無敵最強絶対不敗伝説
男二人がかりで運ぶようなイスをどうやってずらしたのだろうか?
「ライ様私との試合になったら、棄権してくださいませ。私はあなたが倒れる姿は見たくありませんので。」
ライに軽くあしらわれていたわりには、強がる。ライはそんな強がりを聞いて、
「全力でぶつかってきな。俺が倒せれば自慢できるだろう?しっかり受け止めてやるよ。」
ミレーヌはなぜか真っ赤になってうつむく。
「そのお言葉常々お忘れなきよう…。」
そんな事をしているうちに、予選のサバイバルが終了した。
さて、本戦の一回戦は準大将のヒメコとゲンライ師範の戦いである。組み合わせが決まってからいつもと調子が違うヒメコだが、ライはそんなに気に止めていなかった。変なのはいつものことだ。
「ラ、ライちゃん…私の骨、拾っといてくれや。お…おーその・・・多分死ぬわ…」
いつものオカマ口調が乱れているあたり、緊張でもしているのだろうか?ゲンライはそんなにまで強いのだろうか?
ヒメコが最敬礼でリングにあがる。ゲンライはリングに上りながら片手をそっと挙げる。
ヒメコががくがく震えながら、挨拶をした。
ゴングが鳴った。ゲンライは、竹刀をつきたてたままだ。
ヒメコが切りかかる。普段はふざけたオカマだが、いざ戦えばかなり強い。が、ゲンライは微動だにせず、竹刀をバンと地面にたたきつけると、ヒメコが足を取られてしまった。
ライにはトリックがわかった。覇気を込めて地面をたたくことで瞬発的な地震を引き起こしたのだ。ヒメコは半ば読んでいたのか、とっさに横によける。ゲンライは恐ろしい形相で目だけでそれを追う。
ヒメコが衝撃波を飛ばしてゲンライの防御を待つが、片手で弾き飛ばしてしまった。
ヒメコの読みは、ゲンライが守りの体勢に入ってくるところにその虚を突くところにあったが、片手で弾かれるのは予測できずに、余裕のあるゲンライに飛び込んだ。
ゲンライの竹刀が大きな弧を描くと、傍らにヒメコが顔面を腫らして倒れている。勝負アリだ。
5将の一人がいとも簡単に打ちのめされた。
これがかつて将軍クラスを陰で操っていた者の実力である。
本戦の二回戦は、七三分けメガネのタクヤ大将だ。対する相手は、スカイヤの兵長である。現在スカイヤのうわさの兵長として、有名になっており、将来的には将軍クラスを狙える実力を持っていると称される。
いまいちパッとしないが、試合が開始される。
タクヤは竹刀を地面に放り投げ、片手をポケットに突っ込んでタバコをふかし始めた。
「有名な兵長さん……一発当てられたら棄権してあげよう。」
タクヤは空を見上げてタバコをふかしている。
兵長は脅しの衝撃波を3発繰り出して襲い掛かる。兵長の目の前からふっとタクヤの姿が消えた。後ろからポンと肩をたたかれ、
「一回死んだなぁ……」
堂々と背を向けて距離を取り直すタクヤ。
相変わらずタバコをふかし続けている。
兵長は、いずれもすばやくよけられている事を考えた。逃がさないためには、周囲から囲むようにして飛ぶ瞬間を捕まえればいいと考えた。
両手ですばやく二発の衝撃波をV字に放ち、正面から切り込む左右には逃げられない。後ろに引いても届くように衝撃波入りの切りを浴びせるつもりだ。だが、兵長の目の前には足の裏が現れた。ぶつかるがグーっと止められる。頭をポンポンとたたきながらタクヤは言う。
「タバコ終わり。次で最後にしよう。」
兵長は全て攻撃が読んでかわされている事を考えた上で、上空から堂々と切りかかった。
一寸の見切りでゼロ距離で衝撃波を打ちはなつ。剣はタクヤの顔面数センチを掠めた。
タクヤは空中を捕まえるはずが、数センチ届かない。衝撃波がタクヤの顔面をたたいた。
ムクリと起き上がってたタクヤは言い放った。
「君は今日から大将を名乗っていいよ。どうです?大将ライ殿。」
いきなり振られた。ライは少し考えて承諾した。たった3本のうち2本をあっさり取られても、読みの裏をかく攻撃を仕掛けたのは評価するべきだ。音無しのタクヤに攻撃を当てることも確かに難しい。中将クラスでも、至難の技だ。
兵長改め新大将は準大将を下して勝ち抜いた。
次はオカダ対ミレーヌである。
こちらはいきなり激戦だ。竹刀がぶつかり合う音が信じられない早さで鳴り響く。
ミレーヌは手数を重視する短剣の二刀流である。オカダは普通のサイズの剣だ。
オカダはこれでも、準大将と渡りあう力がある。ただ、リナがでたらめすぎただけだ。
オカダの剣裁きは無駄が一切ない、ミレーヌはしいて言うなら見え切っている攻撃が無駄。
とはいえ、防がなければならない攻撃で、相手の守る根気をそいで行く。実に3分、信じられない次元の剣術が続いた。よもや、竹刀でボクシングや空手のようなスピードで打ちあうことなど、まず考えられることではない。
ミレーヌが距離を取るとオカダが直ちに詰める。一刀流でも信じられない手数で今度はミレーヌを圧倒する。
ミレーヌの弱点は、猛攻撃の後の逆襲である。
オカダのように、打ち込んでくると、裁きにくい。オカダは着実にミレーヌを追い込み、
とうとう一本をせしめた。
オカダはリナと別れの際の手合わせで少しでもリナの父として恥ずかしくないように修行を欠かさなかった。ミレーヌはライを追いかけていただけに過ぎない。
ここに違いが生まれたのであった。
準決勝である。ゲンライと新大将の戦いである。ゲンライも先ほどの試合を見ている。
侮ってはならないと相変わらず恐ろしい形相だ。さて、早速ゲンライが身をよじってつむじ風を引き起こした。人を吹き飛ばす程度の力ならばある。大将は身をよじると同じ技で対抗した。こちらは、竜巻である。大きさも強さも大きく違う。
だが、竜巻がゲンライの攻撃を飲み込んで当たるかと思えば、ゲンライはそこにいない。
大将がその場で一瞬硬直するが、肩越しに剣を後ろの上方向にあげた。
手ごたえアリ。ゲンライの肘をたたいていた。
日がちょうど天に昇るころ、大将は自らの影のゆらめきを見て空中のゲンライに対応したのだ。剣をもつ腕に入った一撃のもと、ゲンライは竹刀を落としてしまう。振り向きざまに大将は足払いをかけた。ゲンライが足を取られたところに竹刀をつきつけた。
「ありがとうございます。ゲンライ先生。」
大将は挨拶とともに竹刀を下げた。
ゲンライはそのまま棄権である。無名の大将に伝説の軍曹が敗れ去った。
次はついにライの出番である。強いオカダではあるが、ライが相手では分がわるい。
ゴングが鳴り響いた。オカダが隙を作るべく、なにかを仕掛けてくる。突きだ。落ち着いて身を引く。オカダはバネのように竹刀を引き戻し、構える。
今度は衝撃波だ。小刻みな動きで隙を作ろうとする。ライは、衝撃波を手で弾いた。続く衝撃波も同じ手でさばくと、オカダは距離をとった。ライは地面を打ちすえた。
激しい揺れが、リングを支配する。オカダは膝を突いてしまう。オカダの目の前に竹刀の先端が現れた。ライはみようみまねでゲンライの技を盗み取ったのである。
ゴングが鳴ると同時に、大将がリングに上がる。ライは一切の容赦を許さない。
決勝戦が開始された。
作品名:無敵最強絶対不敗伝説 作家名:peacementhol