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文芸部での活動まとめ

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「……お前は兄ちゃんを癌にでもしたいのか」
 弟の容赦ない一言に幸樹はがっくりとうな垂れた。
「だ、大丈夫ですよ先輩! 私も何回か食べましたけど大丈夫でしたから!」
 それを聞いてしまっては何もいえない。一同に微妙な空気が流れる。
「えっと……次だ次!」
「そうだな、次は私が引く」
 春樹は話題をそらすため、次を促し、雪音は素早くそれに応じた。
 こういうところは無駄に息が合う二人だ。
「私は……梓のだな」
「私ですか? じゃあどうぞ〜」
 梓から渡されたのは、ピンクの可愛らしい包みに包まれた弁当箱だった。雪音はそれを丁寧に開けていく。
そして全て開け終わった時、辺りに妙な沈黙が生まれた。
「あぁ〜あれだな、漫画とかに出てきそうな記号的愛妻弁当」
 沈黙を破ったのは幸樹だ。彼の言ったとおり、それは愛妻弁当を記号で描いたらこういうものができると思われるようなものだった。もちろん、ご飯の上のハートマークは欠かさない。
「ちょっと頑張ってみました〜」
「……頑張りすぎ、というか使いどころが間違ってる気がする」
 雪音は軽く頭を抱えたくなった。どこに仲間内でのシャッフル弁当会にここまで手の込んだ弁当を作ってくる奴がいるのやら……。少なくとも一人は目の前にいるわけだが。
「まぁいいや。次拓海だな」
 春樹が拓海に割り箸を差し出す。彼は何も言わず割り箸を引き抜いた。
「……幸樹先輩のです」
 名前を確認し、結果を報告する。
「ってことは私のはハルのとこに行くわけだな」
 拓海の言葉を聞いて雪音は複雑そうな顔をした。
「なんだよその顔……。で、中はどんなのなんだ?」
 みんなが拓海の持っている弁当箱を覗き込んだ。
「なんかこう無理矢理詰めた感のあるパンが入ってるな」
「しかもこれ購買で売ってるパンですよね」
 全員が一斉に幸樹を見つめる。
「アニキ。これ反則」
「ひどいな、せっかく頑張って詰めたのに」
 幸樹は大きく肩をすくめる。
「ま、まぁ食べれるだけいいじゃないですか」
 幸樹の所にある黒い弁当箱を見て梓が言う。確かにアレに比べたらまだマシなほうだろう。活動内容としては問題がありそうだが。
「……まぁいいや。で、最後は雪音のだな」
「うっ……」
 みんなが雪音の手元にある箱を見つめる。
「たいしたもんじゃないから、期待はするな」
 雪音はそう言いながら、弁当箱を春樹に突き出す。春樹はそれを笑顔で受け取り、みんなと同じように弁当箱を開いていく。
「……おにぎり?」
 そこには丁寧に詰められたおにぎりがあった。
「っ、そもそも私は普段からこういうことはあまりしないんだ! お前がこんなふざけた提案をするから無理に作ったのであって」
 しどろもどろになりながら雪音は弁解を続けようとする。
「あぁ分かったから。大丈夫だって普通に上手そうだし」
「世辞ならいらんぞ」
「いやなんでそんなに殺気立ってるんだよ……」
 困惑したように春樹は雪音を見つめる。
 要するに雪音は気恥ずかしいのだ。そもそも彼女はそこまで家事関係に精通していない。必死に作ったはいいが自身でも出来に満足できていないのだろう。しかも春樹が普通に及第点の弁当を作ってきたものだから彼女としては複雑な心境なのだ。
「いいじゃん。中身全部炭とかパン詰めただけとかより」
「……そのあたりと同列なんだな」
「え、いやそうじゃなくてな……。うーん、雪音が頑張って作ったわけだしそれだけで価値があるんじゃね?」
 春樹の言葉に雪音は唖然とする。
「朝の弱い雪音が頑張って作ったわけだし、それだけで十分だろ」
「ハル、お前……」
 ゆっくりと間を開けて、雪音は言葉を紡ぎだした。
「そういうこと言って恥ずかしくないのか?」
「……そこはもうちょい空気を読んだ発言を」
「しない。そもそもお前の発言が空気を読んでない」
「やっぱり?」
 そこでこらえきれないといったように笑い声が聞こえた。
「やっぱり先輩達って仲いいですよね」
「だな。色んな意味で面白い掛け合いだった」 
 二人が声のしたほうを向くと小さく笑う梓と笑いすぎで顔が引きつりかけてる幸樹がいた。拓海は相変わらず無表情のままだ。
「あ、早く食べないと昼休みが終わっちゃいますよ」
「……それもそうだな」
 梓の提案を受けて、みんなは食べる準備をすます。
「それじゃあ、いただきます!」
 春樹の声が屋上に響き渡った。

今日も多目的活動部は平和に活動を続けている。

「で、ホントにこれ食べれるのか?」
 ただ一人を除いて。




end

作品名:文芸部での活動まとめ 作家名:悠蓮