CROSS 第9話 『名誉の戦死』
CROSS隊員は全員避けられて無事だったが、多くの兵士が炎
に巻かれて、火だるまになりながら倒れていった……。トラックに
も火の手が回って立ち往生しており、乗りこんでいた工兵隊員が降
りて消火していた。
ドラゴンはさらに攻撃をくわえようとしていたが、基地の部隊か
らの激しい反撃を避けるので手一杯の様子だった。
「対空ミサイルを使え!!! オレが許可する!!!」
『了解! 『ホーク3』を使用します!』
ドラゴンが再攻撃をあきらめた様子で帰還を始めたとき、ミサイ
ルのジェット推進音が聞こえてきた。そして、次の瞬間には、ドラ
ゴンをこっぱみじんにぶっ飛ばしていた。血肉が通路に降り注ぎ、
腸と思われる臓物の破片が飛んできて、ジャイロの前輪にひっかか
った。そのはずみで、山口と佐世保の服に赤い血が飛び散った。
「キャー!!!」
佐世保は当然悲鳴を上げた……。
「ドラゴンの血は高く売れるんだぞ」
山口はそう言うと一旦ジャイロから降りて、前輪にひっかかってい
る臓物の破片のまだきれいな部分に、注射器を刺して血を吸い取り、
頑丈そうな小型ケースにドラゴンの血が入った注射器をしまった。
山口はそのケースを胸のポケットにしまいこむと、またジャイロに
乗った。そのあいだ、佐世保はポケットティッシュで服についた血
をぬぐっていた。
山口が後ろの救助部隊の様子を見たところ、愕然とした……。死
んだ兵士がゾンビのように生き返り、生き残った兵士たちを手持ち
の武器で襲い始めていたのだった……。ソウルを失っていたからだ
った。霧のこちら側で死んだからだった。ただ、生き返ったのは少
数で、すぐに兵士たちが撃破していった。CROSS隊員たちは、
そんな騒動を無視して、山口の元に追いついてきた。
「早く工兵隊を連れてこい! あそこで橋が崩れているみたいだからな!」
山口が少し遠いところにある崩れた城壁の部分を指さして命令した。
隊員たちは息を切らせながら立ち往生している数台のトラックのほ
うへ戻っていった。
隊員たちは、工兵たちを消火作業や負傷兵の救護や搬送をやめさ
せ、そのままトラックに乗りこませた。そして、隊員たちはトラッ
クのボンネット横につかまってから、トラック自体に命令を下した。
すると、数台のトラックは同時に急発進して、兵士の焼死体や
「生き返った兵士」を踏みつけながら乱暴に走り、崩れている場所
まで一気にたどり着いた。あやうく、山口たちは轢かれそうになっ
た……。ただ、救助部隊のほうから、死体を轢いたり負傷兵を置き
去りことについて罵声が飛んでいた……。山口は基地の衛生兵を現
場に向かわせた。
工兵たちがトラックから駆け降りて、崩れた部分の様子を見始め
た。そしてすぐに、トラックの中から大きな鉄板を持ってきて、そ
れを崩れた部分の上に敷設して、簡易の橋をつくった。隊員たちか
ら問題解決の通信が入った。山口はジャイロを猛スピードで走らせ、
そのまま、鉄板の橋を渡っていた。下は崖だった。
作品名:CROSS 第9話 『名誉の戦死』 作家名:やまさん