コミュニティ・短編家
バットを掴む
あいつだ
悪夢がよみがえる
めのまえでアニキが殺られた
おれは気絶しただけですんだが、頭をやられたアニキは即死だった
やつはおれらがひとりかふたりのときにしかこなかった
よわむしのクソヤロウだ
そのあいつがいまめのまえにいる
あのころとかわらないすがただ
こっちはきょうふといかりですっかりとしおいてしまったというのに
やっぱりばけものにちがいない
おれはヒーローだ
そっとちかよっていく
あいつはまだきがつかない
おれはこのひのためにあじさいをうえた
あいつをむかえうつために
おれはおかしなことにきづいた
あいつはひとりではなかった
となりにはおんながひとりしゃがみこんでいる
おんなはおれにきづくとほほえんだ
「あ、こんにちは。すみませんお宅の前で。綺麗な紫陽花ですね。」
しゅるしゅると何かがほどけていく。
ふりかえったあいつは、麻の着物など着ていなかった。
作品名:コミュニティ・短編家 作家名:川口暁