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Search Me! ~Early days~

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03 ハジメテノオツカイ












―ガタン………ゴトン………ガタン…

―ドカッ バキッ

遠くからやってくる電車が響かせる線路の音に混じって、鈍い、肉と骨が抉り合う音が暗闇の中で響く。

「っち…何だよシケてんなぁオイ。」
「う…、ぐ…っ」
「たく、喧嘩を売る相手は選べってんだ。」

線路の裏側に走る細く暗い道で、男は吐き捨てるように言った。足元には若い青年、10代後半ぐらいの男がブルブルと震えながら蹲る。その唇や鼻からは少なくない出血があった。

「た…助け…」
「…なら、最初っから喧嘩売ってきてんじゃねえよ。」

―ガッ!

「げふっ!?」

踵で横面を蹴り飛ばすと、青年は動かなくなった。電車の音がすぐそこまで迫ってくる。

「さてと、…ま、授業料に有り金は貰ってくぜ。……ん?」

青年の懐を探っていた男の手が止まる。

「何だこりゃ…………、…え…?」



―ゴォォォォォ―――――………ッ ガタンゴトン ガタン…ゴトン……ガタン…


―…………


後には静寂だけが残された。






*****





リノリウム張りの廊下に窓から差し込む光が反射する。それに眩しさを覚える暇も無く、行き交う様々な年齢、服装の人々。

―パタパタパタパタ…

その中を一際軽やかで早い足音が通り過ぎていく。やがてその足はとあるドアの前で停止した。

―ガチャッ

「っおそくなりまし」
「ばんっ!」
「きゃう!?」

勢いよくドアを開けて飛び込んだ瞬間、低い声の銃声がその人物を貫く。反射的に悲鳴を上げた姿に、室内は一気に喧騒に包まれた。

「おーたいへんだーまつりんがうたれたぞー。」
「衛生兵!えーせーへええええい!」
「伊奈葉ぁっしっかりしろ!傷は浅いぞ!」
「誰か救急車!あとケーサツだあ!」
「ばっか何言ってんのよ!ここはやっぱ私が白衣の天使に」
「うげえやめろ!」
「むしろ黒衣のあく」
「…………っうぐぇ……」
「あ、泣かした!」
「あう、あううー……」

悪ノリも悪ノリしまくっている彼、及び彼女らをどう対処すればいいのか分からずオロオロしている、と。

―ガチャ…ッ

再びドアが開き、1人の人物が入ってくる。室内の空気を感じ取ったその人物、スラックスにワイシャツ姿の長身の男はやれやれと溜息を吐いた。

「…まぁーた、やってるのか…。」
「せ…っせんぱぁいっ!!」

じわぁ、と本気で泣きそうになりなが、被害者である祭は男に駆け寄って行った。その様子を加害者たる彼および彼女らはわざとらしく落胆して見せたり、不満そうにしてみたりする。

「おーおー、ナイト様のご登場かあ。」
「っち…良い所で…」
「あーん私が手取り足取りいじり倒すつもりだったのにぃ!」
「ハイハイわかったから、いい加減にしろよ皆。祭がマジで泣くから。」
「ひぐ…」

よしよしと頭をなでながら悪ノリする仲間たちを窘める男を、祭は半泣きのまま見上げる。その視線を受け、男は呆れたような苦笑を零した。

「…祭、お前もいい加減慣れなさい。」
「でも…」
「そういう反応するから、面白がって付け上がるんだぞ。」
「えー愛なのにー。」
「萌なのにー。」
「嫁なのにー。」
「黙れ。」

途端、ビリッと緊張が走り、仲間たちは一斉に口をつぐむ。ここまでの流れはいつからかルーチンワークとなっており、まともな話が始まるのはここからだ。因みに祭はまだ頭を撫でられているので、そろそろ恥ずかしさで居た堪れなくなってきていた。

「せ…っ先輩ぃ…っ」
「ん?なに。」
「…髪がぐちゃぐちゃになるんすけど…」
「は?今更だろ。」
「ひどいっ!毎朝すんごい頑張って、なんとかこの水準をキー…」
「無駄な努力はしてもしなくても同じだろ?」
「ふぎゅっ!?」
「冗談だよ。」

ぱ、と手を離されると祭は慌てて乱れた髪を撫でつける。だがなかなか直らず四苦八苦。

「うぐー……直らなくなっちゃったじゃないすか!」
「寝ぐせっぽくて可愛いんじゃない?」
「っ綿森先輩のばがぁ!!」
「………ほぉう?」
「っ…!?」
「先輩に向かって、そんなコトを言うのはどの口だぁ祭“くん”?」

目が欠片も笑わない、闇を纏った笑顔のまま、男は祭の頬に手を添えると、

―ぐにー…っ

思いっきり頬を引っ張った。

「ひだだだだだだだっ!ひらいっいらいいい!!」
「ナカナカ良い頬だなあ、お餅みたい。」
「いやい!ひたいれふっ!」
「出た…ブラック…っ」
「誰か!エクソシストを!悪魔を魔界に還せ!」

外野での騒ぎは関知せず祭の頬はぐにぐにーと形を変えてしまう。マジ泣きそうだった。

「い…いらぁい……いひゃいよぅ……っ」
「わかってるよな、祭?僕はどんな先輩だ?」
「うにゃ…っひぇんはひは、ふおくえ…っ」
「…綿森さん、喋れてねーですよ。」
「ああ、そうか。」
「にっ!?」

やっと解放されたものの、頬はヒリヒリ痛むし真っ赤だ。それを馴染ませようと熱くなった頬を押さえる。もう黒いオーラを纏ってはいない、理知的に整った容姿の“先輩”は笑いをこらえるような表情で祭を見下ろしていた。綿森 敦司(わたもり あつし)、祭が最も信頼を寄せているがそれと以上に非常に畏れてもいる先輩である。

「うひぃ…」
「ハイ、祭、復唱。」
「す…っ先輩は、すごく……すごい先輩です…」
「よろしい。」
「にゃっ!?く、くしゅぐったいっす!」
「痛かった?ゴメンな。」
「い、いえ…っ…う、うえへへ……」

今度は先程とは逆にいたわる様に頬を撫でられる。腫れて火照った頬に冷たい指先が心地よくて思わずにやける。それを見て周囲が一言。

「………何と言う飴と鞭。」
「鞭8で飴2な。」
「ほぼ鞭。」

だが、それは綿森によって黙殺される。祭はそもそも聞いていない。

「で?これから“バイト”か?」
「あ、ハイ!一度戻ってから…」
「しっかり頑張るんだぞ?大事なことだから。」
「勿論です!」
「スタッフの人達とは上手くやれてる?」
「あう…っハイです!初めはちょっと……でも、今は、調査とかにも、ちょっと連れてってくれるようにな……って、あ!」

言いかけて、現在の時刻を思い出し、時計を見て青くなる。既に予定の時間を過ぎようとしていた。

「?」
「すスミマセン!俺急がないと!」
「ああ、時間?頑張れよ。」
「はいっ!!」

ペコリ、と頭を下げると祭的高速で荷物をまとめ、部屋を飛び出して行った。台風と太陽が過ぎ去り、一気に静けさを取り戻した空間で1人がポツリとつぶやく。

「……元気そうでよかったなあ。」
「ああ、もう二重生活も慣れてきたみたいでよかった。アレ結構キツイからね。」
「「うんうん。」」

その言葉に周辺の人間が同意を込めて何度も頷く。そこには経験から来る重さがあった。

「でもー……いいの?綿森さん。」

先程から男性陣の中で物おじせずいた若い女性が何とも言えない表情で声をかけた。その真意をつかみかね、綿森は首を傾げて聞き返す。

「何が?」
「祭くん、向こうにも随分可愛がられてるみたい、本人も懐いちゃってるし…」
「ああ、俺もそう思った!どんな人らか知らんけど、取られちゃったらどーすんの?!」
「…はぁ?」
作品名:Search Me! ~Early days~ 作家名:jing