神王ラーリスと魔王クラーゼスのRP
クリエンテは無言で立体世界地図を映し出す。
ラーリスはレイズウェルの街を指さして、
「これが、私達のいる街です。そしてこの山の中腹」
ラーリスは近くの黒い球体を指さす。
「黒雲の原因と思われる場所です。私達はここを調べるために来ました」
「・・・確かに、この場所には城があったはずだね・・」
「奴らの根城ということか・・」
ハーガルスがそう言うと、
「まだ決まった訳ではありませんが、明日、ここに向かいましょう」
全員が頷く。
「じゃあ、あたしも連れてってくれないかね?」
「レイミールさんもですか?」
「ああ、この街の心配もなくなったことだし、このあたりならあたしも詳しいからね」
翌日、カスク達は山の城に向かって進んだ。
「これは・・・映像で見たとおりだねえ・・・」
蛍光城の先端、城門前の桟橋部分にカスク達はいた。
前方には巨大な黒い塊。直径2キロはある。
城は完全に覆われ、見ることができなかった。
無論、その周りには黒雲の軍団でいっぱいになっている。
「これは・・・足場を確保するだけでも大変そうだな・・・」
カスクが下を見て言うと、レイミールが前に出る。
「じゃ、あたしが場所を作ろうかね」
そう言うとレイミールは詠唱を始める。
レイミールの前に12個の光が生まれる。
「極大重奏破(マクシィームグラスター)!」
ズッ
12個の光は膨れ上がると、光の巨柱となって地に降り注ぐ!
地面に炸裂したそれは、光の衝撃波となってあたりを吹き飛ばす。
衝撃波が止むと、黒い球体以外の場所が無くなっていた。
「人間でここまでの威力を出すとは、レイミールさん。かなり修行を積まれましたね」
「いや、魔王クラスに比べればまだまだ弱い方だよ」
ラーリスはクラーゼスの方を向くと、
「この程度なら小手調べといった程だろう」
「え?あんたも魔王と戦闘経験でもあるのかい?」
「いいや、そのくらいだろうと予想したまでだ」
「・・・そうかい、とにかく雑魚どもは何とかしたから、乗り込むよ」
レイミールはそういうと、一番に降りていく。
「なんか、強引な人だな・・」
カスクはそうつぶやいた。
球体の目の前まで来た。
近くまで来ると、球体は真っ黒で埋め付けられているのではなく、黒い文字で覆われていた。
「魔法文字結界・・」
クリエンテがそうつぶやく。
「まあ、この位なら問題なく解除できるでしょう」
ラーリスがそう言って結界に触れる。
ピシッ
「!」
ラーリスが飛び退いて離れる。
「どうしました?ラーリス様」
ケストエルがラーリスのもとに行く。
ラーリスは手にはめた指輪を見せる。
「これは・・この指輪では結界に力負けするということですか?」
「ええ、これは今までとはレベルが違うということでしょうね」
ラーリスはカスクの方を向き、
「カスクさん。この結界をあの力で壊してもらえますか」
「え?・・その指輪の効力が無くなった訳ではないんだろ?」
「はい、指輪の機能は問題ありませんが、モンスターを倒す時とは訳が違うようです。簡単に言うと、レベル10の結界にレベル1のアイテムでは対抗できないことと同じです」
「・・そうか、わかった」
カスクは前に出て、剣を構える。
眼を閉じ、感覚を思い出し、目を開ける。
「な・・・」
カスクが見たのはステータスソードから光が立ち昇っていた光景だった。
剣は真中で左右に分かれ、その間から光が出ている。その高さはちょうど結界の大きさと同じになっていた。
「・・カスクさん!そのまま振り下ろしてください!」
「!、あ、ああ!」
ラーリスに促されカスクは剣を振り下ろす。
キンッ
金属音と共に結界が消える。
カスクの剣も光が収まっていた。
「・・・どうやら、カスクさんとクリシアさんに宿った力はかなりのものの様ですね」
カスクはまだ剣を見つめていた。
結界が消えた後、城そのものは原型のままだった。
「行きましょう」
ラーリスがそう言うと、カスク達は城に入って行った。
「黒雲の気配は今のところ無いな・・」
先頭を歩くハーガルスはそう言いながら前の気配をうかがいながら進む。
10分程進んだが、未だ黒雲と遭遇していない。
「その代り、城の中身はありませんが・・」
ケストエルがそう言うと、カスクは周りを見る。
「本当だな。イスやテーブルも無ければ、明かりを掛ける所もない」
「建物だけが残っているんですね・・」
クリシアも周りを見ながら言う。
「そろそろ奥だ。謁見の間になるだろう」
ハーガルスがそう言う間に大きな扉の前に来る。
ハーガルスが扉に耳を当て中の様子をうかがう。
「内部には2ヶ所不明な部分がある」
クリエンテがつぶやく。
「・・我らの常識を超えた者であれば様子見など意味がなかろう」
クラーゼスはそう言って扉にノックする。
ガッ
扉は弾け飛び、部屋の中へ飛んでいく。
バシャン
扉が壁に激突する音の予想とは違い、水がこぼれた音がする。
カスク達は部屋の中へと入っていく。
部屋の奥。柱の一つに男が立っていた。
黒と虹色の服。短い黒髪の男が柱にもたれかかっていた。
そしてもう一つ。
王座があったであろう場所に、異様なものがあった。
人がうずくまっているのだが、その体全体には黒い文字がびっしりと書かれ、それが蠢いていた。水の流れの様に。
柱にもたれかかっていた男は黒いモノの所に近寄る。
「おい、お客さんが登場したぜ」
男は軽いノリで話しかける。
その黒いモノはゆっくりと起き上がると、カスク達の方を向く。
「・・・・・・」
黒いモノは何も言わずにカスク達の方をじっと見ている。
そのまま動きがないのでラーリスが一歩前に出て、
「あなた達が黒雲の元凶ですか?」
率直に質問する。
しかし、答えない。
「おーい、エラート。質問されてんぞ。答えてやらねえのか?」
「・・・」
エラートと呼ばれたモノは依然変わらずカスク達の方を見ている。
「しょうがねえなあ。お前、マジで思考止まってねえか?」
男が話しかけてもエラートは答えようとしない。
男はバリバリと頭をかいてから、ラーリスに向き直る。
「仕方ねえから俺が答えてやるよ。ザビルクズ大陸の神王さんよ」
「!」
ラーリスが驚愕する。
「・・私の事を知っているのですか?」
「あーー、まあな。そこの164歳の魔法使いを除いて、お前等そこの出身だろ」
レイミールが驚愕する。と同時に詠唱していた。
「火炎津波(ファントタイブ)!」
ドドドォッ
レイミールの指先から炎が溢れ出し、部屋の奥に突き進む!
フッ
男が軽く手を振ると、炎が押し戻される。
「くっ」
ケストエルが前に出て杖を振るうと、炎がかき消えた。
「んーなんだ。時間操るやつもいるのか」
男は片目を開けたままケストエルを見る。
「・・・あなたは一体何者ですか?」
「人に名前を聞くならって・・・俺にはそんなの意味ないか・・」
男はふうとため息をつき、
「いいよ、俺は・・・そうだな、ミスターフェアプレイって呼んでくれ」
「・・・フェアプレイさん・・・ですか・・・」
「おう、俺の事はそう呼んでくれ!」
作品名:神王ラーリスと魔王クラーゼスのRP 作家名:enuku