無敵最強絶対不敗伝説
10年さかのぼる。ライはあどけないリナが悲しい黄色眼でオーシャンを撃退、スカイヤの憧れゲンライをつれて逃げている。道案内をしてあげたら、二人とも喜んでくれた。さて、ライはいいことをした後で、気分良く道場に引き返した。オーシャン軍はリナの恐ろしさにびびって逃げてしまったようだ。
現在12歳のライは、剣道の道場ですでに敵はいなかった。休憩時間でおちゃらけで、3対1のハンデ戦をやって勝ってしまうほどである。師範は喜びたいところだが、このままでは自らも超えてしまう。そうなると、指導には苦労する。
はたして、ライはやってきた。
「先生、一手お願いします。」
師範はライの放つ異様な気を感じ取り、敗れることを悟りながらも、竹刀を構えた。
正しく構えて、まっすぐに見据える目。恐怖を感じると同時に、体がこわばる。覇気の能力と闘気の能力を合わせたような雰囲気である。実際ライは、理論上でしか証明されていない六気を使うことができる。
六気とは、相手をびびらせる"覇気"、相手をひるませる"闘気"、恐怖に陥れる"殺気"、銃弾を見切る"見切り"、機関銃による乱射を全段防ぎきれる"鉄壁"、銃による攻撃を本能的に察知して、打ち返す"切り替えし"である。
通常、どれか一つを覚えただけで十分に強いとされており、2つ以上持っている場合天才と呼ばれる。
二つ組み合わせれば世界が取れるとすら言われている。
ライは弱いながらも六気をすべて使いこなし、同時に使えるのだ。
師範もそれは知っているが、まさか目の前の少年が六気を駆使しているなどとは思っていない。
師範からしかけた。突きである。教科書どおりに後ろに飛ぶと思えば、かちりと竹刀をあわせてしまった。
「先生、俺はこれを針でもできるようになったんです。実践ではそうはいかないなんてこともないです。」
針でもできる以上、剣や槍でもできることを意味する。間違いない、切り替えしの能力も持っている。
今度はライが仕掛ける。師範は背筋が凍りついて動けない。そのままライに一本を許してしまった。
「君の才能は想像以上だ。軍隊の訓練所を見学して見るかい?」
師範の申し出にライは二つ返事で答え、早速訓練所に向かった。
訓練所では、兵士達が訓練に明け暮れている。ライは早くも訓練所の乱取りに参加した。
柔術の稽古で、自由に技をかけあう乱取り稽古であるが、ライは、次々と倒していく。
わずか12歳の少年に、鍛えられた兵士達が次々に挑んでは投げ飛ばされていく。
拳法の稽古でも同じように負傷者が山積みになっていった。ライの快挙は止まらない。
さて、剣術の訓練が始まる。道場でやっているように、素振りをするが、テンポも速く、回数も多い。
時間も長時間に及ぶが、ライは汗一つかかない。兵士達がもろ肌で息を切らして居る中、ライは、倍速で
素振りを続けていた。試合形式の訓練になると、誰も歯が立たない。それどころか、ライは、その場から動かない。
体勢を変えるために足を前後させるだけである。
「ものは試しで、スリーマンセルでやらせてください。」
スリーマンセルとは3人1組の意で、3対1のハンデ戦を意味する。兵士達があまりにもふがいないために言うが、
「子供相手に俺達が三人がかりというのもなぁ・・・」
兵士達は渋い顔をする。スカイヤの兵士は、戦争以外の場合不公平を嫌う。なので、たとえ、大将と兵卒の身分差でも、
片方が敬礼したからには敬礼で返す。兵卒が、カレーなら大将もカレーを食べる。
それでもライは食い下がる。仕方なく、兵士達は冗談で実行する事にした。
結局、3人1組100チームがライの竹刀に打ちのめされた。やはりライはその場から動くことなく勝利した。
スカイヤ軍の大将の間にこの話が入った。スカイヤの大将は5人。総勢300万の兵力を誇る中のわずか5人である。
スカイヤの階級は単純で強いだけが昇級の基準である。
「12歳で300人抜き。我が軍に入れば間違いなく大将になれる器だ。」
「我々も300人は不可能では無いが、無傷は難しい。」
「こと実戦においては、訓練のようにもいかぬ。剣道と戦争は違う。」
「なら、この子、味見してみようかしらん?」
「児童ポルノ法に違反しますよ??」
思い思いに考えているが、結局"味見"することになった。
訓練所に大将が5人そろって入ってくるのは数年ぶりである。一同が一斉に直立不動の敬礼で向かえるが、
大将達も同じ姿勢になる。そのまま30分が経過する。
「諸君らがその敬礼を止めない限り、我々もやめられない。」
「大将殿より先に礼をとくわけには参りません!」
「ではこうしよう!せーので全員敬礼やめ!せーの」
やっと敬礼が終わる。スカイヤ軍特有の挨拶である。
さて、ライのもとにやってきた5人の大将はライに告げた。
「私達と戦ってもらう。私達は、この国でもっとも強い5人だ。他の兵士達が君に歯が立たないと聞いて、君の力を見たくなったのだよ。」
ライは無言で構えると、全力で六気をぶつけた。そしてひとこと。
「子供と思って見くびっている。あの兵士さんたちは、一切手を抜いていない。」
大将のうち、一番若い大将がすでに膝を突いてしまっている。他の大将達も、竹刀を持ちあげられずにいる。
足が前に出ないのは、覇気の影響。竹刀を持ち上げると、危険だと思い込んでしまうのは闘気。自分が殺されるビジョンが止まらないのは殺気。
切りかかってもあたらない気がするのは、見切り。どんな武器を使っても当てる自信が湧かないのは鉄壁。殴ればそのまま投げられてしまうという
ビジョンは、切り返しの能力。
つまり、5人の大将は全員、100%勝つ見込みがないと気後れしてしまった。膝を突いた一人は、殺されるビジョンに"殺された"に他ならない。
「ウソん?普通は六気なんて一個しかないはずよん?」
ロングヘアーで化粧をした、髭の大将がありえないと否定する。
「我らとて六気を使うが、全て使う者など見た事がない・・・」
七三分けでメガネの大将が言う。
無口の紅一点で美人の大将が切りかかった。だが、ライは大将の竹刀を持つ手をチョコンとつついて竹刀を落としてしまう。
大将が子ども扱いである。この日、スカイヤ軍に一人の大将が誕生した。そして、5人の大将は格下げで準大将という中途半端な地位を与えられた。
ライが大将に就任して2年。14歳になって、正式に入隊が許可されたが、相変わらず扱いは大将のままである。この世界に大将より上を指すとすれば、皇帝しかいないのだ。スカイヤ軍の個室でテレビを見ていると、ニュースが流れていた。
「マウントが、先日未明にオーシャンを攻撃しましたが、たった二人の戦士により、戦争は引き分け、もとい両軍全滅で終了しました。」
画面が、戦場に切り替わる。現地リポーターが話し始める。
「昨日未明、ちょうどこの場所で戦争がおきたわけですが、オーシャンとマウントにいる黄色眼の二人の少女によって、両軍が壊滅しました。ちょうど、戦争を知る兵隊さんにお話を伺えるので聞いて見ます。えー、武運長久お祝い申し上げます。さて、両軍全滅という珍しい結果になったのですが、当時の状況を教えていただけませんか?」
兵士が戦慄の表情で答える。
作品名:無敵最強絶対不敗伝説 作家名:peacementhol