神王ラーリスと魔王クラーゼスのRP
「お初にお目にかかります。国王様。私はフォーマル城の王女、クリシアと言います」
クリシアの言葉に国王は眉をひそめ、
「はて?・・・確かフォーマル城は20年程前に陥落したと覚えがあるが?」
国王は大臣とおぼしき人物に尋ねる。
「はい、国王様。魔法研究が盛んな国でしたが、他の国同様。滅んだはずです」
「はい、そのことでご説明があります・・・」
クリシアは自分たちが異世界から戻ってきたいきさつを説明した。
「なるほど、世界を超えて脱出したわけだな、お主たちは」
国王が考え込む。
「ふむ、理屈としてはあるが、まだお主たちを信用できぬな」
国王は一呼吸置いて、
「まず第一に、お主たちがフォーマル城の生き残りだという証拠がない。単に生き残り、儂に取り入ろうとしているのかもしれぬ」
「・・・・・」
あれから20年も経っていることもあり、その証拠もないクリシアは黙って聞いている。
「そして第二に、あの黒雲達に対抗できる術があるとの事が信じられぬ。20年も戦い続け、結局対抗する術が見いだせなかった我らは、もうほとんど生き残りがおらぬ。確たる証拠がない以上。お主たちに協力することはできぬ」
「では、実際に黒雲を退治すればよろしいですね?」
ラーリスが国王に進言する。
「ふむ、そうだ。では、こうしよう」
国王が続ける。
「最近まで無事だった街があったのだ。ディスビーズと言う所だが、結界を何重にも張ることができたのだが、最近そこも落とされたらしい。そこでお前達にディスビーズへおもむき、黒雲達の排除。可能なら生存者の救助をしてもらいたい。それが達成されたら、その地を拠点として黒雲討伐に協力しよう」
「わかりました。その使命、果たして見せます」
ラーリスは国王に即答した。
「おい、いいのか?ラーリス。そんなに簡単に引き受けても」
「大丈夫ですよ。カスクさんには神王と魔王がついているんですから」
カスクの不安も全然問題なしという感じである。
「では、兵士を3人ほど付ける。報告はその者達にしてもらう」
国王がそう言うと兵士が3人カスク達の側に来る。
「では、あなたたちにも指輪を用意しますね」
ラーリスがそう言うと手を差し出し上を向ける。
ジジッ
「?」
ラーリスの手の上が歪むが、指輪が出てこない。
「おかしいですね、作る分には問題ないはずですが・・・」
ラーリスが再度行ってみるが、結果は同じだった。
「ラーリス様。もしや、場所が影響しているのではありませんか?」
ケストエルがラーリスに尋ねる。
「いえ、そんなことはありませんが・・・」
「大気が変化中」
クリエンテがつぶやく。
「大気ですか?組成は変わっていない・・!」
ラーリスがはっと気付く。
「0. 000001%の大気中組成がゆっくりと変化中」
クリエンテが続ける。
「クリエンテが言うならそうだろ。こいつは目が見えない分、空間の分析が出来るからな」
クラーゼスが言うようにクリエンテはずっと目を閉じた状態である。
「そうですか。・・・想像してたより厄介な世界ですね」
「なあ、クリエンテ。なにが厄介なんだ?」
クリエンテはアクビアに答える。
「大気組成が変化する。物理、召喚系の魔法の使用ガが困難になる」
「なんだその程度か。なら別に心配することないじゃない」
クリエンテは、はあ、とため息をつき、
「最悪、私達の力が全て使えなくなる」
「えーーーーーーーーっ?」
アクビアの声がこだまする。
クリエンテは両指で耳を塞いでいる。
「ちょっと!大変じゃないの!」
アクビアはクリエンテを揺さぶる。
「成程、てことは、我らは魔法にしろ、神法にしろ、常に新しいものを用意しないといけないってことか」
クラーゼスの言葉にラーリスが頷く。
「はい、現存の力は長続きしないと考えた方がいいでしょう。しかし誰がこのような高度な事象を引き起こしているんでしょう・・・」
「・・・ラーリス。とにかく、俺達の今の使命はディスビーズを救うことだろ。原因はその後に考えればいいさ」
カスクがラーリスに先に進もうと言う。
「そうですね。とりあえずしっかりした拠点を設けてからでもいいでしょう」
ラーリスはそう言うと皆と供に城塞の出口へと向かった。
「あれか・・・」
カスクは前方に見える街を見下ろす。
ディスビーズの街は城壁に囲まれた要塞になっていて、谷に入った所にあるので、守りには適した場所だった。
ただし、今や城壁は半分が崩壊し、街も至る所で崩壊していた。
想像と違ったのは、巨大な魔法陣が街の奥に展開されているということだった。
「ラーリス様。かなり巨大な結界の様ですね。あれが在るということは」
「ええ、生存者が籠城しているはずです。急ぎましょう」
ラーリスは蛍光城に来た時と同様に街の中心へ飛んで降りる。
兵士たちは説明している時間が惜しいので、ケストエルに一時的に時間を停止させ、ハーガルスが担いで降りて行った。
カスク達が街の中心へ降りる。
「?」
カスクが周りを見渡すが、黒雲のモンスターが見当たらない。
「何もいないっていうのはどういうことだ?」
「カスクさん。恐らくあの魔法結界があるからでしょう。黒雲はあれを攻略できなかったから撤退したというところですか」
ラーリスは答えると、結界のある方へ歩いて行った。
目の前に展開されている結界は50メートルを超えるかというほど巨大なものだった。
近くに向かうと結界を発生している装置のようなものが結界の境に置いてある。
「大きいな。俺もこれだけの大きさの結界は初めて見る」
ハーガルスは結界の側に来て言う。
結界の奥には城があった。その部分だけは無傷で残っている。
「誰か見えませんかーーー」
ラーリスが大声で呼びかける。
「324人の人間を確認」
クリエンテが呟く。
しばらくすると、10人ほどの人がこちらに近ずいて来た。
先頭に大きな筒のようなものを肩に背負った男が来る。
「お前達。何者だ?」
ラーリスは先頭に出て、
「私達は蛍光城から救援に来た者です。最近、黒雲に攻め込まれたということでしたが、彼等は撤退したのですか?」
「救援?・・・あれだけ静観を決めていた蛍光城から救援だと?」
先頭の男はカスク達を見渡す。
「救援がたった10人足らずだと?・・・どういうつもりだ」
「ええ、私達はとある事情から、この街に巣食う黒雲を排除する仕事を蛍光城の王から依頼されたのです。人数は少ないですが、戦力としては問題ありません」
「黒雲を排除だと?・・・それで、排除できたのか?」
ラーリスは首を振ると、
「いえ、私達は先程到着したのですが、黒雲が全く見当たらなかったんです。もうこの街を去ったのではないですか?」
「・・・俺がこの結界を張ってからまだ3日しか経っていない。昨日まで、結界を突破しようとしてたみたいだがな」
「お前がこの結界を作ったのか、ならもう大丈夫だから、ひとまず蛍光城にでも避難しないか?」
カスクが男に提案する。
「・・・・いや、まだ油断できない。ようやく、あいつらに対抗できそうな武器ができ始めたところなんだ。装備が整うまでは出ていかない」
作品名:神王ラーリスと魔王クラーゼスのRP 作家名:enuku