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鏡裏@のべりすと
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雪と真珠

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梟に久しぶりに会った日から一ヶ月経ちました。
雪の降る季節になり、日のあたらない一角はとても寒く森はどこへ行っても地面を雪が覆っています。
スノウはパールの言ったとおりとても雪の中で存在感がありました。
闇に溶け込む黒い毛並みも雪によって日が当たらないのにいつもより明るい一角では目立ちました。
雪が地面を覆ったのでスノウはパールに住処の周りなら出歩いても大丈夫だろうと食事の時に言うようになりました。
するとパールはスノウが帰ってくるまでぴょこぴょこと雪の上を跳ねながら住処の周りを探検しているらしく食事から戻ってくるとどこにパールがいるのか探すのが習慣になりました。
パールは岩と住処の狭い隙間にいたり木の反対側にいたりスノウに見つけてもらうのを楽しんでいました。スノウも同じように楽しんでいました。
今日もスノウはパールを探すぞという気で食事から帰ってきました。
岩の隙間や住処の隣の小さな穴、木の影などいろんな場所を探しました。
そしてスノウはパールを見つけました。
「見つけたよ!」
パールは雪の真ん中でひっそりと丸くなるパールを見つけたのでした。
パールの体を鼻先でゆするとパールは顔を上げました。
「今日は見つかるのに時間がかかったわね」
ふふっと笑い声の混じった声でパールは言います。
するとパールの顔が真剣な顔になりました。
「あの赤い後は何かしら……?」
スノウが後ろを振り向くと白い雪の上にぽつぽつと赤い斑点がありました。
それはスノウのすぐ後ろまであり、スノウはハッとしました。
そして前足を見、何も無いのを確認して後足を見ました。
右の後ろ足に赤い血がついてました。
「スノウ……?」
スノウは混乱しました。
今日の食事は他の狼が仕留め残してあったものでした。
「ごめん、パール……」
スノウはパールに感づかれるより先に今まで嘘をついていたことを謝り怖がらせる前に自分の元を放れてもらおうと思いました。
「どうしたのスノウ?」
「君は最初自分がなんなのか判らないって言っていたろう?」
「えぇ」
「僕は知ってると答えたよね」
「えぇ、貴方は私を『友達』と言ったわ」
「それは僕の嘘なんだ。君はウサギ、僕は狼……食われ食う間柄なんだ。僕は君と過ごしている間も鹿や君と同じウサギの肉を食べていたんだ」
「……実は、知っていたの」
「え?」
「私ね、貴方と過ごして一週間目のときはっと思い出したの。自分が何で貴方が何でどういう状況なのか。よく考えたらあなたが食事から帰ってくるのが怖かったわ、貴方が食事あの後に漂わせている匂いが何かを想像しても。でもね、よく考えたの。貴方は出会ってから一度も私を狙っているように見えなかったし襲ってこようともしなかったわ。友達と名乗ったのは嘘だと思えなかったの。たとえ貴方が出合った時に嘘をついていたとしても」
パールは真剣な眼差しでスノウを見つめました。
スノウは目に涙を溜めています。
「だから貴方が正直に言ってくれるまで待っていたのよ。そうしたら私も正直に言おうって」
「ごめ……ん」
「貴方は優しい狼よ。とても優しいわ。雪のように綺麗な心を持っているでしょう? 私の名前のような綺麗なものが好きなのでしょう? 貴方が狼でも私は貴方の友達。今まで一緒に住んでいて確信したわ」
パールは優しい声で言いました。
スノウは涙をこらえながら声を出します。
「僕はもう君と一緒にいないほうがいいと思うんだ。僕の初めての友達で名前も付けてもらった。でも、記憶が戻ったならこの日のあたらない寒い場所を抜けて君は仲間のところに戻るべきだ。僕の……僕の嘘から始まった友達だけど君が本当の友達だと認めてくれて嬉しいよ。ありがとう」
スノウの目から一滴の涙が零れ落ちました。
「僕の欲しかったもの……友達と名前を君は全部くれたんだ。一生覚えているよ」
「私もよ」というパールの言葉を聞いてスノウは住処の前に行きました。
パールは白くふわふわとした前足で目元を擦ってからスノウの後姿を見ています。
スノウは住処の前に積もった雪を足で掻き分けると何かを加えてパールの元に戻ってきました。
「君に最後の道案内をするよ。周りは雪で以前と違って比較的明るいから分かるけど……最後だから」
そういって茶色くなった、雪の降る前の日に見つけた今年最後の花をパールの前に置きました。
「これでいいから着けてくれないかな」
頭をパールに差し出すとパールは花を器用に前足で持って耳にかけました。
「ありがとう、じゃあ、行こうか」
頭を上げたスノウにパールは一言言いました。
「貴方、やっぱり白が似合うわ」
枯れて茶色くなった花はスノウの耳にかけられると白に戻ったかのように輝いたのでした。

作品名:雪と真珠 作家名:鏡裏@のべりすと