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ファック・トゥー・ザ・フューチャー

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 そっと右目を開けると、ファインダーの中の洋子が後ろ向きになって踊っている。ピストルの形になった右手の指先が、リズムに合わせて天を突つく。ポニーテールにした枝毛だらけの毛先が、上下に揺れている。
 矢吹は息を吸いながら笑った。背中のチャックが銀色に光っている。王貞治のユニフォームを買った吉田と同じように、洋子も今日、あの服を買って来たのだろうか。どこで? あんな服、一体どこに売ってるんだ。そう考えて窒息しそうになった。我慢。もうすぐ間奏が終わりそうだ。
 歌い出し三拍前で曲は再びうねる様に盛り上がり、洋子は歌の始まりに合わせてくるりと振り返った。反復横飛び。腕を振る。弾ける笑顔が、瞬きもせずカメラを見ている。曲はクライマックスを迎え、三回目のサビに入り、洋子の踊りは片手を体の前に大きく差し出して胸を反らせる動きに変わる。同じ動きを繰り返す内に、曲は終わりを迎え、ゆるやかにフェードアウトし、小さくなっていく伴奏の音に合わせて洋子も声量を下げていく。そんな事をしなくても事前に教えて貰えれば、アンプの方で音を絞ったのに。田中は最後の声を震わせながら海老反りになる洋子に苦笑した。
 
「ありがとうございます」
  再び両手でマイクを持ち、戯けた顔で小さく頭を下げた。満足気な笑顔にはうっすらと汗の膜が張り、温度の高い息が白く煙っている。矢吹は録画を止めようと赤いボタンに中指を伸ばした。田中はカセットを止めようと停止ボタンに指をかけた。その時。シンセドラム。二曲目のイントロが始まり、洋子が垂直に四十五センチ跳び上がった。
「アーユーレディー? イエー!」
 金切り声の自問自答。腰を回して踊り出す洋子に矢吹と田中は呆然となり、吉田は次のイエーは自分も言った方が良いかどうか真剣に考えた。

 好きな男子に告白出来ない女子高生の想いを歌いきった三十女が、息を切らして「もういいわ」と言った時には、真夜中十二時五分前。結局、洋子はカセットテープ片面分、六曲を歌い、放心した。持参のミネラルウォーターを飲み、「どう? よかった?」と、マイクを使って矢吹に呼び掛け、矢吹が頷くと嬉しそうに笑った。「じゃあ、着替えるね」
 カメラの横を通り過ぎる時、女の汗の匂いがした。矢吹は更衣室に消える女の後ろ姿に、少しだけ勃起した。



「なっ、いいだろ、洋子。俺もうたまんねえよ」
「ちょっとぉ。何回言ったら分かるの馬鹿。ルナだって言ってんじゃん」
「ごめん、なっ、いいだろルナ」
「何それ。もう一回やり直してよ」
 体育器具室。後ろ手にドアを閉めながらベルトの金具を外す吉田は、緊張に表情を強張らせ、三回目のNGを出した。
「どっちでもいいじゃねえか…」
 その呟きは完全に聞こえていて、洋子は怒りに目を剥いた。
「どっちでもいいじゃないわよ馬鹿。あんたがちゃんとしないとみんなが迷惑するんだからね」
 矢吹は半ば呆れ顔で、ルナの抗議に合意した。どっちでもいいけど次は失敗しないでくれ。最初からこの調子じゃ朝になる。
「ルナ、ルナ、ルナ、ルナ、ルナ、ルナ、ルナルナルナルナルナルナルナルナ」
 ぶつぶつと復唱しながら、吉田がドアの外に向かう。それを睨み付けながら後に続く洋子がドアを閉めるのを見て、矢吹はカメラのスタートボタンを押した。
「じゃあ行くよ。間違えないでね。ルナだよ。よーい。はい」
 ドアが開き、押し込まれる様に洋子が入ってくる。体操マットの縁に足を取られてよろける洋子の腕を、指の足りない吉田の右手が、しっかりと握っている。
「なっ、い、い、い、いいだろ、ルニャ。俺、も、も、もうたまんにぇえよ」
「駄目っ。見つかったらどうするの」
「だ、大丈夫だよ。誰も来ないって」
 吉田はちらりと矢吹の方を振り向き、カメラの赤いランプが消えていない事を確認した。ぎりぎりセーフで、芝居は続く。後ろ手にドアを閉め、閉めたその手でベルトを外しながら、右手で洋子を引き倒す。都合良く倒れ込んだ洋子の顔は、パンツを濡らして屹立する吉田の股間の前にあり、頭を掴まれ押し付けられた陰茎が、洋子の鼻を押し曲げる。
「駄目。人が来る」
「大丈夫だよ。もう誰もいねえよ。ほら。早くっ」
 ペイズリーのパンツをずり下ろす。血管の浮き出た吉田の逸物は、ほぼ垂直に天井を指し、先端から零れた粘りのある滴が、涙の様に陰茎を伝う。
 洋子は上出来と言える演技で周囲を確認し、観念した素振りで赤黒い逸物を含んだ。粘膜と唾液の嫌らしい音が器具室に響き、露天風呂に浸かった瞬間の年寄りの様な表情で虚空の一点を見ている吉田の口からは、吐息が音を立てて漏れている。粘液の音は徐々に激しくなり、そのスピードを追う様に、吉田の声も間隔を詰めて行く。それらが最大になった所で、二つの音は同調し、陰嚢が重力に逆らいゆっくりと迫り上がって行った。
「駄目だ。もう俺、我慢出来ねえ」
 吉田はルナを押し倒し、口から放たれた陰茎の先が、臍の下に当たってパチンと音を立てる。
「嫌っ。こんなところで」
「大丈夫大丈夫大丈夫」
 吉田の不器用な指が、リボンを解き、制服のリベットを引き外した。露わになった推定Dカップの乳房。ノーブラ。少し体を横にした洋子の、右の乳首が矢吹を、左の乳首が吉田を見た。矢吹は驚きながらも右の乳首にズームインし、吉田は反射的に左の乳首に吸い付いた。何でノーブラなんだ? 同じ疑問を抱えながら二人は自分の作業をこなし、二分後、同時に同じ事を考えた。
 パンツは穿いてんのか?
 吉田は乳首にしゃぶり付きながら、スカートを捲り上げた。矢吹はすかさずそこにパンし、吉田の欠けた指先を追う。黄色のシルク。滑らかな絹の感触の下に、ごわごわとした剛毛の存在を感じた。
 下は履いている。
 吉田は一気にそれを引きずり下ろし、少しだけ湿った毛むくじゃらの股間に顔を埋めた。喉の渇いた犬が盥の水を飲む様な、動物的な舌遣い。薄目でカメラを見ながら喘ぐ洋子の呼吸が、どんどん速くなって行く。唾液と愛液が混じった嫌らしい汁が、早くもマットに染みを作り、感じ始めた洋子が、自分の髪を掻き毟り出す。
「こらっ。お前ら何をやっているんだ」
 絶妙のタイミングで扉が開いた。
「せ、先生!」
 棒読みの台詞を言いながら振り返った吉田の前歯に、黒々とした陰毛が二本、挟まっている。洋子は、さっと制服の前を合わせ、乳首と陰部を隠した。
「あーあー。お前らっ」田中は堂に入った芝居で二人を交互に見やり「これで二人とも退学だな。」と唇を歪めて嗤う。矢吹は田中のリアルな芝居に感心した。
「野球部も当然、都大会には出場停止、だな」
「先生、それは。それだけは」
「駄目だ。野球部の部長が、あろう事か学内でこんな事を。見逃せんなぁ。私の責任問題にもなる」
「先生、それは。それだけは」
「何度言っても駄目だ。早速指導部長に報告しなくては」
「先生、それは。それだけは」
「まあ、それほどまでに言うなら黙っていてもいいんだが…」田中は蛇のような双眸を女の方に向けた。「分かるな」
 観念した洋子がコクリと頷く顔を撮りながら、矢吹は田中の股間を見て驚いた。その形がはっきりと分かる程に、田中の逸物が怒張している。