無敵最強絶対不敗伝説
「パスタはお箸で食べるんだよ。」
二人はリナの教え通りにパスタをすすった。ナポリタンとミートソースなので、
その後の二人の衣服がどうなったかは推して知るべし。
次に立ち寄ったのはジュエリーショップである。大人のフリをしているのか、アイラはそっけない顔をしている。しかし、ライは確かにアイラがそっけなく横目で様々なものに目を奪われているのがわかった。
『アイラのやつ、赤いのとヒモが長いのを特に気にしてる。素直にはしゃげばかわいい…か、かわいいだと!?いやいやいや、こんなの女じゃないやっ…女…の子…?』
ライはとりあえず言ってみた。
「この長いヒモで赤いのがついてるヤツ…欲しいのか?」
アイラは慌てて答える。
「バッ、バカ言わないでっ!お子さまじゃないんだからっ!」
『こんなのにプレゼントされたって…プレゼントされたら…?…同じの…』
アイラも内心穏やかでないようだ。
「まあ…その…賞金もあるし?余裕もあるし?なんていうか大人ぶる必要もないし?ちょうど2つあるし?取り合い?にはならんじゃんですか?」
もはや挙動不審のライ。
『買ってやったらどんな顔するんだ?…そ、そうさ。似合わない!似合うわけないんだ。似合わないのを笑ってやる。買ってやる。』
「オッサン、この500万の首飾りをくれ。」
「おや、若いのに羽振りがいいねぇ。そいつは高級ブランドの傑作のペアのネックレスだ。ダイヤモンドを織り込んでプラチナで編み上げたチェーンにさらにダイヤモンド10個使用のニューブリリアントのトップだ。一個500万だが、ペアなら750万だ。本当に買うのかね?」
『ラ、ライっ?自分だけかっこつけてっ!』
「ペアって2つ買えば一つ半額か?じゃあ2個。アイラは250万のおまけのほうな。」
「ライ。子供ね…。」
『ライっ!ウソ…。どうしよう!?こんなにキレイなのを私に…!?で、でもでもライはいいのかな?』
「ライ、私のと同じデザインでもいいの?」
アイラは照れるのを必死に隠して聞いてみる。
「別に…同じにすりゃ取り合いにならないし?」
『ア…あ…あ?…アイラ…その顔は反則だ。いつもみたいにふくれろよっ!?なんだよそのもじもじぃッ!』
ライは意外なアイラの顔を見てしまった。とうとう不覚にも、
『かわいい…かわいい…かわいい…いやいやいや、かわいくなんか…かわいくなんか…あるな。かわいい…かわいい…』
「オッサン!裏に俺らの名前を書いてくれ!」
ライはついそう叫んだ。
「はいはい彫り込みね。ところでお金は……はぁ〜い。早速お彫りいたしますですはい。今すぐに。」
ライはお金は…のところで1000万をボンと出した。なぜかオッサンの態度が変わってしまった。
『ライ…そう。私のことを本当は…不器用なところがなんだかかわいい…え?ええっ!?かわいいだなんて…』
アイラは相変わらずもじもじしていたため、オッサンに名前を10回聞かれたのに気がつかなかった。
『アイラ…かわいい女の子。本当はイヤなのかな?』
「な、なんだよアイラ。いらんのんですたいか?」
アイラはビクンと顔をあげプルプルと首を振る。
「わっわ…私っお金…ライにおごってもらって…高くてそのっ私も出すよ。うん半分ね。5000千円!?」
アイラもライも少しおかしくなっている。
「バカ。アイラはたかだか250万のほうで…いや、俺が安いほうでいいから!」
ライもかなりきているようだ。ジュエリーショップのオッサンは微笑ましいのを通り越して呆れた。
アイラのネックレスにはライの名前が刻まれ、ライのネックレスにはアイラの名前が刻まれていた。店員が言うにはそうしなければならないらしい。二人はなんだか、お互いを自分の胸元にぶらさげているようでなんだかヘンな気分であった。
二人はその日、宿屋にてお互いに背中を向けながら、ネックレスを眺めたり磨いたりしていた……。
「でっかいめくま!パンダみたいね(だ)!」
お互いを指差してひとしきり笑うがなんだかぎこちない。眠い目をこすりながらなんとなく次の街にむかった。
マウント地方に近い街であり、途中に山賊や海賊などに襲われたが、睡眠不足であろうと、四天王すら越えた二人の前では相手にならない。
街行く人に道を尋ねると道案内のついでに、
「服が汚れてるじゃないか。ちょうどいい、この街は洋服の開発が特に進んでいる。見ていくといい。」
こんな具合に二人は洋服屋に向かった。香水臭いオバサンに出迎えられた。
「いらっしゃいませザマス。かわいい坊やにお嬢様!このたびはぬぁ〜にをお探しザマスか?」
お面のような化粧をした顔をつきつけられたライは気分が悪くなった。
「か、彼女にピッタリな服を……お、俺はどうだっていいんだ。か、彼女を……。」
ライは虫の息である。無理も無い。もうほとんど歌舞伎役者になっている顔に吐き気を催すような香水である。
「おっじょ〜ちゃんはど〜んなのがいいかしら〜〜ん?」
アイラも真っ青な顔でなんとか答える。
「う、動きやすいのを……ッ」
オバサンは返事をすると、ドスンドスンと地響きを立てて店内に戻り、やがて地響きと共に戻ってきた。
持ってきたのはワインレッドのショートスパッツに太ももまである長いソックス。上着はタートルネックの黒いシャツである。アイラは以外にもかわいらしいと考え、これでよしとした。
「彼のも選んであげてください。やっぱり動きやすいものを。」
オバサンは先ほどのように地響きをあげてくる。今度はライトグレーのスーツを持ってきた。
「見た目はピッシリザマスけども動きやすい伸縮性のある生地を使っているザマス!!かっこよさと動きやすさのハーモニーザマス!」
ライの汚れた服をビリビリ破って無理やり着させる。はだけた胸元がやけに挑発的だ。
アイラはライの姿をみて、なんとなく胸が熱くなった。
勘定は日本円にして5000円ほどだった。ライを担いで店を出て、公園でライを寝かせた。ほどなくライは目を覚ました。
「……!!?」
ライは驚いた顔のまま固まってしまった。マヌケだがなんとなくかわいいとアイラは思ってしまった。
「あーその……きれいなお方。なにやら俺を助けてくれたみたいで…その…」
赤面し、キョロキョロしながらもじもじしているライの姿は面白くかわいらしく見える。アイラは素直に言って見た。
「見直した?私よ。アイラ。かわいい?あなたも似合ってるよ。」
ライはポカンとしている。
「アイ…ラ?うん、かわいいアハハハ…。」
ライは何気なくアイラの手を取り、さすった。
アイラはダマって目を閉じる。ライは目を閉じている意味がわからない。だが見とれてしまう顔だ。
ライはそっとアイラの後頭部を手にして近づけ、やがて二人の顔がかさなった。
「ご、ごめん。つい……」
ライは唇を離すと申し訳なさそうにもじもじする。今度はアイラがライの頭をガッシリつかんでライを奪う。
「おあいこ」
アイラが言えるせいいっぱいである。ついに二人は自分に正直になれた。
時は流れ、3年過ぎた。この3年の間に世の中はずいぶん様変わりした。スカイヤ、パンゲイヤの対立は深刻化し、水面下では軍事拡大を競っていた。また、仁商連も成績を伸ばし、四天王はそれぞれに切り盛りしている。
作品名:無敵最強絶対不敗伝説 作家名:peacementhol