神王ラーリスと魔王クラーゼスのRP
「おう、これから異次元旅行だ。付いてこい」
そう言うと、クラーゼスも光に入っていく。
2つの影もそれに続いた。
場内の人間は何が何だか分からず混乱していた。
「・・・そうか、ようやく会えたか、クリシアよ・・・」
王様は静かにつぶやいた。
「う・・・」
まぶしい光の中。カスクはようやく光が収まるのが分かる。
正確には手をひかれて前に進んだ状態になる。
ようやくはっきり見えるとクリシア王女が手を引いているのが分かる。
周りの風景も変わっていた。
城には違いないが、ほとんどボロボロで壁も半分以上崩れている。
そこから薄い光が差し込んでいる。
「月?・・・」
カスクは前に進んでそれを見た。
それは巨大な光る城だった。大きさから要塞とも言うべき程の大きさである。それが地上500m程をゆっくりと飛んでいた。
「な、なんだあれ・・・・?」
カスクが呆然としていると、クリシア王女が隣に来て、
「蛍光城・・・まだ、大丈夫だったんですね」
「蛍光城?」
「はい、そうですよ、兄様」
「え、兄様って・・・」
衝撃のある言葉にゆっくりとクリシアの方を向く。
クリシアが首を傾げると、
「兄様ひょっとして記憶が戻っていません?」
「え?記憶って言われても、王女様に会うのは今日が初めてですが・・・」
「・・・・・」
クリシアは腕を組んで考えると、
「もしかしたら、記録再生の魔法を掛けられたのは私の方だけかもしれません。あの時にそんな余裕がなかったのかも」
ザシンッ
広間の扉の方から何かの音がした。
2人が行ってみると、そこには異形の黒い影があった。
3m程の大きさで、炎が燃えているかのような黒い人影の様なもので、手に長い爪がある。
「なんだ?こいつら・・・・?」
数は20。ゆっくりとこちらに近づいてくる。
スタタタッ
後ろから3つの音がした。
「カスクさん。無事ですか?」
ラーリス達3人が光の中から現れる。
「!」
ラーリスが状況に気づくと、3人は構えを取る。
「カスクさん、これは?」
「わからない。ここにいたら現れたんだ」
「んー?何だこいつらは?」
ラーリスが振り向くと、3人が立っていた。
一人は2mの長身の男。肌は褐色ではなく黒そのもの、長い銀髪が揺れ、ハーガルスに少し似た鎧を着ている。何より目が3つあった。
「クラーゼス。あなたも来たのですね」
「フン、神族だけに運命は渡せぬわ」
クラーゼスは辺りを一望すると、
「邪魔な客が多いな。アクビア、そこの邪魔な影どもを片付けろ」
「はっ」
一人の女悪魔が動く。丸い角、赤い長髪。黒く尖った翼、体にラインがわかりやすい鎧。一般的とも言うべき悪魔の格好をしていた。
もう一方の悪魔は両目を閉じており、銀色の丸い感じのショート髪。黒のマントに白いコートを着ていた。
アクビアが影に向かっていくと、相手は迎撃しようとその爪を振り下ろす。
アクビアはそれを受け止め、右拳で相手を貫く。
はずだった。
ドゴオッ
アクビアはその一撃を支えきれず、床にクレーターを作る。
「!!」
それを見たクラーゼスとラーリスは驚愕する。
「なに?アクビアを一撃だと!」
それを見てクラーゼスは構える。
「どうやら、そちらのお嬢さんは異次元世界に来たことがないようですね。ケストエル」
ラーリスが言うとケストエルは杖を振るう。
アクビアが現れた位置に戻った。
「!クラーゼス様?」
「余計な事を・・・アクビア。こいつらはお前を一撃で倒せるぞ」
「え?」
時間を戻されたアクビアは戸惑う。
「異世界に来た時点で注意することの一つ」
そう言うとラーリスは影に突っ込んでいく。
ドゴオッ
またしても床に大穴が開く。
しかし、ラーリスは相手の爪の上にいた。
ドドドドドドドドドドッ
ラーリスは宙返りをして影の前に立つ。
「自分の世界の常識は通用しません」
10発ほど打撃を受けた影は、仰向けの状態からゆっくりと起き上がる。
「我は教育などせんからな」
クラーゼスはそう言うと、いつの間にか出した大剣で、影を横薙ぎしていた。
ドガンッ
影は壁に激突するが、無傷のまま。再び襲いかかってくる。
スピードがそれほどでないが、神王と魔王はかつてない苦戦となった。
「な、なんで神様の攻撃が通用しないんだ?」
カスクはとても信じられなかった。天と地を砕くほどの力が通用しなかった。
「・・・あれが、彼らの恐ろしい所です。通常考えられる攻撃は全く通用しません。たとえ異世界の神であったとしても・・・」
クリシアは淡々と言う。
「でも兄様。私達は覚醒できました。長い年月を費やした成果がやっと実るのです」
クリシアはカスクの手を取って言う。
「覚醒?」
「そうです、彼らに対抗しうる力。さあ、兄様。剣を構えてください」
「お、おう」
カスクは剣を正眼に構える。
「目を閉じて。右目に力があると思って集中してください」
カスクはクリシアに言われるままにした。
「目を開けてください」
カスクが目を開くと、最初に出会った時のように、目の文様が光る。
「!」
カスクは眩しくないが、目が光っているのが分かる。
「今です!兄様!」
カスクはクリシアの声と共に切り込む。
ザシュッ
影はあっけなく切れた。
「カスクさん?」
ラーリスはそれを見ると、カスクの方に掌を向ける。
カスクが文字の書かれた球体に包まれると一瞬でそれは消える。
「なるほど、こうですか!」
ラーリスが両手を皆の方に向けると、前方に巨大な魔法陣が画かれる。
そこから出た光を全員に宿らせる。
「よけいな事を!」
クラーゼスはそう言いながら、影に拳を打ち込む。
パン
あっけなく影は弾け飛んだ。
あとは数秒で全ての影を消した。
「さて、どういうことか説明してもらえますか?」
ラーリスはクリシアに質問する。
クリシアはラーリス達を見てから、
「ええ、私達に巻き込まれた以上、説明は必要ですね」
クリシアはため息をつきながら話を続ける。
「私達兄妹がまだ、赤ん坊だった頃。この世界に侵略者が現れました。
その名は[黒雲(ブラッククラウド)]。全く攻撃が通用しない所からこの名がつきました。
彼らの突然の出現とその能力のせいでほとんどの国々が滅亡していきました。
私達の国も例外でなく、侵略にあいましたが、その時点で黒雲に対抗できる能力。先程兄が発動した力を得ることができました。ただ、その時点で能力を使える人間は数人しかなく、王族ということで能力を託され、それまでの記録を私に預け、異次元移動を行ったということです。・・・戦いの結果は皆さんが今見ている現状となりました」
「なるほど、それでカスクさんを見つけた時点で故郷へと戻ろうとしたんですね」
クリシアが頷く。
「さて、この問題を解決するには侵略に会う前に時間を戻して、その上で侵略者とやらを捕まえるのがてっとり早いんですが・・・・」
ラーリスの言葉にケストエルが首を振る。
「ラーリス様。さすがに私でも世界の時間を20年も戻すには力不足です。それに先程から感じていましたが、どうやら世界構成が違うためか、力が減っているんです」
「何?力が減っているって、どういうことだ?」
カスクが質問する。
作品名:神王ラーリスと魔王クラーゼスのRP 作家名:enuku