無敵最強絶対不敗伝説
ゼルの全身に激痛が走る。実際、ルナは目の前にいるが、腕が見えない。身体には絶え間なくなにかが、触れているようだが、感覚がない。ただ、後ろに何かあるだけだ。その何かとは壁だが、それもなくなったら、闘技場の外にいた。
「僕は闘技場にいて、赤目の剣士と戦っていて・・・」
ゼルは死神状態のルナに何をされたのかわかっていない。
ルナ視点で話をすると、こうだ。
死神を開いた状態で、ゼルがその場で立ちすくんでしまった。無防備なゼルに歩み寄り、徒手空拳による、ラッシュを加えた。闘技場の壁に打ち付けられるが構わずに殴り続けていると、闘技場の壁がどんどん削れて、とうとう吹き飛んでいってしまった。それだけである。
なお、スクリーンの映像では、ルナの姿からただならぬオーラを感じ取ったが、一瞬でゼルを押し込んで壁に穴を開けたとだけ認識できた。
ゼルは、思い出せない。だが、遠く闘技場から聞こえる声を聞くと、自分は負けたようだ。
赤目で対抗できない力。それがゼルの現実であった。後ろから話しかけられた。
「どうかしら?死神の威力。正直言って、今殴りかかられたら負けちゃうわ。あれ、疲れるのよ。」
ゼルの後ろにルナがいた。闘技場から実に数百メートル吹き飛んでいる間に、後ろをしっかり取られている。
「僕は一瞬とは言え気を失っていた。君の勝ちだ。完敗だよ。」
ゼルは負けを認めた。ルナの力は興味深い。そこで、ゼルはたずねた。
「君はなにか目的があって闘技場に来たのかい?」
ルナは答える。
「暇つぶし。タッグ戦の賞金を稼ぎたくてパートナーを探してたの。あなたなら十分合格ね。赤目だし。」
なるほど、死神は長時間使えないだけに、赤目のパートナーがいれば、自分が死神で食い止めて赤目のパートナーに片付けてもらえるという公算だ。そしてなにより、死神の能力は、伝説の剣豪がさらに伝説として言い残したもの。そうそう気楽にホイホイ使えるはずがない。
ゼルはルナのパートナーとして闘技場を牛耳ることにした。
さて、リナ達はヤヘイにたどり着き、情報を集めることにした。
ヤヘイは今闘技場が大変なことになっているらしい。
なんでも、信じられない能力の二人組みが頂点に君臨し、誰も挑むことすらできずに、いるらしい。
目隠しをした上で、手足を縛るというハンデをつけてさえ、誰もかなわないという。
死神の能力にある程度慣れてきたリナでもそういう戦いはできなくもないが、本当にやれば、死神を使うであろう。目隠しごときでは防げない力だ。
「二人組みのうちの一人はゼルだ。赤目なら、多少のハンデは楽勝だ。どいつもこいつも大げさなんだよ。俺たちで軽くひねってやれ。」
チャッピーがあきれて言う。なるほど、チャッピーの場合は口さえ無事なら魔法で戦える。
だが、闘技場に到着してうわさの二人組みと戦いたいといえば、受付で笑われてしまう。
「化け物ですよ。あれは。たかが参加費5万円しか取れないとわかりきってるんです。それで彼らに莫大なファイトマネーを出すんですから、赤字なんですよ赤字!あんたらみたいな赤目とはちがう・・・赤目???」
二人はすでに、どす黒い赤目で受付の頭上の時計を見ている。目を合わせると、受付が倒れてしまうからにすぎない。
「誰と違うってんだ?俺たち首が疲れたからそろそろ、上向くのをやめたいんだが・・・試合は当然・・・」
チャッピーが、淡々と言うが受付は大慌てで
「出場登録しておきましたっ!控え室はあちらなので時間をおまちくだざ・・・・」
リナがうっかり頭を下ろしてしまった。受付はその場で伸びてしまった。丸太のような腕の筋肉のおじさんだった。今のリナは赤目と死神の中間的な強さの赤目を使う。腹筋が割れてようが、鉄板のような胸板だろうが、リナの前ではどうにもできないのだ。
「さぁ、赤いカラーコンタクトで、ゼルの真似をしたがるアベックが本当に闘技場に立った!黄色眼のリナのナイトは貧弱な魔術師。なんという無謀。お出迎えは、闘技場の番兵、浜崎と松尾のダウンコンビだ。」
全身にワセリンを塗った変態が現れた。しかも二人だ。手に持ったダンベルで殴りつけるのだろうか?
リナもチャッピーもあきれるばかりだ。リナはウィンクをプレゼントした。死神でウインクなので、文字通り突き刺さる。確かに二人のマッチョはめろめろになった。(肉体的に、精神的に倒れた)
予想外である。ダウンコンビは現在唯一ゼルとルナに対抗しうるとされている超人だが、まさかウィンクで倒されるなど、誰も予想しない。片目による、点の攻撃なので、周りには死神どころか、黄色眼系の技であることすら、わからない。
トリックでもなんでも、闘技場史上最大のファイトマネーをがつがつむさぼる二人を排除できるなら、あのルナのライバルであるリナともう一人をぶつけてもいいかもしれないと闘技場は判断した。
「さぁ、次はお待ちかね・・・でもないよ。ゼルとルナのコンビの登場だ。トトはやめとけ。金の無駄だ。でも買って欲しいのがうちらの本音。対抗するのは、ルナのライバルリナだ。リナルナの疾風の快進撃が今度はぶつかりいになった!リナのナイトは杖を使う、ヘナチョコ戦士だ!!」
失礼な実況がはいる。
「うるせーな。燃やしてやろうか?ああ?ラクラクホーン」
チャッピーがボソッとつぶやくと、実況の声が裏返った。
「魔性の魔術、冴え渡る頭脳が離れ業を制するチャッピー!現在の注目のファイターだ!!」
声どころか、言ってることまで裏返っている。この実況、実を言うと、昇り龍の刺青を彫った筋肉で、全身に傷がある。が、背中にだけは一切の傷がない。
"刺青を守るのと、逃げない証拠に背中には一切傷がないのだぁ〜"
リナは嫌みたらしいアナウンスなどどうでもよかった。ルナがあのルナである場合、いくら赤目とその上の死神をもっているとはいえ、激戦は免れない。ゼルも含め、赤目と黄色眼のコンビは苦しい。
こちらは、赤目と死神のコンビだが、後方支援だ。
はたして、花道からは、セミロングヘアの格闘家とロングヘアの美女の剣士だ。
ゼルとルナである。こちらは、ショートヘアのリナと、角刈りのチャッピーである。
先にリナが口を開いた。
「仁商連はどうなったの?こんなところで遊んでる場合?」
これにたいし、ルナは
「ゼルに代表をやらせてるの。私に負けたのだから、当然ね。ヤヘイにも支部を置いて責任者もついて、仁商連はちゃんと機能しているわ。」
黄色眼で言うルナにリナも黄色眼でにらみ返す。
男衆も舌戦をしている。
「おめーか。マウントをボコってくれちゃった赤目野郎ってのはよぉ?」
「そういう君こそ、チボーンの頭脳からマウントの頭脳になってるらしいじゃないか。僕と同じ目でね。」
赤目どうしのにらみ合いである。今回は、赤目4人の戦いということで、スクリーン投影をさらに撮影する方式がとられた。
今、世界最強のタッグ戦のゴングが鳴った。4カ国から出てきた、軍隊を圧殺する超人4人が入り乱れて戦う。頂上決戦である。
ゼルが、リナに赤目で殴りかかる。だが、チャッピーがそれを妨害する。
杖で、ゼルの攻撃をさばく。だが、チャッピーは正確に言えばさばくふりをしている。
作品名:無敵最強絶対不敗伝説 作家名:peacementhol