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こがみ ももか
こがみ ももか
novelistID. 2182
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愛と引きこもり

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このまましばらく行って、往復二時間くらいかかるところで下りよう。それから駅の周りをぶらぶらして、暗くなったら今度こそ正しい電車に乗ろう。家に着くのは夜、少し夕飯時を過ぎるくらいになるだろう。それが彼にはたぶん、長い反省の時間になる。
「直樹さん、心配してくれるかな……」
どうしてこんなに遅くなったのか。
訊かれても、本当の理由は教えてあげないことにする。



愛と体温



帰宅してドアを開けると、玄関で直樹が正座して待っていた。七海を認めるなりすかさず土下座までかましてくれて、怒るとか笑うとか、わかりやすい感情表現が追いつかない。唖然とした。普段はお気楽そのものの彼がここまで行動に移すのは、珍しい。
帰ったら、抱きつかれるくらいで終わると思っていた。ごめんなさい、もうしません怒らないで。そんなふうに。
心配や不安がストレートにあらわになっている直樹の態度が七海の緊張を解いていく。
「……言い分を聞きます」
どうせなら、このまま優位に立っていようか。そんな悪戯心が顔を出し、七海はわざと高圧的に腕を組んで直樹を見下ろした。寝ている隙をついたような形になったことに対して多少の気にくわなさはあるにしろ、はじめから怒ってはいないのだから言い分も、許すも許さないもない。しかし、なんとなくはわかっていても、彼の口から、彼のきちんとした言葉で本音を引き出したかった。
どうしていきなり、あんなふうにしてきたのか。
ことによっては簀巻きにして放り捨ててやろうかと、直樹の頭のてっぺんを眺めながら七海はわりと本気で考えていた。
「あの、あのですね……寝顔見てたらかわいいなって思って、それで、触りたくなってこう、髪の毛とかほっぺとか触ってるうちになんかすっごいチューしたくなって、……してるうちによくわかんなくなって、もっとしたいとか思って……ました。ご、ごめ……」
「直樹さん、仕事は終わりましたか」
厳しい口調で、七海は直樹の謝罪を遮った。さーっと身体から力が抜けていくのがわかる。直樹も、おもてに出てこなかっただけで自分と同じものを抱えていたらしい。欲張りなのと、劣情とを、彼も自分に対して感じていてくれている。
だからもう、全部隠しておきたいなんて見栄を張る必要はないのだろう。
「え、うん。昨日出したのでもう終わりだけど……」
作品名:愛と引きこもり 作家名:こがみ ももか