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無敵最強絶対不敗伝説

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"国王に謁見したチャッピーである。陛下のお達しにより、チボーンにおける私の権力の元、チボーンからの侵攻は無い。逆にチボーンに先んじて、ヤヘイの戦力を吸収せよ。わが国の武装とヤヘイの身体能力の合併は、天下統一をも現実に引き寄せ、問題の海賊を退治する力ともなる。平和を勝ち取る勇者達よ。マウント国王の名において、正義の力でヤヘイを平定せよ。"
少将が聞き取ったセリフである。どうにも納得が行かないが、本国で何かしらの動きがあったらしい。
だが、国王の声も聞こえる。
「少将、私だ。優秀な魔術師がわが国の参謀として賛同してくれた。ついては、先の指示は私の意志である。早急にヤヘイを叩け。」

これではしたがわざるを得ない。マウント軍はついにヤヘイを襲撃することになったが、ヤヘイには恐ろしい男がいた。先のスカイヤ戦線では、昼寝していて乗り遅れたという、男である。
闘技場に入っても、優勝賞金を押し付けられて門前払いを食らう。時々勘弁してくださいと何ももらえずに追い返される場合もある。
その男の名はゼル。唯一チャッピーの誤算を引き起こした男である。


マウント軍が得意の長蛇陣で攻めかかると、ゼルは一人仁王立ちになり、ストレートを打ちはなった。
覇気と赤目を組み合わせるという離れ業で、繰り出された一撃は、将棋倒しのようにマウント軍をなぎ払った。かかと落としのようなフォームを取れば確かにかかと落としなのだろう。地面が陥没する。
鋭い真空の刃が現れてまたしてもマウント軍をなぎ払っていく。
マウント軍は再び、たった一人の戦士による壊滅を果たすことになった。
ゼルは最後に地面に拳を打ち込むと、半径数キロメートルが地割れを引き起こしていく。
マウント軍は落とし穴にはまったように、身動きが取れなくなった。

 マウント国王がこの敗戦の結果を聞くより早くチャッピーは海賊討伐に向かった。

天才と呼ばれるマウント国王に、落落ホーンを伝授したらすんなり覚えてしまった。
チャッピーも圧倒的な軍事力と、弱りきった格闘集団では、勝負が見えていると楽観していたが、
国王からメッセージが来た。
「チャッピー、どういうことだ。ヤヘイに赤目使いが現れて敗北したというではないか。日付からして、貴様がやったわけではないのはわかるが、どう責任を取るつもりだ。」
チャッピーは足を止める。始めてみせるあせりの表情である。
「チャッピー元帥、いかがされましたか?」
チャッピーは考え込んだままだが、
「しばらく考えさせてもらう。マウントがたった今負けたという。おまえ達は今すぐ本国を守りに行け。」


いつものチンピラ口調じゃないチャッピーは不気味だが、海賊討伐の3万人が急いで本国を固めにいった。もう一人の赤目とはなにものか?自分も赤目だが、ヤヘイにいる赤目なら、おそらく格闘タイプ。
おそらく、魔法を使う余裕が無い。タイマンだけは避けるべきだ。そうなると、リナにはただ会うのではなく、コンビを組んでもらう必要がある。黄色眼と赤目のコンビなら、アシストが赤目でも十分対抗できる。
「落落ホーン!」
チャッピーは国王にメッセージを送った。
「ヤヘイの赤目の戦士を倒します。リナを倒せないまでも、おとなしくするよう、説得するつもりでしたが、協力を仰ぐ形にします。赤目を使う私と、黄色眼にしてオーシャンの英雄リナの協力があれば、その赤目の戦士は撃退できます。なお、私が借りた3万人は、早急に本国に帰還するよう命じたので、この3万人で凌いでください。」

受信した国王は一瞬戸惑った。落ち着いたトーンで、理路整然とした話し方はチンピラなチャッピーのそれとは違う。だが、言ってることはチャッピーにしか言えないことだ。リナを倒すのではなく、話し合うという形にして兵士を本国に全部返すあたり、思い切っている。
マウント国王は今しばらく、チャッピーを信用してもいい気分になっていた。
チャッピーは計画もなにも無い。そのゼルという男に台無しにされたのだ。マウントを海賊討伐の英雄に仕立て上げて、弱ったヤヘイも合併。平和協定のスカイヤをさらに外交交渉で抱き込んで、大国にし、チボーン共和国を降伏に追い込む、マウントをベースにした世界統合計画である。
世界統合の後は、全世界の国力でリナを叩けばよかった。
リナは海賊という形で、国の間違いを叩いている。
ルナは、巨大組織を動かして、住民を守ろうとしている。チャッピーはチャッピーで世界を無理やりまとめようとしていた。後の四天王の一人、チャッピーもまた、戦争だらけの世界をナントカしようと動いていたのだ。

遠くに、メルヘンチックな巨大軍艦を見つけた。赤目で見ると果たして、船首にリナがいる。険しい表情の黄色眼だ。敵意の無い赤目すらも見えれば怖いようだ。
またしても、落落ホーンの出番である。リナに話し合いをさせてもらうように要請したのだ。
 さて、久々のリナである。23歳にして始めて黄色眼でも押し負けてしまう恐ろしいやつに出会ってしまった。かつて一度だけ勝てなかった勝負を思い出す。今逆らえば、船もろとも自分も何もできないままやられるだろう。今は従うしかない。チャッピーが空を軽やかに飛んでくる。
「よう、黄色眼のねーちゃん。赤いのは初めてかい?」
黄色眼は使いすぎると赤みがかってくる。力加減で対抗できるかもしれない。リナは黄色眼に様々な力を込めてみた。果たしてオレンジ色の目になった。
「おー、もうちょっともうちょっと。こりゃ、近々、赤目コンビになれそうだぜ。」
眉毛をぴくぴくさせながら、リナは言う。
「コンビ・・・?どういうこと・・・っ!!」
「あーあー力じゃねぇよ。目に覇気を込めるんだ。目と覇気じゃなくて、目に覇気を込める。力抜けよ。やりにくいぜ?コンビってのはまぁあれだ、おめーも思うところがあって、海賊やってんだろ?」
そういう間にもリナの目はどんどん赤くなっていく。カッと赤い光が船中を照らす。乗組員がばたばたと倒れた。
「思うところというと?」
赤い目でリラックスしたリナが言う。
「うへぇ・・・俺のときより派手。みんなのびてらぁ・・・。おめーの海賊がやりかたってのはよ、いけすかねぇ国のいけすかねぇ連中が目下の狙いだ。軍隊とか戦争の原因になるものばかり襲って、それでいて、裏では、ルナと組んで一般市民を守っている。ちがうか?」
リナは驚きの余りまた目に力が入ってしまった。一瞬黒い目が見え隠れしてもとの赤目にもどった。
「いてぇっ!赤目開いて早々に死神開花かよ。やめてくれや。交渉にならなくなっちまうぜ。まぁ図星のようだな。」
リナは上を向いて、ひたすらさっきのをもう一度やろうとしている。
「ついさっきまで俺のほうが圧倒してたのに、一瞬で俺が完璧におべっかじゃねぇか・・・。こいつ・・・ヘタしたら・・・」
また、さっきの衝撃がチャッピーを襲った。

単発ではない、断続的にだ。おぞましい恐怖。赤目で対抗してすら、全身をバラバラにされる寸前の痛みの一瞬前の感覚が全身を支配する。
まぶたが重い。目をこじ開けてリナの目を見ると、眼球が漆黒で、赤い瞳がこちらを見ている。
程なくリナは倒れてしまう。
作品名:無敵最強絶対不敗伝説 作家名:peacementhol