文芸部での活動まとめ
「プレイヤーは楽しいが巻き込まれる帝を思うと苦労が目に見えるな…」
と、三人で話していると目の前でステージがすり上ってきた。壇上にいるのは鎧を着た仮面の男。どっから見てもただの変人だが、一応これでも帝の称号を関する男である。通称は緑帝だ。
「レディーースエーーーンドジェントルメーーーーン!!!」
緑帝が大きく声を張り上げ集まったプレイヤーたちに呼びかける。
「……相変わらずだな」
壇上の緑帝を見ながら、シルビアが呟いた。
「今宵この場に集まってくれたことを深く感謝する! それでは今回のイベントの後半戦のステージへ案内しよう!!」
緑帝が大げさに腕を振ると、近くに特殊ゲートが出現した。あれが彼の言うステージへの道なのであろう。
「このステージには合成用アイテム≪雪玉≫が隠されている! 普通に転がっているものもあればモンスターが守っているものもあるので初心者諸君は気をつけるように」
では諸君らの健闘を祈る! そう言い残すと緑帝はゲートへと姿を消していった。
ゲートを抜けたトゥエルたちを待っていったのは一面の雪景色だった。
「イベント専用に作ったみたいだなこのダンジョン」
あたりを見渡しながらシルビアはそう呟いた。その顔は少々あきれ顔である。
「宝箱を探せばいいのかな?」
「だと思うが」
「とりあえず探してみよう」
「探さない事には始まらないしな」
方針を決め、二人はその場から離れようとした。が、
「あ、あれかな?」
その場を離れるまでもなく、目の前には小さな宝箱が。
「……なんてあっさり」
拍子抜けだとシルビアは言う。
「一つ目は簡単だったね 」
「大体こういう場合最後の一つとかって入手困難なんだよな」
「とりあえず次探そう」
一つ目を見つけたのでそうそうに二つ目を探すことになった。とくになんの悩みもなくトゥエルは道を進んでいく。
(方向音痴に任せてもいいのだろうか…)
少し不安顔のシルビアだったが、とくに行くべき場所もないのでトゥエルに従うことにした。
そんなシルビアの様子を知ってか知らずかトゥエルはどんどん細い道に入っていく。
「どこまでつづくのかなあ」
「さーな」
そうして歩いていると少し、開けた場所にたどりついた。どうやらいつのまにか鍾乳洞の中へとはいって行ったようだ。
「外の雪景色も綺麗だがここもかなり…」
美麗なグラフィックにシルビアは感嘆の声を上げた。
二人してしばしその場を眺めていると、彼らではない男の声が響き渡った。
「おや、来ましたか」
その姿を見て、二人は瞠目した。白を基調としたローブを着たその男は……
「帝じゃないか……」
シルビアのその言葉に男はにっこりとほほ笑んだ。
「白帝、白沢といいます。雪玉、見つかりましたか?」
「一個見つけました」
「そうですか。では私が持っている雪玉を合わせれば完成ですね」
にこやかな表情をしているがどこか裏のあるような顔を白帝はトゥエルたちに向ける。
「モンスターが持っているとは言っていたが帝もとはな…」
「……」
二人の間に緊張が走る。帝が相手となるとちょっとやそっとじゃ太刀打ちできないだろう。
トゥエルはゆっくりと己の杖を構えた。
「ふふふ、やりますか?帝である私と」
「見逃してくれなさそうだしな」
シルビアも武器である二振りの剣を出現させ瞬時に身構える。
トゥエルはすでに攻撃魔法の詠唱を開始する。
「その手に集うは氷の刃、白銀に揺れる……」
「おやおや、そんなに急がなくてもいいんですよ?」
その詠唱を遮ったのは白帝だ。戦う気配のない白帝にシルビアは警戒を強める。
「私はこんな遊びにつき合わされて真面目にやる気なんてありませんから」
「何が言いたい」
「他の帝は力づくで奪うことになるでしょうが私はそうではないということです」
詠唱をやめたトゥエルは白帝を見つめて、疑問を投げかける。
「……普通に渡してくれるの?」
「いえいえ、ただでは渡しませんよ」
一応帝の仕事ですからね。ほほ笑みながら白帝はそう言った。
「じゃあどうすれば渡してくれるんだ?」
シルビアは警戒したまま、白帝に問いかける。二人に武器を向けられたまま、しかし余裕のある顔で白帝はこう言い放った。
「とんちです」
一瞬、時間が止まった。
「……とんち?」
「そう、なぞなぞと言った方が正しいかもしれませんね」
にこやかに白帝はそう答える。
「戦って奪うんじゃなく問題に正解しろってことか」
状況を飲み込んだシルビアが確認の意味を込めて呟いた
「……別に戦ってもよかったのに」
トゥエルは不満そうにそう白帝を見る。
「おや、私に敵うとでも?」
一応帝の中で一番の古株ですよ? と、少しおどけて白帝は言った。古株ということはそれだけ長い間他の帝候補生を倒してきたということだ。その実力は計り知れない。しかしこの少女には大したことではなかったようだ。
「……やるだけやってみたかった」
少し目が据わってるように見えるのは気のせいだろうか
「貴方が帝になったらお相手して差し上げますよ」
にこやかにそう返され、トゥエルは諦めるしかなかった。
(…巻き込まれる俺のこと考えてほしい)
「おしゃべりはこのくらいにしてましてとんち5連発と行きましょうか」
白帝は先ほどまで浮かべていたのとは違う、別の意味で緊張を覚えるような笑みを浮かべた。
そう言われた瞬間トゥエルはシルビアのほうへ向いた。
「まかせた」
「トゥエル……」
最初から丸投げする相方にシルビアは文句を言いたそうな目を向ける。
「懸命な判断ですね、見たところ苦手そうですし」
「だから戦う方がいいって言った」
真面目にトゥエルは言い返した。
「コイツに挑発は聞かないぞ」
「そのようですね、では貴方に答えていただきましょう」
「お手柔らかに」
「Aさんは参加していたマラソン競技で、ゴール直前に6位と5位の人を一気に抜いてゴールしました。さて、Aさんは何位だったでしょう?」
一問目の問題だ。
「4位」
トゥエルが自信満々に答えを言う。
「じゃありませよ」
にこやかに否定された。
「5位抜きゃ自分が5位だろ」
「正解です。では次、帰ってくる子供を待たないで食べちゃう野菜は?」
「子を待たないで、こまつな。駄洒落かよ」
「なぞなぞってそんなものでしょう? 次は文字を必要とするのでコメントバーに表示します」
表示された言葉は[末、亀、学、恋、影、盾、池、桶]
「8つの文字のうち、ひとつだけ仲間外れがあります。さてどれでしょう?」
「う? う?」
続けざまに出される問題の数々にトゥエルは何も言えなくなってしまっている。
「ついにトゥエルが答えなくなったか」
「一応レベルは上げてますからね。で、お答えは」
「学、だな」
「ちなみに理由は?」
「漢字の後ろに!をつけると命令形になるが学はならないから」
「そのとおりです。では4問目、悪趣味な人ばかりが乗っている乗り物とはなんでしょう?」
いままで目を回してたトゥエルが復活して、答えを堂々と言い放つ。
「金ピカの長い車」
「確かに趣味が悪いですねぇ」
苦笑された。
作品名:文芸部での活動まとめ 作家名:悠蓮