無敵最強絶対不敗伝説
そして戦争を消滅させる二人ならではの得意技、衝撃波の乱射である。リナはルナと打ち合いをしたときより5倍多く、より強い衝撃波を繰り出せる。ルナは負けじと、当時より数段巨大な衝撃波数発程度だが、連続で繰り出せる。おそらく今打ち合いをしてもやはり決着はつかないだろう。
だが、あいにく打ち合いではなく共通の敵に向けられている。
残酷に4つの黄色眼で強力な一大勢力を次々とねじ伏せていく。午前9時の襲撃から、12時までにヤヘイは7万人まで兵力を失っている。
勢いが衰えない二人は、エアホッケーのパックのようなスピードで駆け抜けている。ここまで全て峰打ちである。ヤヘイ軍の指令のところまで丁寧に敵を倒しながら迫る。とうとうヤヘイの司令官のいる拠点まで差し迫った。
「ボクたちの力は見てのとおりです。降伏してください。」
襲撃からわずか6時間。30万の兵力は6時間で全員負傷という悲惨な結果に終わった。
誰もが動けないわけでは無いが、間違いなく本来の実力が発揮できないレベルで痛めつけられている。
リナの言う"ボクたちの力"とはこの絶妙な手加減を加える余裕を持った上での圧勝を言う。
ヤヘイは退却を余儀なくされた。終戦は実にあっという間であった。
スカイヤでは、偵察から携帯電話による連絡があり、オカダのもとにも連絡は来ていた。
「リナ、ルナの両名がヤヘイを撃退しました。朝の会議をいつものように抜け出してヤヘイに行った模様」
オカダはひたすら驚くばかりである。スカイヤのエリートオカダでもヤヘイが相手では、片時も気が抜けないし、ヤヘイの兵士が三人もいれば、無傷でいられる保証は無い。いくら、オカダを子ども扱いできる強さとはいえ、ヤヘイ30万を撃退とは行き過ぎている。
だが、ヤヘイから降伏の文書が届くあたりウソではないらしい。オカダは黄色眼二人という組み合わせがいかに恐ろしいかを認識するばかりであった。
終戦後、無傷のスカイヤ軍554万の壮大な宴会が催され、リナもルナも大いに飲んだ。無理をして、泡盛を飲むが、二人はあっさり眠ってしまう。
二人はあんまり酒豪ではないようだ。オカダは、酒で赤みを帯びたリナの顔を見てつくずく、大きくなったと喜び、隣でリナの手を握って寝るルナを見て、いい友達ができたものだと喜んだ。
リナは藤田の船を使って海賊をすることにした。何のことは無い。山賊と盗賊を狩りつくしてしまっただけである。山賊と盗賊はルナが面倒を見ることになった。
ルナは中島の事務所の上座に構えて、全構成員に通知した。今後の事業の方針はガーデニングショップであると。
また、リナはこののち、海賊として各国の動きで不穏があれば襲撃するという腹づもりである。
もっぱら、世界に散乱する海賊の鎮圧を目的とした。リナは仁商連については、花屋の経営を指示していた。
果たして仁商連は本当に花屋とガーデニングショップを経営するが、これはまた、後に語られる。
さて、現段階で語られていないチボーンについての話に入る。科学都市チボーンには一見頭でっかちがひしめいているイメージだが、軍隊もある。こちらの軍隊は悲惨なことに、訓練中に逃げ出す兵士をいかに減らすかが課題となっており、もっぱら化学兵器を使った戦いが主体である。白兵戦にはお世辞にも強いとはいえない。
だが、科学の研究とともに、魔術の研究も盛んに行われている。魔術を実戦に取り入れる動きによって、ヤヘイから格闘術の講師を招いて、格闘と魔術を組み合わせた新格闘技が現在目下の流行になっている。
訓練所には赤い目をした男がいる。その男の周りに次々と人が降ってきては気絶している。
男の名はチャッピー。何のことはない。今しがた訓練の総当たり戦で対戦相手をまとめて吹き飛ばしただけである。攻撃をまだ喰らっていない残りの訓練生が近寄れずにいる。
「サービスタイムだ。術を抜きにしてやる。・・・なんだよ。そう怖がるなって。じゃぁおまけで目とじといてやっから。」
チャッピーが言う目を閉じるはすこし意味合いが違う。このセリフを言い終わるとチャッピーは普通の人の目に戻っていた。この男、黄色眼の上位である赤目を使うのである。
赤目を解けば訓練生も我に返る。赤目の力は黄色眼以上の身体能力増大に加えて、ひるませるのではなく、くじけさせる。リナ達でも、相対効果でくじけずにすむかもしれないが、確実にひるむ。
ヤヘイのエリートも黄色眼対策をしているので、くじけるまではいかないだろう。常人でもスキルで黄色眼を跳ね返せる。全て兼ね備えれば、死神の力にも対抗できるという。
死神の力は、眼球が漆黒で瞳が赤という異様な様相で、伝説の剣聖が数秒だけ開眼したというものだ。
さて、チャッピーはゲームのような感覚で、次々と相手を倒していく。魔術師らしい杖を巧みに使うことで、才能に恵まれているほどではない体術をうまく生かしている。
チャッピーはチボーンにおいては現在歴史上最強の戦士として名を馳せている。
さて、そのチボーンにスカイヤ周辺の海を経由してマウントが攻め入ってきた。マウントはスカイヤに領土の分割譲渡を約束して、戦争中はスカイヤを自分たちの領土のように行き来して使うことができる条約を結んで攻め入ってきたのだ。
ヤヘイは先の戦いで学徒動員までしておきながら全滅。スカイヤはマウントと手を組んでいる。オーシャンは結界で行き来できない。援軍は頼めない。
不幸中の幸いは、マウントの勢力の中に生きる伝説ルナがいないところだ。
チャッピーはこの知らせを受けて、チボーン魔術部隊の本部に向かった。
チャッピーはリナより3歳年下で現在19歳。だが発言力は大将と同等である。
「マウントのバカどもは、スカイヤに頭下げて海から攻め入ってきた。ご苦労なこったが、俺達は、水流を操る魔法でたかってくる船を掃除する。荒れたヤヘイを通ってこないマウントの間抜けっぷりに感謝するこったな。ヘヘヘ。」
チャッピーはその名前、格闘スタイルにとことん似合わない話し方をする。根は愛国心が強く、仲間思いの悪いやつではない・・・。遠く海のほうに赤目を向けた。
「ああん?海上なのに八卦の陣やってるぜ。俺たちが海賊張りに船こいで、野郎ドモォとか言いながらかかってくるとか思ってんのか?バーカ」
赤目のチャッピーがこうやって悪態をついているうちは、誰もが笑っていられる。チャッピーは危険になると、無言になるのだ。
さて、オーシャン戦ではとんでもない目にあったマウントだが、チボーンならば、まさかリナのような化け物はいないだろう。
ルナもいないが、マウントは武器、武装の一流国家である。その辺の右半身と左半身の日焼け具合がくっきり違うサラリーマンでも、この国の戦闘服を始め装備を施せば、それなりのソルジャーになれる。
特に今話題なのは自動ガードシステムでバイオセンサーと、共通コードを持った仲間を区別して知らせてくれる。オーシャン戦でも全員持っていたが、どのマシンも
「危険が接近していm・・・」
という具合だったので、まったく役に立たなかった。だが、今度はただの軍隊を相手にするのだから、大丈夫なはずだ。
作品名:無敵最強絶対不敗伝説 作家名:peacementhol