愛と引きこもり
嬉しすぎた。すべては勢い。がむしゃらすぎて笑える。はじめて抱えたななみちゃんの腰は細くてきゅってしててうわあってなった。好き好き、やっぱりすごく好き。こういう子だから大好き。
こういう子だから離れたくない。
「はああ、よかったあ」
薄いお腹にすりすりすると、くすぐったそうにななみちゃんが身体をよじる。でも俺はしがみついたままでいた。だってだって、どっか行かれちゃ困るから。
「先生、ほら、帰りますよ。ご飯食べるでしょう」
俺がいっこうに身体を放さないのをあきらめたっぽくて、ななみちゃんはまたため息をついて背中をぽんぽんやわらかく叩いてくる。濡れて張りついた服は冷たいけど、ななみちゃんの手のあたったところだけはすごいあったかく感じる。
二人で帰ろうって促されてテンション上がった。すごく上がった。
帰りは相合傘だなあ。緩んだ頬をごしごししながらそんなことにはっとして、やっぱりにまにまして帰る、と頷き返した。
愛と告白
恋愛ものを書くことになった。
話を持ちかけられたとき、せいいっぱい断ろうとしたのに押し切られて「考えておきます」と逃げたのに、ななみちゃんが興味津々な表情で、
「いいなあ。読んでみたいです」
なんて言うもんだから即刻書きますなんてオッケーの連絡入れちゃったよ。書ける書けないの問題とか軽く超越して、ななみちゃんが読みたいんなら無理してでも書かねばなるまいと腹を括った。
括った。けど。
やっぱり慣れないことはするもんじゃない。さんざん唸ってのたうちまわって起承転、まで話はできたけど結がいかんともしがたい。どうにも結べない。主人公をツンデレとかなんとかっていう性格にしたのがたぶんいけなくて、嫌いだはよく言うけど好きだとは口が裂けても言わないんだこの人が。
どどのつまり告白するしないあたりで話が停滞中。停滞。停滞……ああっ!
急に、すごく唐突にその事実に気がついた。
「俺っ、ななみちゃんに好きって言ってないじゃん!」
思わず声が出てて、ななみちゃんが学校行ってる時間でよかった。こんなふうにして聞かれたらかっこ悪いにもほどがある。だって一緒に住むことにはなったけどそれこそ好きとか嫌いとか言葉にしてみたことがない。