無敵最強絶対不敗伝説
アイラはやはり槍を横に構えて強くなぎ払った。
すると巨大で横に長い衝撃波が現れ、ライの放った衝撃波を次々と粉砕していく。
ライは高く飛び上がり上空から切りかかる。
槍を使うアイラにとっては絶好の形であり、よけられない空中の相手をはたき落とすだけでよい。
槍の射程よりまだ高いうちにライは突きより繰り出す針状の衝撃波を打ち出した。
アイラは直感で受けるすべがないと感づいて身をかわす。
ライはそれを見越して剣を繰り出さず、力をためたまま着地して、一気に剣をアイラに浴びせるが、アイラはその剣を叩き落とした。
一瞬とは言え槍を真横に持つポーズになったアイラは現在一切の警戒が解けている。
ライはここに猛烈な体術を打ち込んだ。
アイラは槍を落とすが後ろに身を翻した瞬間には軽やかなフットワークを伴う体術の構えを見せた。
アイラは一瞬でライとの距離を縮め、全身を使って、怒涛の連撃を浴びせる。ルナが密かに伝授した体術は、普段はパワーで圧倒するが、パワーでは崩せない場合に用いる目的で、体術は早さに特化した技を選ぶ。ライはその逆である。
アイラの攻撃をさばくのは難しいのでライは後ろに引き、片膝をつくようにしつつ力をため、片手をついて一気にアイラに飛び込んだ。
ショルダータックルがアイラに直撃した。
アイラはよろけつつも拳に力をためて、ついに六気を全開にした。
ライは応じてやはり六気をぶつけ返す。
ついにアイラは信じられない早さでライに詰め寄り、空を切る音が出るほどの速度をもってライを攻めていく。
ライはよけつつ、防ぎつつ隙を伺うがなかなかどうして難しい。研ぎ澄まされた六気をもってしてもアイラの攻撃の速さが大きく上回っており、急所を守るのが精一杯だ。
距離を取れば、その距離を力に変えてくるのがわかる。
ライはそんな中ついに、アイラの隙を作り出した。
アイラの拳を胸部で受け、その腕を捕らえる。
その腕を引き出し、投げ飛ばした。だが腕は放さない。かがんで正拳を打ち込む時間すらないので、腕を引きつつ蹴りを入れざるを得ない。
ライの力でもアイラが相手では紳士的には戦えない。
アイラは肩を砕かれるが、まだその瞳は力を失わない。
ライが一撃を見舞って優位になったかという一瞬の、実に小さな油断を見逃さず、六気のうち殺気を強力にライにぶつけた。
とっさの強力な殺気にひるんだライは一撃が浅く入るもとどめを刺すにはいたらない。
だが、ここでストップが言い渡された。
「あなたたちはこれ以上やり合うと命に関わるわ。ほとんど互角だけど、少しだけうまく戦った結果が今のライとアイラの状態。よって、今回の勝者はライ。」
ルナの判定はアイラも納得せざるをえない。だが、ライは強く異を唱えた。
「アイラがとっさに六気が一つ、殺気を強めて俺の一撃を鈍らせた。これは見事と言う他にない防御だ。アイラならこの後に必ず足をバネにしたまま足を使ってくるから、俺は身を引くはずだった。これで仕切り直しだ。第二戦を要求したい。」
ライはまだ勝った気ではいないようだ。
リナがさらに言う。
「じゃあ、高いレベルで互角に体力を削りあって、その後にどうなるかは知ってる?いや、知らなくても君たちはわかるよね?」
巧者による戦いは一見地味に見えても高度な次元でしのぎを削り合うため、どちらかが知らぬ間に命を落とす場合が多い。
ライもアイラもそれはわかっていたが、命よりもお互いの強さの結果がしりたかったのだ。
「ライ。私たちは多分ルールという制限の中で剣道や空手で技術を比べあわなきゃいつか死んでしまう。私もあなたと同じ気持ちだけど、戦闘の技術であなたの勝ち。今回は我慢して。」
アイラはライより年下の割りにはじつに冷静である。
さて、さらに月日は流れ、最後の課題が申し渡された。
それは、ライ、アイラのコンビとリナ、ルナのコンビで勝負し、勝つことである。
リナやルナはそもそも一人で二人を簡単にあしらうほどに強い。その二人を同時に倒すとなればライやアイラと言えどもただ事ではない。
それでも今までの修行があれば決して夢ではないというのがリナ、ルナの言うところである。
なにはともあれ、ライ、アイラ対リナ、ルナのツー・オン・ツーの戦いが始まった。
リナもルナも黄色眼を開いて一切の容赦を許さない構えである。ライ達には黄色眼自体は大したものでは無いが相手が途方もなく強いからこそ恐怖の対象に他ならない。
ライもアイラも最初から六気を全開にして、目にも留まらぬ体裁きでまずはリナに狙いを定める。しかし、先読みしたルナがまっさきにアイラの槍を足で蹴り飛ばした。ライ、アイラはこんなものを見たことがない。剣でアイラの槍をさばくだけでも信じらんないのに足でさばくとは驚く他にない。
ライはと言えば横目に見ながらもリナに向けた注意はほどかない。素早く衝撃波を飛ばしながら接近し、何本にも見える突きを打ちはなった。
リナは糸口も見えない怒涛の攻撃を踊るようにかわし、反撃を放つ。
リナの攻撃は現在のライにはしっかりと見えた。
加えて、ライの攻撃を切り返すが、せめてもの牽制が関の山だった。
アイラの槍を裁いたかに見えたルナもまた、圧倒まではかなわず、アイラとは鍔迫り合いを展開している。
ライはリナの攻撃を見切り、リナを見つつも放った衝撃波はルナを狙った。
ルナは鍔迫り合いが互角であるために高く飛んでライの攻撃をかわし、アイラと
の鍔迫り合いも回避した。
上空からは地面をえぐるような巨大な衝撃波を繰り出す。
ライもアイラも当然それは避けるが、逃げ道を閉ざすようにリナの凄まじい数の
衝撃波が二人を攻める。
アイラは槍を地面に叩きつけ、大地を砕いて衝撃波を打ち消し、余力でリナを狙う。
ライは確かに裁きながらも、ルナの衝撃波に当たらぬようにルナを拾うように撃ち落とそうとする。
ライとルナが一騎打ちになるが、ライはひたすらルナの攻撃を直接防ごうとせずに間隙を縫って攻撃を打ち込んで行く。
アイラとリナの一騎打ちではアイラにすれば、リナを見失わないことが最優先である。
死力を尽くして戦う二人。どうにか五分五分と思うが、ライもアイラもなぜか自分達よりもリナやルナ達が押しているように感じていた。
徐々に戦況がリナ達に向いていく。ライがついに膝をついてしまう。なかなか立ち上がれない。アイラもまた、槍を地面につけたまま持ち上げられない。
とうとう立ち往生した二人は敗北を喫した。
「キミ達は1対1ならばもうボク達より上だよ。赤目ならわからないかな?これがボクからのヒント!」
リナが言う。続けてルナが
「あなた達と私達の違いはリナが言う通り、1対1なら…ってところね。」
ライは申し出た。
「俺とアイラで少し訓練したい。命に関わるようなことはしない。」
リナもルナもこれを承諾した。
「1対1で先生達に匹敵するのに2対2では勝てない。それはコンビネーションでは無いだろうか?アイラはどう考える?」
ライの指摘は鋭く、アイラも大きくうなずいた。ライが考案した訓練の第一項目は、分担である。実に無数に的を用意し、たちどころに的を叩くが、二人でかかれば三倍になるにはどうすればよいか?これがキーになる。
作品名:無敵最強絶対不敗伝説 作家名:peacementhol