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空中庭園都市バベル シャングリラ編 序章

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「ちょっとぉ!アタシの可愛い妹夫婦の店でなに暴れてンのよぉ!」


店中どころか通り全体に響きそうな一喝に、客共がびくりと肩を震わせる。
金の巻き毛と威圧感のある巨躯の持ち主であった。
地響きを立てて店の中に入ると、怒気も露に手前にいた客の肩をむんずと掴む。


「この店で暴れたらどうなるか分かってるわよね?」


紙屑でも捨てるかのように軽々と投げ飛ばした。
不幸な犠牲者は地面とキスをする。
悲鳴を上げる間もなく、その上に次々と客達が投げ出され折り重なっていった。
店の外にこんもりと酔漢の山が出来上がる。


「まーったく、どいつもこいつもロクなのがいないんだから!」


わざとらしく手の埃を払うと、巻き毛の人物はカウンターへと近付いていった。
厨房に避難していた少女の無事を確認すると鬼のような形相から一変、相好を崩す。


「ロドナ~、無事だったのね~よかったわ~!」
「ありがと、ベイル。あたしもアザドも大丈夫よ」


ロドナと呼ばれた少女はにっこりと微笑み、店主に腕を絡めた。
店主はぺこりと頭を下げる。


「いつもすんません、ベイルさん」
「いいのよぉ、つい心配で来ちゃうだけなんだから。それよりギオ、アンタってば役に立たないわね~。このくらいの喧嘩、とっとと黙らせちゃってよ」
「一応止めに入ってやっただろ?」
「止めなきゃ意味ないでしょ!店が壊れたらどうしてくれるのよ!」


これもいつものことなのか。
店の外に捨てた客のことなど忘れたかのような四人の態度に、すっかり蚊帳の外になってしまった少年は困惑した。
呆気に取られた様子の少年に気付いたロドナが声を掛ける。


「ごめんなさいね。この辺ていつもこんな感じなの。みんな悪い人たちじゃないんだけど」
「あ、ああ…」
「今作り直すから、ちょっと待っててね」


そう言い残すと、ロドナは散らかった店内を片付け始めた。
厨房からは再びいい匂いが漂ってくる。
少年は一つ嘆息すると、無事だったテーブルに腰を下ろした。