無敵最強絶対不敗伝説
さて、チボーンにはチャッピーがいる。
なるほど、空中を飛んでくる衝撃波は人を吹き飛ばすには最適だ。バリアをつければ問題はない。
衝撃波の威力からバリアの厚さを推し量り、薄く延ばして広げるとすれば・・・50メートルはカバーできるだろう。
「魔術隊は長蛇陣を展開。前衛はバリアを張れ。リナの攻撃に瞬発力はあまりない。中列は、他の2国の動きにあわせて迎撃。しっかり守っておけ。」
チャッピーは今回、チボーンを生かすことにした。チボーンは最大兵力だが、単体での戦争は向いていない。巨大な補助魔法集団であるがゆえに、白兵戦だけは絶対にできないのだ。チボーンをベースにした世界を作れば、戦争を奨励しきれない。
さて、ルナはチャッピーの思惑を見切れなかった。当初の目的どおり、全てを破壊する。
リナ対チャッピーで、オーシャンとチボーンが消えるので、自分はヤヘイと戦えばいい。
だが、ヤヘイは動かない。筋肉と装備による血の宴にするはずなのに、ゼルは何をしているのか?
ゼルのほうもやはりチャッピーのプランをわかっていない。ヤヘイの読みは、オーシャンとチボーンの混乱をさらに深めていくというものである。どうやら、バトルロイヤルは、4者がぐちゃぐちゃに戦うところに美学があるらしい。そういわんばかりだ。
ヤヘイが、飛び道具の応酬をする、オーシャンとチボーンに殴りかかる。
チボーンはチャッピーのいいつけどおり、守りを固めていく。ヤヘイの戦士が近寄れぬように、魔術で妨害する。
それでも、無傷ではいられない。残ったマウントも静観ではなく、一挙に締めくくるべく、飛びいってきた。
チャッピーはチボーンベースの世界の構築プランをラクラクホーンで伝えていなかった。
リナたちの集中攻撃はチャッピーでも防ぎきれるものではない。自分が言い忘れていることに気づく前に、反撃をせざるをえなかった。味方を引き込んでしまうが、もともと全世界の国々から戦争をするエネルギーを奪うのが目的だ。死者も免れないが、チャッピーは一番残酷な魔法を使った。
「ツァー・リボン・バー」
半径数十キロメートルを上空に吹き飛ばす魔法である。中心から爆風が広がるように全てを吹き飛ばしていく。チャッピーは赤目を使わずに使ったが、スカイヤの一部は確実に世界地図上で訂正を余儀なくされる形になっている。
真っ先に異論を唱えたのは、ルナだ。乗り込もうとした矢先に、爆風が自分たちを襲ってきたのだ。
当初の計画通り、マウント軍は大混乱している。ルナは死神を開き、全精力をつぎ込む巨大な衝撃波を放った。豪の一声を発して、戦線の中心部に打ち込む。深さ数十メートル、幅は数百メートルという溝が生まれた。
スカイヤの中心部の湖から水が流れ込む。後にこれは、ルナ川と呼ばれる。
さて、これで、かなりの大軍が、瓦解するが一人だけこの攻撃を受けて立ち上がるものがある。
ヤヘイの筆頭ゼルである。ルナの仕業というのはわかっている。自分ならかわしきれると踏んだのもわかる。が・・・痛い。
痛いが格好がつかないので、自分も技を披露することにした。
赤目を開いて上空に飛び上がる。出来立てのルナ河は遠くに見える。ゼルは前方回転しながら、かかとを地面に叩きつける。スカイヤ地方は巨大な地震が起きた。
それもそのはずである。世界中の地形がこれで、変わってしまうのだ。地盤が均衡を崩して世界地図の訂正がより大きくなる。
その衝撃はスカイヤの外側の大船団も直撃する。ここにリナが呼び寄せた、藤田率いる、仁商連の特殊武装商船団がさしせまる。海軍側も戦争が始まった。
さて、リナが死神を開いた。閃と気合をこめるとリナの姿が消えた。半径数キロメートル内に立つ者が次々と倒れていく。将棋倒しのようなスピード感で倒れていくが、問題は、順番が不規則なのだ。
北で人が倒れれば、西で倒れる。まだ数百万人が、戦っている中、信じられない速さで走り回っているのだ。リナは剣を収めて、走っているだけだが、風を切る衝撃だけで倒れてしまうのだ。
4カ国が混乱する中、駆け回るリナ。その姿が見えているのは、3人だけだ。
下手に近づいてぶつかれば命はなく、そのまま見ているしかできない。
総死者数は実に300万人。リナたちは誰一人命を奪わないが、自分たちで殺しあってしまっている分がある。負傷者は400万人を越える。戦争は下火になってきていた。
海のほうは、中島一家を中心に仁商連が暴れて、全国の海軍を蹴散らしていた。商船だが、武器もあれば、ミサイル防衛システムまで積んである。なにより、リナ達の社員訓練のおかげで構成員はヤヘイでも通用するだけの力がある。仁商連も無傷ではないが、先のゼルの引き起こした地盤変動によって、海が荒れたときの影響で混乱している海軍はほとんど抵抗ができない。リナが暴れているので、リナの死神に対抗できるルナが残り、ゼルとチャッピーが海軍を叩きに来た。
ゼルがヒュンと跳ねて船に降り立つ。チャッピーは空から攻撃する。
今は渦潮や津波などを使えば、仁商連まで巻き込んでしまう。海には今、仁商連500万と4国の海軍300万がいる。800万人分の潜水バリアは赤目のチャッピーでも無理だ。
ゼルが船を一隻のっとると、その船から拳で繰り出す衝撃波をそこかしこに打ちはなった。
科学都市チボーンの武装船も拳サイズの風穴が開くというゼルのオリジナルの技である。
これによって、4国の兵力1300万のうち実に1000万人が負傷した。残り300万は海を泳いで逃げるばかりだ。
河になるような衝撃波を放つルナ、巨大地震を引き起こすゼル、半径数十キロメートルを蒸発させるチャッピー、最後に、数キロ四方をソニックブームで駆け抜けたリナの四人は四天王と呼ばれるようになる。
リナはこのとき27歳であった。
さて、デタラメな攻撃の数々で戦場で起き上がれるものはほとんど居ない。
そんな中で、二人だけ四天王の前に立ちふさがった。
「俺の名はライ。確かスカイヤがオーシャンに攻め入られたとき、ゲンライさんを連れて逃げていた人ですよね?私にその強さを分けてもらえませんか?」
リナはなんとなく覚えていた。道案内をしてくれた少年だ。声も変わっているし、自分よりも背が高くなっているからわかりにくいが、確かにそのときもライと名乗っていたが、偶然だろうか?どちらにしろ、自分が剣をレクチャーするのは初めての体験だ。
「私はアイラ。ガーデニングショップのお姉さんがまさかこんなに強いなんて思いませんでした。私ももっと強くなりたいです。教えてください。」
あのガーデニングショップの店長を打ち負かした少女だ。数年で多少大きくなっているが、槍の大きさは相変わらずギャップだ。
リナはライに、ルナはアイラにそれぞれ技を授けることにした。ゼル、チャッピーは仁商連の役員としてこれから事業をおこしていく。四天王の活躍はこれ以降目立つことはないが、世界で知らぬものがないほどの強さで新しい時代を作っていく。
作品名:無敵最強絶対不敗伝説 作家名:peacementhol