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むべやまかぜを 幕間

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 「みんな年取っちまったんだろう。アニメーターも漫画家も作家も編集も。でも……気持ちだけは若いまま。っていうか、いくらやっても大人になりきれない。幼稚なまま。結局はどこででも通用しない人間。時間だけは待ってくれないよなあ……」
 菜園男は末吉よりも一回り以上年が下。けれど、世の中の見方は遥かに醒めている。そして物書きヤクザにとっては、いまだにどんぶり感情で世の中を渡っていけると信じている痴れ物ブローカーよりも、小松菜一束いくらという計算をしている若いエロ作家のほうがまともなように思われるのだ。
 「時間は待ってくれない、か。そーだよね。気がついたらあんな小太りの中年になってるなんて、不運だよねえ……」
 少女は他人事なの簡単に言い、そして、そこで思い出したようにして言った。
 「あ、そだ。ダンナ、オメガ文庫って知ってる?」
 末吉が置いていった奇妙な案件。それはアネキ分への依頼。
 「なんかさ、さっきのブローカー野郎がアネキに仕事を依頼したいとか言ってて……」
 少女の問いに、山田は不思議そうな顔を作った。
 「あれ、オメガって末吉さんのところがやってたんだ。松風だよね」
 「そう。なんかさっきのオヤジがそんなこと言ってて……でも、あんまりよく知らん」
 丸山花世はカウンター内にいるアネキ分のほうを見やった。大井弘子も、オメガ文庫には興味がないらしい。残り物のメバルを切って、お造りにしている。
 「へー、あの文庫、まだやってたんだ……」
 「まだやってた? なんじゃそりゃ?」
 丸山花世は怪訝な顔をした。まるで潰れかけの定食屋のような扱いをされるレーベル。いったいそれはどういうことなのか。
 「松風、前にもレーベル作って、何文庫って言ったかなあ……アルファ文庫だったかな? 十年ぐらい前かなあ。でも儲からなくてすぐに潰れて……」
 「あったわね……そういえば、アルファ文庫……」
 大井弘子は笑いながらメバルのお造りを客の前に置いた。丸山花世は勝手に白身の魚をくすねると口に放り込んだ。
 「……んー、なんだアネキも知ってたのか」
 「地味に、ね」
 「松風も何考えてるのかな。末吉さんのお追従に乗せられたのかなあ。よくは分からないけれど、ライトノベルが儲かるって思ったのか。前ダメだったのが、今になってよくなるわけないと思うんだけど……」
 「ふーん」
作品名:むべやまかぜを 幕間 作家名:黄支亮