CROSS 第9話 『名誉の戦死』
第1章 霧に覆われた悪魔の世界
第9話 『名誉の戦死』
【時間軸】 … 異次元暦42733年 11月15日
【位置】 … 『世界『悪魔魂』』(デモンズソウルの世界)
山口たちCROSSを乗せたエアリアル2機が、その世界の上空を飛んでいた。
彼らは、この世界にある大日本帝国連邦の基地へ向かっている。ある事情により艦の転送装置が使えなかったため、専用のエアリアルでピストン輸送をすることになったのだ。ちなみに、特務艦は外の異次元空間に他の帝国連邦の軍艦といっしょに停泊している。
片方のエアリアルには、山口とガリアとウィルと2個分隊の隊員が乗っていた。ガリアとウィルは談笑しており、少し離れた席に少佐がレミリアからもらった魔法書を読んでいた。ふと、ガリアが話すのをやめ、窓の外を見た。
「オイ、下はすごい霧だぞ!」
ガリアの横からウィルが窓の外をのぞく。
窓の下には濃い霧がたちこめており、地面はおろか山肌も見えなかった……。チラリと大きなエイが飛んでいるのが見えた。
「霧といえば、山口さんが幻想共和国の『霧の湖』に車ごとドボンとなった話を思い出すな」
ウィルのつぶやきに、ガリアがぷっと吹き出した。
「ベンツEクラスが1時間もしないうちに廃車だもんな!」
ガリアは笑い出したが、静かに読書をしている山口が近くにいたことを気づくと、すぐに笑うのをやめて、再び窓の外を眺める。
しばらく眺めていると、一面の濃い霧の向こうに、ポッカリと霧が晴れている部分が見えてきた。
「あそこが基地だな」
「なんで基地の辺りだけ霧が無いんだろ?」
ガリアとウィルが、あちこちを見ながら小声で言う。霧が晴れているのはそこの一帯だけで、あとは濃霧が世界を覆っていた……。
「よく見ろ、風を起こして霧が来るのを防いでいるのさ」
「基地にも霧が覆っているわけでもないのに、なんで、転送装置が使えなかったんだ?」
「……うちの転送係がメンテをしてなかったせいさ!」
特務艦の転送室にいたIがクシャミした……。
作品名:CROSS 第9話 『名誉の戦死』 作家名:やまさん