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こがみ ももか
こがみ ももか
novelistID. 2182
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愛と引きこもり

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直樹とて無性に触りたい衝動に駆られることがないでもない。しかし彼を目の前にしてもどうにも自然に手を伸ばせないでいた。
面と向かって、が恥ずかしいのではない。なんとなく、怖かった。七海がどんな反応をするのかが不安でたまらないのだ。嫌だなんて拒絶されたらそれこそショックで寝込んで原稿も落としまくって病んでしまうに違いない。しまいには、生活苦になって餓死してしまうかもしれない。そんな絶望的な状況に陥りたくはなかった。
だから、直樹の勇気がでーんと仁王立ちするのはもっぱら七海が眠っているときしかない。
「……かわいいなあ」
今日は授業が夕方からだといって、七海は食事もそこそこにソファの上で昼寝をはじめた。ベッドで寝れば、と勧めるとそれだと起きられなくなるんで、とここに寝転がってしまったのだ。彼は意外と寝つきがよく、直樹が別室から資料を取って戻ってくるころには寝息をたてていた。
読まなければいけないものを放棄して、直樹はじいっと穴が開くほど七海の寝顔を見つめまくった。
それから、見ているだけではもの足らなくなり、まず指の背で頬にそっと触れてみた。肌が滑らかだった。瞼に髪がかかっているのに気付き、それを優しく払ってやる。わずかに七海が身体を動かし、直樹はびっくりして手を引いたが、目を覚ました様子はない。
ほっとして、直樹は再度頬を撫でてみる。やわらかい。頬ずりされたいなあ、と指で顎のラインをたどりながら思った。
前髪をかき上げ、髪の毛の導くとおりに梳く。こちらも髪質がやわらかいのか、包まれるようだった。さらさらと、七海の髪は指の間をすり抜けていく。気持がよかった。好きな相手の感触が愛しい。ほかに、こんな充足感をくれる人はこの世にいないだろう。
側面の髪をいじる途中で耳にぶつかった。薄い皮膚と、硬いながらも脆そうな骨と、ふにっとした耳たぶ。
指先がびりりとした。
「わっ……」
手がふるえてしまった。とっさに腕を胸に抱え、拳を作る。七海に触れている。今さらながら、そんな実感が直樹の中に沸き起こったのだ。急激に緊張して、直樹は身体を硬くした。しかし無防備な七海を前にして、及び腰のままではいられなかった。
作品名:愛と引きこもり 作家名:こがみ ももか