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Search Me! ~Early days~

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05 ナイトウォーカー











「…っうわあ…っカワイイですねー!」
「っしょー?めっちゃカワイイんすよぉマジで!!」

道の真ん中から少し外れた場所から感嘆の悲鳴が上がる。1人は若い女性で、もう1人は青年だ。2人とも、青年の持った携帯電話を覗き込んでいる。
言うまでもないが祭と七絵だ。

「あとあと、コレとか!」
「はうん…っ」
「どうっすか?どうどう!?」
「きゃあ…っ正直、堪んないです…」

籠の上部に向かってぴょんぴょん跳ねる2匹の子猫を上から撮影した動画だ。暫くぴょんぴょんジャンプしていたが片方が着地でバランスを崩して後ろにころんとひっくり返る。

「うっ!?」

それに続きもう1匹もころん。

「はぐっ!?」

2人の心臓は光速の見えない弾によってあっという間に貫かれた。その弾を萌という。

「…っもおうっ、かわいい!」
「…お、俺…何度も見てんのにまだ免疫できねえっす…」
「免疫なんて、出来る必要ない!」

呼吸困難に陥る祭に、七絵は力強い笑顔を向けて力説する。

「ひ、日野宮さん…!」
「何時まで経っても可愛さに瞬殺されちゃえば、いいじゃないですか!」
「………っうん!っくううううっかーわーいーいー!!!」
「ソレです!」

それからも2人は暫くの間、祭が撮影した白1号と黒4号の愛くるしい姿に悩殺され続けていた。通り過ぎる通行人がたまに二度見するが、2人がそれを気にすることはまったくない。ようやく熱病が収まってきたころ、七絵が溜息をつきながら口を開いた。

「でも…私びっくりした。まさか伊奈葉くんも探偵事務所でアルバイトしてたなんて…」
「いやぁ、俺もこないだビックリしたんす。んな偶然アリかよって。」
「じゃあ、あの時一緒にいた…ええと、筧さんは、」
「筧さんは探偵さんっすよ!本物の!」
「あ、やっぱり!?そういう雰囲気だと思ってたの。ウチのスタッフさんたちと似てるかしらーって。」

なるほど、と七絵は納得したように言う。なんとなく祭は誇らしい気分だった。
…七絵と偶然再会したのは、今から30分前。郵便局で依頼人への報告書の発送手続きをするように言われて来た祭が、仕事を終えて出てきた所で鉢合わせしたのである。

「やっぱ、スタッフさんたちって探偵なんすね?」
「ええ、ウチは、所長、副所長、事務長、あと3人の調査員と、バイトが私で。探偵じゃないのは、事務長と私だけです。」
「へー、俺んとこは3人探偵がいて、俺がバイト。…ソッチに比べたら少ないっす。」
「そんなそんな!副所長は“内輪の稼業みたいなものだ”って言ってますよ。」

内輪の、であの立地にあのような事務所を置くことなんかできないのでは、きっと儲かってるんだろうな、とか、かなり俗っぽいことを考えてしまったのは許してほしい。

「そ、それでも規模おっきいす!」
「ん、ま、まあ、所長と副所長が御夫婦なので、稼業云々はあながち間違ってないかもしれないですけど…」
「ふえ!?マジで!?…ですか!?」
「未っだに!馴れ初め教えてくれないのよねー…、あ、くれないんです。」
「…なんかさ、もうタメ口でよくないっすか?」
「…そう、で……そうね。因みに奥さんは、所長さんなの。」
「むむ…っサスペンスの予感がひしひしするっす!」
「秋のドラマスペシャル並みかしら?」
「いや新番組クラスかも!」

真実を知らないとはいえ、ここまで言っていいのかと突っ込む者は誰もいない。七絵にとっては上司、祭に至っては見ず知らずの人物たちであるのに、だ。

「私、それなら絶対毎週録画する!」
「後で貸して欲しいっす!」
「ディスクに焼いてあげる…なーんて、でも、本当にそんなのあったら面白そう。」
「ね!」
「伊奈葉くんの所は?」
「え?」
「事務所の人、どんな感じの人達なの?」
「……え、……ええー………」

七絵は何気なく、先程の雑談の延長で尋ねたことだったのだろうが、祭にとっては思いもよらない難題になった。…難題だと、今更になって初めて気付いた。
どんなって、なんだ。

「い、伊奈葉くん、そんな悩まなくても…」

もしかして。
いや、もしかしなくても。

「…っ、俺…」
「?」
「っい、いえ!何でもない!っとな、皆なんかスゲー人!」

努めて明るい声を取り繕い、アルバイトに来てからのそれぞれのエピソードを多少脚色して語る。今更のように発生してしまった心のしこりに蓋をして。
そして、話題はすぐに違う方面へと移り変わっていった。


七絵と話し込み始めてからかなりの時間が経過したが2人の間で話が尽きることはない。ここまでウマの合う異性の相手というのはお互いにとっても非常に貴重だ。祭の中では既に“同志”ポジションにまで特進していた。

「だから、私ね、……!」
「?…日野宮さん?」

その同志・七絵の声が突然途切れる。首を傾げていると、彼女はおもむろに振り返った。そこには大型パネルが設置され、時事ニュースが流れている。

『…現在、平均株価は1万6千円台で推移しています。連日の株価変動の要因としましては、先週、フラップシステムズに対し、敵対的買収を表明したイーグルパートナーズの…』
「ありゃりゃ…」
「日野宮さん?どしたっすか?」
「ああ、経済学部に仲良い子がいるんだけど、その子がお小遣いで株取り引きしてて…」
「学生で!?」
「うん。その子がね、今回のことで市場がてんやわんやになってるって言ってて……ここを売りぬくべきかどうするかが、正念場って言ってたの思い出したの。」
「へえー。」
「まあ正直よくわかんないけどね、私文系だし。」
「うぐ…俺も文系。」

株などについてはまったく別世界の話のように感じていて聞いていても実感はあまりないが、非常に大きな作用を持っている経済活動、ということぐらいは流石の祭でも分かる。

「それで、上手くいったら素敵ディナーしようって言ってたから、私もちょっと気になっちゃってて。」
「うわ、いいな!ソレ!…でも株とかわかんねっす、俺。」
「伊奈葉くん、大丈夫よ。ソレはお金をちゃんと稼げるようになってから心配したらいいことだから。今は必要ナイナイ。」
「ちょ、心外だなあ俺だってっ……っ!」

言いかけて失言に気付き、慌ててその先の言葉を呑みこんだ。

「?俺だって?」
「あ、やや、……だ、から…っい、いつかはちゃんと稼げるようになるしってことっス!」
「それはそうよ、社会のためにもしっかり経済活動しなきゃ!でも、株はオススメしないわ、ギャンブルな時も多いし、らしいよ。」
「俺さ!結構運いいんスよ!」
「ちがーう、運よりも、こーこ、頭よ。」

悪戯っぽく笑うと、トントンと頭を指差す。

「そりゃ何スか、俺じゃ無理って言」
「ムリムリー……とか言わないわよー、やーねー。」
「く……っ……、…何か、日野宮さんて、」
「何?」
「ん……やっぱいいや。」

俺のお姉ちゃん達みたい、というのは寸前で止めた。仮にも年下の女の子に対して、自分の姉と似ているというのは失礼だろう、かなり。

「何よー教えてよー。」
「なんでもないっす!…って、あヤベ!俺そろそろ戻んないと!」
「え?…きゃっやだ!?もうこんな時間!?」
作品名:Search Me! ~Early days~ 作家名:jing