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こがみ ももか
こがみ ももか
novelistID. 2182
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愛と引きこもり

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ひとまずきっかけ作りだ。でもその声も弱々しすぎた。俺は一生かっこいい人にはなれない。
箸を持ったななみちゃんと目がばっちり合う。喉元で心臓がばっくんばっくんしてる。ああああああなんか無理。やっぱ無理。プロット作るより無理。締め切り守るより無理。
「先生? ……うわっ!」
衝動が言語機能を上回った。テーブルを回り込む。うまく喋れなくなってて、それを補うみたく身体が動いていた。
がっちり、ななみちゃんを抱えていた。
「……先生、熱でも?」
「な、ないです……」
「じゃあなにか悪いものでも食べました?」
「食べてないですっ! いや、その、あのですね」
されるがままになったななみちゃんはやけに冷静にひどいことを言ってくる。でもいちいち気の利いた言葉を返せる状態でもなくて、俺はぶんぶん頭を振るしかなかった。
細い身体を両の腕で逃げられないようにぎゅうっと抱きしめて、俺は大きく息を吸った。なにごとも勢い。なにごとも若気の至り。だからいい雰囲気とかなんとか、気にしない。
「俺っ、なっ、ななみちゃん、あの、ななみちゃんのこと、す、好きなんだ」
言った。言ったけど、またしても消えたくなった。死ぬ。これは死ぬ。うれし恥ずかしなんてもんじゃない、瀕死。
内心身悶えまくりの俺をよそに、ななみちゃんはすっと肩の力を抜いた。ゆっくり、背中を撫でてくれる。
「知ってましたよ、俺」
一瞬、なにを言ったのか理解できなかった。たった一瞬、だったけど。
「マジで」
「マジでです。だって、一緒に住もうなんて、嫌いなら言わないですよ」
「あっそうだよねははは」
ばばっと身体を離して、すかさず後ずさった。今さら改まってなんて思われたんだろうか。恥ずかしいそれだったら超恥ずかしい。恥ずかしすぎて、笑うしかない。しかも、引き笑い。仕事放棄してあーだこーだしてたのに、その結末が微妙な感じ。
切ない、みたいな……?
「先生」
飛びすさった俺との間合いを、ななみちゃんがずいっと詰めてきた。どきっとして身体が縮こまる。ななみちゃんの瞳にはおどけた色は一切なくて、俺は青ざめた。そう、言ったはいいけどお返事がまだない。聞きたいような聞きたくないような、でもななみちゃんからは視線を外せない。
作品名:愛と引きこもり 作家名:こがみ ももか