに言うと、一番先に飛び降りていった。後に、ガリアたちが続く。もう1機のエアリアルからも佐世保たちが降りてきていた。
濃霧の中から、悪魔の叫び声がちらほら聞こえてきた。基地に残っていたロボット制御の対空機関砲が火を噴くと、叫び声は遠ざかっていった。
「CROSSの山口少佐ですね? はやくこちらへ!」
発着場から基地がある城へと続く出入り口から、基地に駐屯している兵士が一人駆け出してきて、手招きしていた。
発着場に降り立った山口たちは、その出入り口まで走った。2機のエアリアルは、空高く飛び上がると、今来たルートを戻って行った。
作品名:CROSS 第9話 『名誉の戦死』 作家名:やまさん