無敵最強絶対不敗伝説
スカイヤを出て、生まれ故郷のオーシャンにたどり着いた。隣国のマウントとの緊張が激しく、いつ戦争が起きても不思議ではなかった。今ではすっかり名うての賞金稼ぎとなっていたリナは現在20歳。オーシャンの軍隊もリナを知っている。早速声をかけられた。
「私は、オーシャン軍、総長である!現在、賞金稼ぎとして名を売っているリナとお見受けする。わが軍は、貴殿を傭兵として雇いたい。貴殿の腕を鑑みれば、言い値で雇わせてもらおう!」
どうやら、給料は自分で好きに請求できるらしい。今までで一番高い金額を言うことにした。
「ナントカステ万円!」
この娘、2年たっても読み方を覚えないツワモノであった。なお、意味を理解できなかった総長さんに、字で書いたら、" じゅうまんえん" と読むということを教えてくれた。
リナは傭兵ではあるが新島組を召集した。新島組以外にも傘下にしていたがそのほとんどが新島組系の組織だった。
スカイヤの組織だがオーシャンには新島の兄弟分の小島がいるという。リナは小島に協力を求めるため、小島の事務所に向かった。
小島商事と極太の字で書かれた看板を目にする。おそらくここであろう。
新島の紹介状を渡せばそれで済むが案の定声をかけられてしまった。
「お嬢ちゃんよぉ…アベシ」
リナもだいたいの会社の仕組みがわかる。大きな会社の末端はこんなものである。下半身は静かに確かにテンポ良く事務所の中へ進んでいく。上半身はまこと軽やかに組員を倒していく。あっという間に組長の部屋に着いた。「これは新島さんの紹介状。力を貸して。」
リナはそういいながら紹介状を手渡した。
紹介状にはリナが現れたら降伏以外に道が無いことが記されていた。
現に小島一家もほぼ壊滅している。小島は観念してしまった。
「どないせいっちゅーねん?」
小島が言う。リナは答える。
「オーシャンとマウントの戦争を止めて。」
リナの言葉に小島はそんなことのために組を破壊されたのかと嘆かざるを得なかった。結果としてオーシャン側につくしかできないと話す小島だが、リナはそれでも構わないとして事務所を後にした。オーシャン国対マウント国まで残りわずかだった。
一方マウントでは一人のヒーローが国を盛り上げていた。ヒーローというよりヒロインと言うべきだろうか。17歳の少女であった。名前はルナ。2本の剣で3キロ離れた巨大戦車を叩き割るという離れ業を見せる天才剣士である。ルナは兵士達の前で演説を始めた。演説の前に目を閉じて気合いをこめてから目を開けると黄色く光る目が現れた。
「私たちの今までの修行は必ずや勝利をもたらします。私たちは負けません。この千人に一人の力にかけてみんなを守ります。」
黄色眼、ひとたび敵対されればにらまれただけでひるんでしまう。だが激励の眼差しであれば不思議と安心感と自信に変わる。
ルナは景気よく巨大衝撃波を後ろの絶壁に叩き込む。強力な爆弾を打ち込んだかのように、絶壁はえぐれ、坂道になった。かなり深々と切り込まれており、緩やかな坂に舗装しなおせば、回り道をしなくても上れるようになるだろう。恐るべきはその破壊力である。たくましき仲間に、マウントは意気揚々とオーシャンに向けて行進する。
この戦いは後に語り継がれる4人の中の二人が世界に名を刻む戦いとなる。
オーシャンの国境は一足早くオーシャン軍が固めていた。勢力は5000人ほど。
この中に5人は黄色眼がいてもおかしくないようだが、実際はそうでもない。才能が千人に一人というだけで、開眼に至るまでの過程はなかなか成し遂げられない。オーシャン軍の先頭に立つリナはマウント勢はまだかと待ち構えていた。
目的は大軍を相手に自分の開発したある技がどのようになるのかを知りたいがためである。
数百人の山賊相手には、あっさりと力を発揮してあまるほどの強さだったが、大軍を相手にどう作用するかは未知数である。
リナは誰もいない地平の向こうをめがけて一閃の衝撃波を放った。遠くから衝撃波が帰ってきた。そんなに強く無いが、オーシャン軍を打撃する。直線上の兵士が倒れていく。どうやら敵にもかなりの実力者がいるようだ。そう、リナはすでに敵の気配を察知していた。マウントが遠くから攻め入ってくる。縦に長い長蛇の陣を展開している。対するこちらは、左右から囲みつける鶴翼であった。
戦闘が開始した。リナは二本の剣を持ち出し猛烈に振り回した。大量の衝撃波が大地を引き裂いていく。
リナが今までに見せたことの無い大技だ。全力で繰り出したこともない。何千発もの衝撃波がマウント軍12000に襲い掛かる。一箇所だけガードが固い。そこには一人の少女が自分と同じ黄色眼で自らそれらを防いでいる。遠くなのに目が合った。直線距離2キロでも障害物がなければ黄色眼同士で目が合うのだ。
その少女は二本の剣を平行に構えて振り下ろした。巨大な衝撃波が自分に迫ってきた。誰だ。1000人に一人の力で、自分と同じ力で、自分とは違うタイプの攻撃で・・・リナは驚くばかりだ。
ルナは自らと同じ目の少女が大量の衝撃波を繰り出し、自軍を次々と破壊していくのに驚いた。
大きな力は集めて巨大にして使うべきだと見せ付けるべく、その少女に大きい衝撃波を見舞ったが、遠くに見える少女は、流れるほどの大量の小さな衝撃波をどんどんぶつけて、自らの放った巨大な衝撃波を打ち消してしまう。まさかオーシャンにこれほどの者がいるとは思ってもいなかった。
巨大な衝撃波はマウント軍広しと言えども防げるものはいないが、確かに止められた。さらに追い討ちが来れば、マウントの生きる伝説といえども、危険だ。
だが、幸いに相手の少女も止めるのが精一杯のようだ。追撃は来る気配がない。
技の応酬をしているとすでに両軍とも戦える状態ではなくなっていた。戦場はリナ、ルナの独壇場であり、今は二人が一騎打ちを展開している。断続的な金属音は早いどころか、別の世界のような感覚さえ覚える打ち合いになっている。
オーシャン軍、生き残り200人、マウント軍生き残り150人はこの二人の戦いをただ見入るだけである。激しい打ち合いは止まらない。生き残ったのは強い兵士達だが、それでも彼女らの動きを見切れない。
「リナの力があれほどとは・・・そしてマウントも恐ろしいやつを連れてきた。この二人の行く末が国の行く末となる・・・っ!」
オーシャンを引きいる大佐が一言つぶやいてじっと戦いを見つめる。マウントのほうでもそれは同じだ。
「わが軍の生きる伝説、ルナとこれだけやりあうとは、オーシャンは何をやったのだ?」
マウントを率いる准将はなんとか、リナ達の動きはわかるが、剣筋を見切るのは困難である。なにより両者とも、兵士の数が影響しない戦いなど未知の体験であった。
リナの剣が折れる、ルナの剣もまた折れる。二人はいつの間にか徒手空拳による戦いになっていた。
放たれる拳の先端から突き出る衝撃が、マウントの兵士をなぎ倒していく。
鋭い蹴りの軌道にそってかみそりのような衝撃が、オーシャンの兵士を切り裂いていく。剣では手数重視のリナは格闘では重い一撃を放つタイプになる。
作品名:無敵最強絶対不敗伝説 作家名:peacementhol