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Wish

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 木綿花の言葉に一瞬戸惑う。航の頭に二つの“帰る”が同時に浮かんだ。一つは、復活した声の報告をしに少し帰郷する“帰る”。もう一つは声が戻ったから、京都へ戻って生活する“帰る”。木綿花が言っているのは……どっちの“帰る”の事だろう?
「報告しに行かないの?」
「あー……」
 あ、そっちの“帰る”。と、航が頷いた。
「うん、来週の週末」
 そう言って慎太郎をジッと見る。
「六日後? お祖父さん達だって、早く会いたがってるだろうよ?」
「なんで?」
「って、“声”!!」
 動く方の手で航の喉を指差し、慎太郎が呆れる。
「……まだ、言うてないもん……」
「は!?」
 木綿花と慎太郎が同時に驚く。
「実際にお会うてからのお楽しみにしとくねん」
 航がペロリと舌を出して言った。木綿花が呆れた顔をしつつ、花瓶と花を持って部屋から出て行き、
「小悪魔だな」
 やっぱり呆れながら、慎太郎が苦笑いする。そして、さっきからの航の視線に気付く。
「付いて来いってか?」
「不自然やん、シンタロいてへんかったら。その為に、シンタロの退院を待つんやから」
「“仕掛人”なの、俺も?」
 自分を指差す慎太郎に、ニッコリ頷き、
「……それだけちゃうけど……」
 小さな……本当に小さな声で航が呟く。
「何?」
「ううん、なんでもない!」
 ――― 戻って来た木綿花にお小言を言われつつ、病室の時間が過ぎて行くのだった。

作品名:Wish 作家名:竹本 緒