無敵最強絶対不敗伝説
「インチキ格闘家の正体は、ヤヘイの皇帝ゼル!共和国国王と並んでヤヘイが誇る究極のファイターだ。この男にインチキは無い。仮面をかぶって正体を隠していた!さぁ、ゼルが挑むのは過酷なハンディキャップマッチ10連戦。最初の5戦は、武器の使用を認められているタッグコンビ5チーム。残る5戦はやはり、武器の使用が認められる5人団体5チーム。合計35人とバトルだ!ゼルとわかった今!ゼロの10連勝くじは一気に売り切れる!チケットショップに急げ!!」
ゼロが仮面を取って捨てた時点でほとんどの観客がチケットの売店に詰め掛けていた。ゼル=無敗という約束はハンデも連戦も関係ないのだ。ファイトマネーは常に、配当金の最高金額を上乗せする。ゴングが鳴った。
まず、現れたのは、槍と剣士のコンビ。もともと二人とも棍棒によるスタイルだが、相手がゼルでは、そう甘いことはいえない。これでも勝てる見込みは薄いのだ。
槍で猛烈に突くが、ゼルは見もせずにかわしていく。ハエを手でつかむよりも難しいほどの身のこなしである。剣の男がその隙を突こうとするが、特殊なグローブをはめた手で掴み取られてしまう。
ゼルは剣を殴りつけた。剣はあっさり割れてしまう。先ほどからみもせずによけている槍もつかんでへし折ってしまう。
ガガンと鈍い音が2度続いて聞こえると、すでに二人が倒れてしまっている。
ゴングが鳴るとともに次のチームが殴りこんでくる。ゼルは飛び上がり、照明の逆光の位置を取り、武器など関係なしに次のチームを撃破。
今度は覇気をみなぎらせた二人組みだ。覇気や殺気などの能力は全部で6つある。これらのうち一つあれば、黄色眼に対抗できる。二つあれば黄色眼に勝てる場合がある。4つあれば伝説の赤目に対抗できるという。
5つ以上は使いこなせたものがいない。よってどうなるかはわからないが、これらの能力は同時に使うと足し算ではなく、掛け算のように増大する。
さて、覇気を二人相手にするのは少々大変だ。ゼルは赤目を開いた。二人の動きが止まる。
足払いからすばやくフォール。そのまま3秒たつと、ゴング。
次の二人組みは、現タッグ王者の二人だ。ヌンチャクと槍の組み合わせだ。
ヌンチャクがゼルを釘付けにする。今までの連中とは確かにわけがちがう。ヌンチャクはスピーディーで、素手で受けると、骨折の恐れがある。ゼルの場合はヌンチャクといえば捕まえるもの。
すばやく二本のヌンチャクを捕まえて、奪うと同時に槍をよける。
さて、槍が相手ではヌンチャクは少々厳しい。長さの違いと、ヌンチャクの弱点である、接点が簡単につらぬかれるためだ。
槍の柄の部分を巧みに足でさばき、グッと踏み込んだところにヌンチャクの猛ラッシュ。一瞬で顔面がぼこぼこにはれ上がる。チャンピオンコンビもゼルの前では子供あつかいだ。
次の二人は、ヤヘイ軍総監督の二人だ。実践の力を見せしめるという割には、筋肉だけが頼りの二人である。ゼルは飛び上がり、二人の頭に足をかけてパタンと閉じて、二人の頭をぶつけあってゴング。
次の二人が入ってくると、目の前で手をパチンと叩いた。足払いのあと、片足でフォール。もう一人がフォールをはずそうとするが、拳の先から衝撃波をくり出して近づけない。一人が倒れた後すかさず、
後ろに回り、延髄をピシャリ。これでタッグチームは全滅だ。
団体5人が一斉に襲い掛かる。剣士3人、アーチャー二人。まぁお約束といえばお約束の配列だ。
先ほどのヌンチャクで3人の剣をがしがし裁く。飛んでくる弓も弾き飛ばしていく。
その間に足で一人ずつ、気絶させる。のこったアーチャーはゼルの動きも見えないうちに倒れる。
ゼルは面倒になったので、赤目を開いて入り口をにらみつけた。
会場全体に険悪な空気が渦巻いて、ほどなく、残りのチームが全部棄権したというアナウンスが入った。
ゼルの6連勝にして、4不戦勝。結果10連勝を達成したことになる。
賞金を持ち帰り、家で寝ていたが、目が覚めると、ポストに新聞が入っている。
「マウント、つかれきったヤヘイに鉄槌宣言。」
ヤヘイは、ゼルにとっては家である。家を荒らすやつは容赦しない。
ヤヘイ側の軍に従軍したまま年が明けた。
果たしてマウントは攻撃をしてきた。だが、ゼルはちぎっては投げ、銃弾をつかんでは投げ返す暴れぶり。数で圧倒するマウントに無類の強さを見せ付けて撃退。
味方にマッスルポージングを披露して、闘技場にもどった。
一人の剣士が、ゼルに勝るとも劣らない勢いで勝利を重ねているという。
ゼルは、その剣士と戦ってみたくなった。
赤い目をした少女剣士。ルナというらしい。長い髪が、かわいらしいが、剣筋は相当鋭い。
赤目を使っていれば当然であろう。観客席からふわりと闘技場に着地したゼルは、ルナに言う。
「一つ手合わせ願いたい。ボクは格闘がメインだから、このままで大丈夫。さぁ、どこからでもどうぞ。」
ゼルは滅多に見せないが、構えを取った。アナウンスが響く。
「ゼルが身構えています!!乱入したゼルが身構えたのは、国王との試合以来!やはりこの少女は只者ではないっ!!!」
闘技場側は、このルナという少女の力で闘技場のバランスが保てると考えた。
赤目同士の対決なので、中継はスクリーンによる撮影になる。赤目は直視すると、気を失う可能性があるためだ。カメラマンはいない。観客席にそびえ立つ、無人カメラが二人をとらえていく・・・。
ルナは様子を見る感じで、スッと剣を振りおろすが、気づけば、ゼルは30メートル右側に、ルナは20メートル離れた場所から、ゼルがもといた位置にいる。
1秒を数えない間になにがおきたのか?
まず、ルナが剣を振ると、大きな衝撃波が3個も現れた。
ゼルは臆することなく、それらを裁いた。
ルナはかけよって、ゼルに二刀流を繰り出すが、ゼルはすっと右側によけて、刃物を通さぬ拳で猛攻。
ルナはそれを裁きつつ、時折足技で、ゼルに報いるが、ゼルはそれらを弾いていく。ゼルにすれば、捕まえる余裕などまるでない、信じられない速さであるが、自分の基準に近いもので、落ち着いて向き合えばかわせなくもない。
ゼルは、気合を込めた拳で、ルナの剣もろともルナを攻撃するが、ルナはそれを見切り、よけて切りつける。ゼルは、距離を取るが、力加減を間違えて、30メートルほど飛んでしまった。
一部の黄色眼の観客が一部始終を見切れたが、自分には到底真似できない。
それは、フェイシングの試合を初心者が見たところで何が起きたかわからぬうちに、終わってしまう感覚に近い。黄色眼で見てもこのレベルである。赤目同士の激突とは、こういうことなのだ。
「今の私に敵はないと思っていたのに、あなたのような人がいたのね。」
ルナが感心したように言うが、表情は余裕にあふれている。対するゼルは
「虚勢を張っても無駄さ。僕を相手に本当はけっこう頑張ってるんじゃないかい?」
少なくともゼルはもう本気を出していた。
「あなたがもし、これで本気ならば、私の勝ちは見えているわ。私はあのリナより2段も上にいったのよ。」
ルナの表情が真剣になり、カッと目を見開くと、黒い眼球に赤い瞳があらわれた。死神である。
作品名:無敵最強絶対不敗伝説 作家名:peacementhol