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タクシーの運転手 第四回

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「本当にいいの?」
「僕は全然いいですよ。あなたのほうこそいいですか?」
「うちは、どうせ行くあてがないから…」
「じゃあ決まりですね」
 そう言って彼はタクシー乗り場に停めた。
「ふぅ、あと3時間半くらいですね」
 彼は腕時計を見て言った。彼女は窓の外から周りを見渡している。
「寝てもいいですよ」
「こんな状況で寝れるわけないじゃない!」
 ばっと彼のほうを向いて言い放った。
「安心してください。大丈夫ですよ」
 彼にとっては別に気になることでないようだ。
「絶対寝ないからね!」
 彼女はそっぽを向いてしまった。
「好きにどうぞ無理はしないでください」
「3時間半か~。暇だな~」
「そういえば、何で家出をしたんですか?」
 彼は帽子をはずして、彼女に尋ねた。
「えぇー、言わなきゃいけないの?いろいろ大変だったんだよ」
「無理にとはいいませんが、せっかくですから」
「…まぁいいわ。話してあげる。朝まで付き合ってくれるんだしね」
 彼女は運転席によっかかり、話し始めた。
「いくつか不幸が重なっただけなんだけどね」
 彼女は体育座りをして、身を縮こめていた。彼はうんうんと頷く。
「うちね、彼氏がいたんだけど、最近別れたの」
 それは残念ですね、と彼が相槌をうつ。
「理由はね、一方的で、他に好きな子ができたんだって」
 それはずいぶんと身勝手ですね、と彼が相槌をうつ。
「で、その子がうちの親友だったの。親友だと思ってた子って言ったほうが正しいかな」
 それはずいぶんと込み入った話のようですね、と彼。
「それでめっちゃケンカした。小学校のときから一緒だったけど、あんなにケンカしたのは初めて」
 腕を伸ばして、一息つく。