無敵最強絶対不敗伝説
アイラは練習用の針の先端に槍をあてる訓練から始めた。当然当たらないが、少しずつカチカチとあたるようになってきて、やがては針を折るようになった。次に剣を相手に技を繰り出す。アイラは練習用の槍でルナにその技を披露する。だが、ルナの剣ではなく、アイラの槍が砕けた。とはいえ、ここまでやるアイラにルナは驚くばかりであった。
リナは29歳になった。スカイヤ崩壊後の世界は戦争こそなくなっても、言葉による戦争は続いていた。スカイヤ城で行われる4カ国によるスカイ会議は常に荒れていた。
しかし、4カ国が一切争わずに決まった決まりごともある。リナ達にとっては実に苦しいが。仁商連が世界共通の指定暴力団に決定された。仁義商会連合総従業員数500万人。戦闘可能要員は9割以上。危険な組織として脚光を浴びた。
ゼル、チャッピーは指定暴力団にされた仁商連の運営の為にライ達の訓練には同席していなかった。リナ、ルナの二人が付いているのだから問題はないだろう。
さて、ライとアイラにはあらたに課題が現れた。二人でリナと闘うことである。立会人はルナ。2対1のハンデ戦になる。
先に切りかかったのはライである。以前にも増した六気を駆使して切りかかる。
だが、目を黄色くしたリナに簡単に流された上に、攻撃の勢いをいなされ、反撃を食らってしまった。ほどなく、アイラにリナが切りかかる。アイラが懸命にリナの攻撃をさばくも、攻撃が当たって倒されるのは時間の問題だ。後ろからライが立ち上がり、襲いかかる。
リナはスッとよけてアイラを盾にした。
ライが寸止めするが、アイラは驚くばかり。
ライがあわてて剣を戻した時にはアイラとライの首筋に竹刀が宛てられていた。
「二人ともバラバラだから、簡単になっちゃうんだよ。息をそろえて掛ってくるようにね。」
そうは言っても実力差がまだまだ大きい。
おそらく、リナに閃を喰らえば二人とも立ち往生してやられるのは目に見えている。
次にライが習ったのはリナの持つ究極の突き技である。同じ個所を一瞬で何発も突くことで削り落していく技だ。
ライ、アイラが途方もない修業を繰り返す中、世界は大きなうねりを見せた。
議長を務める、スカイヤの元国王が4カ国の仲裁役として権力を自らに集中させてしまったのだ。これによって世界は実質上一人の皇帝が支配する世界になってしまった。
その名はスカイヤ連邦国家。この大国は後に二分化して、世界をまたにかけて延々と争うことになる。
さて、こんな世界の動きにも関係なくライとアイラは次の課題に入った。
次の課題はルナを倒すことである。
「ルナはボクとは違ってすばしっこくないけど、まともにやりあえば力で簡単にやられる。ルナと戦うときはどうやってそのパワーをいなすかだよ。それと、二人が息を合わせること。大丈夫だね?」
リナの指導が入る。とはいえ、ルナもまたそうたやすく勝てる相手ではない。
アイラが大きな槍できりかかった。
パワーでまずは勝負を挑む。しかし、ルナは軽々とそれを受け止め足で衝撃波をライに向けてはなった。
ライは実はそこにはいなかった。リナから譲り受けた高速移動を駆使したのだ。
実体は現在アイラの攻撃を軽々と受けている剣の反対側の位置である。一点の隙を逃がさない高速の突きをうちはなった。
「あらあら、リナの技を見よう見まねでいきなり私に使うなんてね。」
そんな声がライの背後からする。ライが振り向こうとするが、
「動かない。あなたは負けたわ。」
ルナに言われてもライは叫んだ。
「やれ!アイラ!」
アイラはライを渾身の力で突いた!
槍の重心を整える、反対側の重りの部分である。ライはそれを剣で受け止め、力に変えて後ろ向きでルナに押し迫る。
二人の健闘は実に空しい結果に終わった。
「仲間を串刺しなんてナンセンスね。あなたのパワーは仲間ごと貫くんじゃなくて、仲間を守るために使いなさい。」
突きの姿勢を変えられないアイラの首元にはルナの竹刀が宛てられていた。
ライはアイラの攻撃で勝負上で敗北、アイラは完全に一本を取られて敗北した。
「前よりも数段よくなっている。もう少し頑張ればボク達とちゃんと戦えるね。」
リナはそういうが、二人にとっては2対1で勝てないのはもちろん、1対1で勝てる見込みが現時点で一向に見受けられないことが悔しかった。
年が明け、ライ、アイラの両名はリナ、ルナの持っている技を全て習得した。
……師匠達の隠し技を除いては……。
リナはついに三十路を迎えた。
この年の始めごろに、スカイヤ連邦に異変が起きた。
チボーン、ヤヘイの二国が同盟し、対抗勢力としてパンゲイヤ連合を設立した。
これにより、世界の勢力は二分化された。
現時点で軍事力による競合は見受けられないが、水面下では着々と準備が整えられている。
貨幣の統一や言語の共通化も幾分勧められており、パンゲイヤとスカイヤはこぞって徴兵の募集をおこなっており、報酬は月給にして100万を越えるという内容である。
待遇の良さを全面に押し出して全世界から、一人でも多くの兵士を動員しようと二国は張り合っている。
スカイヤ側のマウントと、パンゲイヤ側のチボーンは技術を交流していたため、軍事兵器の開発も白熱している。
こんな話を新聞で聞いているチャッピーやゼルは衝撃の計画を打ちたてていた。
さて、技を習得し磨きを欠けているライ、アイラに新しい課題が出た。
ライ、アイラが直接戦うのである。
パワーを磨きぬいたアイラとスピードを磨きぬいたライの一騎打ちである。
「俺はおまえを女と思った事はいっちども無い!だから手加減しない!」
ライが毒づく。
「何それ!二度と剣なんか持てないようにしたげるから!!」
アイラも負けてはいない。言葉だけ見れば恐ろしいやりとりに見えるが両者とも毎日のようにニヤけながらこんなやり取りをしているものだから、師匠であるリナやルナもかなわない。
「本当はキミ達をちゃんと戦わせてお互いをライバルにして強くなって欲しかったけど、君達の場合はもうボク達を直接狙った方が強くなると思った。今のレベルならお互いを意識しても大丈夫だよ。」
リナ達の見解は、二人がお互いをライバル視するようなレベルではなかったという。
二人が弟子入りして初めてお互いに武器を向けあう。
先手はアイラである。巨大な槍だが穂先は軽やかで実に早い。技を繰り出さないのは、隙のないライを撹乱するためである。
しかし、ライはまだまだ余裕をもってアイラの攻撃をさばいていく。足技を繰り出してはアイラの攻撃を鈍らせていく。
アイラの攻撃は鈍ってなおも破壊力があり、一撃必殺はまぬがれない。
ライの剣は何本にも見える残像を出しながらアイラに反撃を加えていく。
アイラはライの目線が自分の槍を持っているほうの腕の肩の辺りを指したのを見て、自らは肩を後ろに引き、背中で槍を持ち替えて、やや大ぶりながらライに斬撃を見舞う。
ライは直感で気づき、両腕を使って槍を食い止めるがあまりの重さに吹き飛ぶ。
一瞬で距離が離れるも、ライは宙返りを打って、振り向きざまに衝撃波を打ち込んだ。
一振りで15発。リナの飛ばす数には遠く及ばない。だがアイラの場合はこれでもいちいちさばくのは難しい。
作品名:無敵最強絶対不敗伝説 作家名:peacementhol