神王ラーリスと魔王クラーゼスのRP
「システラム?・・あーさっきの神様の話に出てきたのか。その力かどうか分からないけど、黒雲の軍団には効果絶大だったぜ」
そう言うと、クリズは弾丸の一つを分解して外枠を外す。
中には以前ラーリスが作った結界装置が入っていた。
「前にラーリスさんに作ってもらったのを量産したんだ。この大砲で打ち出せばその場所に行かなくても結界が張れる。改良して結界内部も効果があるようにしてある」
「・・凄いですね、あの短期間でこれだけの数を作るなんて」
ラーリスが感心すると、レイミールが付け加える。
「当り前よ。この子は名工ギル・スレインの孫なんだから」
「待て、ギル・スレインだと?」
クラーゼスがレイミールに問いただす。
「ん?異世界なのにギルの事・・・ってああそうか。あたしたちも異世界くらい旅してるもんね。ギルの名が売れてたっておかしくないか」
「ということは・・おい、クリズとやら。[重子剣]は作れるか?」
「げっ・・どっから聞いたんだその話。・・あれは禁断の剣で、じいちゃんから制作禁止になってるんだよ。そもそも材料のギルスレイン鉱とかオルデネィウスとか、手に入らない物が多すぎてだな。作れるわけ・・」
そう言いかけると、いつの間にかクリエンテがクリズの前に跪いて、色々な物が乗った盆を出していた。
クリズはそれを凝視する。
「フン、すでに材料はそろっている。制作方法を知っているのならば、奴らの元に着く前に仕上げてもらおう。今は緊急時だからな」
「・・しょーがねえな。分かったよ、作ればいいんだろ」
「よし、この世界での事が終わったら、お前を我専属の魔界鍛冶職人にしてやろうか?」
「いや、それは勘弁してくれ・・」
そういうやり取りの中、マティカは結界装置を手にとって調べていた。
「良いわね。これを増幅させれば・・」
さらに数日した後、カスク達はグイテンドの近くまで来ていた。
レイズウェルの外れの城同様、黒い球体が街を覆っていた。
距離はやっと球体が見える程度の所まで来ている。
「やはり、同じ様ですね・・」
ラーリスが言うように黒雲の軍団が所狭しとひしめき合っている。
「それじゃ、クリズ。例の弾頭でお願いするわ」
「おう、まかせろ!」
マティカの言葉で、クリズは大砲と共に上空に上がっていく。
蛍光城から100メートル程上がった所で静止する。
「よし、・・・距離8000てとこか・・」
クリズは大砲に設置された射撃台で構え、照準を合わせる。
「ここだっ!」
クリズは引き金を引く。
フィィィィ・・・
大砲の後ろ半分に5個の光の輪が現れ、回転を始める。
ドッ
次の瞬間、光の弾が砲の先端から飛ぶ。
光弾は黒球に当たる寸前で4つに分かれ、街の四方に飛んでいく。
カッ
光が発する。
カスクが次に目を開けた時には、巨大な光の柱が出来ていた。
「凄いな・・俺の作ったのより強力になってる・・」
クリズが驚嘆していると、街の方で動きが見える。
蛍光城はグイテンドの1キロ近くまで来ていた。
ガゴ・・・・ン
街の中心にあたる広場の地面が左右に分かれていく。
グィィィィ・・・・
地面が開ききった所から何か巨大な物がせり上がってくる。
「あれは・・・人型兵器か?・・」
クリズが言うように、それは巨大な人間の形をした機械だった。
全高100メートルはある。所々、装甲が剥き出しで歯車の様なものが見える。
「ようやくお出ましだな、お前ら!」
声は巨人の肩から聞こえた。
「ヴァイオ!あんな所に」
マティカが叫び、蛍光城の前に出る。
ヴァイオが巨人の肩に乗ったまま叫ぶ。
「街の地下に面白いものがあってな!こいつに前座をやってもらうぜ!」
バンッ
ヴァイオが巨人の頭を叩くと、巨人の額が赤く光り始める。
フィ
「!」
カッ
額に光が集まったと思うと、即座にその光を蛍光城めがけて放つ。
光はマティカのいる所で止まっていた。マティカは右手を突き出し。その前には青色に輝くゼロの数字があった。
「ふっ・・お前がいる時点で楽しめるのは確定してるからな!」
ヴァイオはそう言うと巨人に何か呟く。
「!・・まずい!避けてください!」
マティカは後ろを向いて叫ぶ!
ドッ
赤い光はマティカを貫通し、蛍光城に迫る。
蛍光城はすでに回避を始めていたが、都市の巨大さ故に回避が間に合わない。
ガウンッ・・・・
光は蛍光城の半分を削り取る。
蛍光城は光を失い、落下を始める。
ケストエルが杖を振り唱える。
蛍光城全体に時計型の魔法陣が組み込まれ、落下速度が落ちる。
ラーリスは巨人に印を結んで両手を突き出す。
「極大破(マクシィームグロウ)!」
ズッ
ラーリスの両手から巨人を覆い尽くすほどの巨大な光線が打ち出される。
「ほう・・」
巨人もろともヴァイオも光に飲み込まれる。
「!」
ラーリスは光線が貫通していない事に気付く。
「あーそうだ、こいつには魔法、神法の類は効かねえからな」
ヴァイオは勝ち誇った顔で言う。
光線が止む。
「貴様の素性が分かった以上、簡単にいくとは考えていないのでな!」
ヴァイオはクラーゼスが巨人の胸部辺りに居るのが見えた。
クラーゼスは白い長剣を巨人に突き付けていた。
「さて、重子剣の威力。見せてもらおう!」
クラーゼスはそのまま剣を右に払う。
ズッ
巨人の傷口から白い光が辺りを覆い尽くす。
ドンッ
次の瞬間に衝撃波と熱風が辺り一帯に拡散する。
衝撃波と熱風が収まった。
「フン、噂通り、中々のものだな重子剣は」
クラーゼスが剣を構えながら言う。
巨人は足だけが残っており、その足も半分が溶けている。
「・・爺ちゃんが作らせない訳だぜ。人間の扱う代物じゃねえ・・」
クリズは大砲を盾にして凌いだが、大砲も半壊していた。
「刀身からの核爆発エネルギー」
クリエンテが呟く。
「ち・・せっかく面白そうなおもちゃがあったと思ったのによ!」
ヴァイオが舌打ちして、クラーゼスの方を向く。
「いーぜ、そこまで俺と遊んでみたいのなら・・ついてきな」
ヴァイオは地面に降りて、街の奥へと進む。
街の方も衝撃波の影響で崩れていた。
街の奥には城があった。ヴァイオはそこに入っていく。
ついてきたのはクリズ、レイミールを除いたメンバーだった。
結界装置の効果により、辺りに黒雲の姿は無かった。
城に入ってからは異様だった。
支柱が支えるはずの形状をしておらず。曲がりくねっている。針程度の細さになっているものもあった。
床も、赤い絨毯のはずが銀に輝いていたりする。
「どうなってんだ・・?」
「エラートの影響よ」
カスクにマティカが答える。
「あいつならこの程度。常識の範囲よ」
しばらくすると、直径500メートルはあろうかの広間に出た。
「ようこそ、元凶の間へ」
ヴァイオは執事の礼の真似をする。
その隣では、エラートがいた。
エラートはうずくまっていた。その黒い文字が全身に蠢いている。
「・・何か・・キタ・・」
エラートが呟き、カスク達の方を見る。
「さて、エラート。とうとうここまでやって来たもんだが、お前はどうする?」
作品名:神王ラーリスと魔王クラーゼスのRP 作家名:enuku