無敵最強絶対不敗伝説
あれから年が明け、ライラは9歳になった。専任教師はリナである。まだ小さいからどんな技でもスイスイ覚える。その証拠には黄色眼を使わずにリナと渡りあうだけでなく、リナの持つ技を全て体得していた。
リナが教えることができる技を全て与えたので、次はルナが技を伝授する。リナのスピード重視の技だけでなく、10歳になった今ではルナのパワー系の技もやはり体得した。
ライラは現在、一瞬で千回突く技と一瞬に全ての力を込めて突くという、二大貫通技を体得していた。
「ライラ君、リナの技も私の技も人を傷つけてしまうもの。だから、実戦では自分より強い人にだけ使ってもいいってことにするよ。おばちゃんと約束できる?」
年齢は43歳にもなる、ルナは女性としては誠によくできた女性であった。
「うん。約束するよ。ルナ先生。リナ先生と同じこと言うんだね。僕はいるだけで怖いのかな?」
10歳の少年が言うと非常に心が痛む。
「あなたは才能に恵まれすぎてるだけ。あなたはいい子よ。私が保証してあげる。」
ルナ先生が立ち去ると、今度は少し凄みのあるオジサンが現れた。
「よう。今度は俺の魔法を教えてやるよ。厳しい修行になるから覚悟しろよ。」
オジサンの正体はチャッピー、四天王の一人だ。
「リナ、ルナとの訓練では黄色眼禁止だったと思うが、今回からは使ってもいいぜ?」
実際、魔術には黄色眼はあまり関係ないがツァー・リボン・バーさえ教えなければ大丈夫なはずだ。
ライラが11歳になるころにはラクラクホーンはもちろん。全ての魔術を体得していた。四天王が1年ごとに一人ずつライラに適わなくなる。ライラの才能はまさに究極である。
「チャッピー先生、僕は本当は存在するだけでも危険なんじゃないですか?学校に行ってもみんな僕を怖がる…。」
チャッピーにも少年のこんな憂いは心に痛かった。
「お前の力をいいことに使えばいい。それだけだ。心配すんな。お前なら平気だ。」
チャッピーが言えるのはここまでだった。
「あと、次のゼル先生は黄色眼と六気は禁止な。」
チャッピーはそう言い残して、空を飛んでいった。
ほどなくゼル先生が到着した。
「今回はキミに格闘術をレクチャーする。トレーニングのために黄色眼や六気は禁止だよ。」
たしかにチャッピーが言ったとおりだった。
ゼルに様々な体裁きを習い、奥義も習得した。
ライラは現在12歳。黄色眼も六気も使わずとも十分に強くなっていた。だが、軍隊に入れても無駄だろう。ライは少なくともこんなに強くなる前に軍隊に行き、不動のトップをせしめている。ライラをさらに強くすることはもう誰にもできない。本人の努力しだいだ。だが、その本人はいまだに悩んでいた。
「ゼル先生は闘技場で最強だったんですよね?」
突然の質問にゼルは驚くが、
「ルナが現れるまではね。確かにボクは顔パスで賞金がもらえるほどだった。試合なんてやらせてくれなかったよ。大丈夫。キミは確かに今は世界最強と呼ばれる人たちより強いかもしれない。でもどこかにライバルっているもんなんだよ。」
ゼルはあらかじめルナやチャッピーからライラの葛藤を聞いている。ライラはゼルの言葉で少し安心したようだ。
さて、そのどこかにいるライバルとは嘘ではない。
ライの家がある、スカイヤ地方。そしてライラがお散歩で行ったヤヘイ闘技場。ライが帰ってからも闘技場は新しい年少チャンプに悩まされていたのだ。名前はシン。漢字では、”透”と書く。年のころはライラとほとんど変わらない。
さて、ライラが闘技場から連れ戻された後、君臨したのはやはり8歳の少女だった。
透は長細い特殊な剣を使う。長細いといっても普通の剣が2倍ぐらい伸びたようなもので、たたき折るのは難しい。
やはりライラと同じくつまみ出されかけたが、ライラと同様に修羅まで開き、六気をぶつけ武器を使わずにチャンピオンに君臨してしまった。母親のメグが結局は連れ戻すが、透はライラにまったく引けを取らない有望な才能を持っていた。
透が剣を使った時のことである。振り下ろしからたちどころに振り上げる動作をした。
するとどうだ?
相手の武器が細切れになり、服がビリビリになってしまった。2ストロークの間に何百、何千と剣を振ったに違いない。
透は少女でありながらかつてのアイラを遥かに凌ぐ強さを持っている。
透はその後は賞金を一律、日本円にして10000円という約束で闘技場にしばしば出演するようになった。
時と場所は戻ってライラの方は教師がいなくなったため、旅に出た。六気と修羅を同時に使う体力をつけるべくそのまま歩いているとすれ違う生き物という生き物が倒れてしまう。
そんな調子でヤヘイに入った。最近闘技場を騒がせている少女がすこし気になったので、ライラはとりあえず闘技場に向かった。
ライラが闘技場に入るとやはりズレている実況が入った。
「あのデタラメ少年が帰ってきた!闘技場は今や子供にのっとられている!対戦相手は注目の透(しん)だ。」
透が入場した。ライラはゼルの言葉がウソでは無いことを実感した。
『この子…強そうだ。よーし』
ライラは黄色眼を開けた。
透も黄色眼で睨み返した。
「へえ、目が変わるんだー?これできる?」
ライラは赤目を開いた。
「できるもん!」
透も赤目を開いた。
こんなやり取りでついに二人で修羅を開いてしまった。
「これ以上は無いもんね。君はもっとできるの?」
ライラの問いかけに透は、
「これより上は知らないよ。」
だがもう闘技場である意味最強の実況が伸びてしまっている。修羅とは黄色眼系でも最強クラスのものなので最低でも赤目や死神ぐらいできないと、到底対峙することさえかなわない。
誰もが気絶した中、修羅を開いた二人が武器を構える。巨大な槍と巨大な剣だ。迫力はバツグンだ。しかし、二人の修羅のせいで誰もそれが見えない。
ライラは槍を構え突撃した。10メートル程度の間合いなら一秒を数えない間に詰める。
カキカキィと二合に見えたがこの一瞬で50勝50敗ほどの打ち合いをした。
ライラはこの間に六気も全開にしていたが透もやはり六気をつかう。勝負は平行線をたどるばかりだ。
「僕、ライラ。これ以上戦うとケガしちゃうから、もう辞めたいんだけど。」
「アタシは透(しん)。アタシもそれでいいよ。」
結果は引き分けである。今度からはお互いに黄色眼禁止という暗黙のルールで闘技場は実に四年間この二人に牛耳られる。
ライラと透が13歳を迎えるころ仁商連がヤヘイ地区とマウント地区を取った。四天王がついに世界の統合に乗り出した。
ライ、アイラも現在は仁商連の幹部をやっており、四天王と最凶夫婦による運営体制になっていた。
一年後に変化が起きた。スカイヤがチボーン地区を侵攻した。パンゲイヤは全精力をヤヘイに集中し、隙があった仁商連のヤヘイ地区を奪還した。さらに2年後になると、スカイヤとパンゲイヤは手を結び、仁商連をつぶしにかかる。
二大連合軍の総攻撃は仁商連の四天王らが参入しても引き分けるのがせいぜいだ。
凄惨な戦争は16歳のライラには腹立たしく思えた。なぜこんなに殺し合わなくてはならないのか…。ライラはすこし危険な思想を持ち始めた。
作品名:無敵最強絶対不敗伝説 作家名:peacementhol