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Merciless night(3) ~第一章~ 境界の魔女

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 と軽い笑みをこぼす。

「じゃあ成人、屋上頼んだわね」

 そう告げると、ファミーユはDMFBと魔術師で混成された敵達へ突っ込む。

「姫の頼みなら仕方ないか」

 オレは生徒玄関へ向かう。
 正面にはDMFBと魔術師それぞれ4体ずつ。
 因みに、視界にはもっといるが省かせてもらう。
 なんで?いや、相手にしていられない。
 生徒玄関へ走る。まず、オレへ向け放たれた魔術による攻撃をかわし、攻撃してきた魔術師を一刺し。刺した剣を抜き振り向きざまに、ナイフを投げ右側にいる魔術師の脳天へ突き刺す。
 補足、ナイフの柄は刃の部分と切り離しができ、刃と柄は細いワイヤーで繋がっていてナイフを投げた後自分の手に戻すことが可能。ハイテクだ。
 最初に刺殺した魔術師が黒い塵となり消えると共にDMFBが迫る。
 DMFBとの間合いを見極める。
 間合いは剣の長さ分じゃない。自身の利き足半歩を剣の刀身に足した距離。
 およそ140センチメートル弱。
 間合いに入り次第、

「フッ…………」

 DMFBを一薙ぎに切る。
 そのまま駆けて目前のDMFBを飛び越え、敵を後ろ目に刃で背中を切り払い着地する。
 オレの後ろ、駆け抜けた道は黒い塵が舞う。
 ふと、ファミーユの方を見る。
 魔術のオンパレードとしか言えないぐらい、両手の黒騎士戦同様に光輝く柱で敵を切り裂き、範囲外の敵はファミーユの周りをグルグルと回転する収縮された太陽のような球体が一掃してゆく。

 こいつは、新型か……。

「っと………………」

 魔術師の放った光弾を避ける。
 余所見している場合じゃなかった。
 時間はこく一刻と迫る。
 魔術を使えないのは不便だが、逃げるために必要なのは足だけだ。

「後は頼んだ、ファミーユ」

 恐らく聞こえただろうと信じ、魔術師の光弾を避けながら生徒玄関へ駆け込む。
 ガラスを割り校内へ。
 後ろでは今も戦闘が繰り広げられている。
 また、ファミーユに押し付ける形となるが……、まぁいいか。
 ファミーユ強いから。

 ………………いや、待てよ。

 強いならファミーユ自身が屋上に行けばいい話じゃないか。
 リティを殺すと最初に言ったのは誰だよ。
 これじゃあ、城の最上階に姫が囚われているから、助けに行けと言われているような……。
 まさか……、魔術式の中心は下で屋上はもう一つの魔術式が敷かれている?
 それなら校内に足止めの敵が出てこない理由と重なる。
 そうなれば上にいたリティは幻想で、実はすでに下にいるということ。
 なら、

 上には……。

 急ごう。考えている余裕はなかったことを忘れていた。



 校門をまっすぐに抜けた、学生玄関の中にオレはいる。
 早く、急ごう、とは言ったものの……。
 現状、目の前に広がるDMFBの群れ。こいつらに行く手を阻まれ、邪魔されている。
 DMFBは略さないで言うとDirectional Magic Fusion Being。日本語訳は『指向性魔力複合生命体』。
 とりあえず言えることは地球外生命体、ではないということ。
 まあ、この世界にある魔力を媒体として存在しているのだから当たり前か。
 先ほど倒していたDMFBは説明した通りの昆虫系統のやつで大きさは人間くらいで、形はカナブンを想像してもらえたらいい。別に小さい虫を剣でぶっ刺していた訳じゃない。
 で、今目の前にいるDMFBは獣。
 想像するなら、ハイエナとか犬がいい。
 4足歩行の動物……と言うよりは怪物が廊下に10匹。

「ここ……動物園じゃ……ないよな」

 て、いきなり突進してくるな。
 飛び来るDMFBを軽く右に避け、敵が横を通り過ぎると同時に、もう一体が右前足を上げ飛びかかろうとする。
 避けることはできない。

 なら、切って進むだけ。

 飛びかかる前にDMFBの脳天を突き、素早く剣を払い後方へ行ったDMFBを薙ぐ。

「ゆっくりしてる、暇はない」

 目線を敵のいる廊下へ向け、眼前の敵の配置を頭に入れ走る。
 それに気づき4体が駆け迫る。残りは未だ気づいていない様子。
 4体じゃ……勝てない。
 一番始めに近づくDMFBの前足をしゃがみ回し蹴りでこかし、 次に来た、宙に浮き爪を光らせ今にも切り裂かんとする獣の腹を飛び蹴りで一発。

 残り2体。

 先行する敵を頭に入れつつ、遅れてくるもう一体に剣を投げつける。
 投げた剣は見事頭にヒットし、先行する敵が飛びかかるのを横目にナイフで口から尻尾まで裂き、後方の頭を穿たれた敵から剣を抜き残党へ疾走する。
 
 1階の犬たちを倒し階段を上がる。
 時間は刻一刻と消える。
 足を急がせ一気に上る。
 息を切らせながら辿り着く屋上手前の扉。
 汗で湿った左手でドアノブを掴み開ける。
 地上からより鮮明に見える魔力の月。

 そして――

 ただ一人佇む少女の影。
 もう一つの月がその影を照らしだす。

「……そんな」

 そこにいたのは、ところどころに黒い鎧を纏った坂宮だった……。























「まさか、魔術式の場所を当てるなんて」

 DMFBと魔術師を殲滅したファミーユの前に、茶色く長い髪を靡かせ現れる少女。
 少女の出現とともに、何もない、ただの地面に魔術式が描かれていく。

「やっぱり、こっちが源だったのね……」

「どうしてお分かりに?」

「普通は屋上へ来るまでの時間稼ぎに駒は使うものだけれど、それってつまらないじゃない?なら、目的地と見せかけ本が当たりでした、の方がいいわ。駒は隠匿にも使えるから」

 少女は微笑を含みながら、喋る。

「その通り。あと前言の“まさか”は撤回します。あなたは最高位の魔術師ですからこれぐらいは余裕でしたね」

「そうね、子供のお遊び程度に簡単だったわ」

 ファミーユの口調に少女は眉を険しくさせる。
 挑発に乗った。ファミーユは一人口元を釣り上げる。

「そう、でもここからは子供のお遊びとはいかせない。最高位であろうと倒す」

 ファミーユはゴクリ、と唾を飲む。
 さっきまでとはまるで違う何かにファミーユは気づく。
 ここからは全くの別次元。
 
 殺るか、殺られるか。

 一瞬で生死が決まる。この刻……。


「畏れるならば退け。ここは無情の死地」

 少女の周囲から現れる約直径110センチメートルの二つの黒い火の玉。
 その一つをファミーユに向け、仁王立ちする少女。いや、その姿を少女とだけで言い表すのは語弊を招くだろう。
 その眼光、その脚線、その身構え、その気迫は、歳とは不相応であり遥かに超えている。

 
 故に、一言で畏れを抱かせ、威圧を与える、


 『羅刹の如き少女』と表記するのが妥当だろう。

 それほどに今のその者は何人も近寄らせない邪鬼であった。

「『ギガス』所属リティ・ビレット。テンプル魔術団最高位『賽の目』ケイトの名の下に抹殺する」

「こちらこそ、最高位に挑む者として」

 二つの月の下二つの影がぶつかる。
 振り下ろされる光る柱。
 空気を走るその光は夜の黒をバックとし美しく写る。