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タクシーの運転手 第四回

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「どうします?どれでも東京駅に行きます?」
「え…い、行くわよ。始発まで待つわ…」
「始発ですか。長いですよ。あと3,4時間は待つことになると思いますが」
「え~、そんなにぃ?」
 彼女は下を向いてしまった。
「ついてないわ」
 彼女はぽつっと呟いた。
 長い沈黙が流れた。
「そろそろ着きますが、どこで降ろせばいいですか?」
「どこでもいいわ、そこらへんの道端」
 力の無い声で彼女は言った。
「それは無理です、その服装ならおそらく補導されます」
「どうでもいいもん」
「一体どこに行きたかったんですか?」
「行き先なんて最初からないわ、ただ遠くに行きたかっただけ」
 彼女は窓のほうを向いてそう言った。
「家出ですか?」
「そう」
「そうですか。それはまた大変ですね」
「とにかく遠くに、うちの知らないところに行きたかった。逃げたかったっていうほうが正しいかな」
「なるほど。僕もたまにありますよ。日常から抜け出したくて遠出するの」
「でもそれはうちのとは違うわ」
「そうですかね?」
「そうよ」
 彼女は諭すように言った。
「とりあえず放ってはおけないですね」
「え?」
「僕のタクシーを降りた後で何か問題が発生したら困りますからね」
 駅が見えてきた。
「とりあえずタクシー乗り場に向かいましょう」
「え、なんで?」
「あそこなら朝までタクシーを止めていても大丈夫でしょう」
「それって…」
「始発がくるまで待ってましょう」
 ハンドルを右に切りながら彼は言った。