秘密
『小夜子へ
夏休み中は宿題を見てくれてありがとう。おかげで最終日に慌てなくてすんだよ。だけど、最終日に私がゆっくりしていたら両親が何度も宿題のことを尋ねてきて、うるさくて困ったよ。私はずいぶん信頼されているみたいです。
そういえば、遊びに行った帰りにびしょ濡れになってしまったけど、体調を崩したりしなかったかな。私は暑い時期だとああやって雨の中を傘を差さずに歩くのが好きなんだけど、それに付き合せてしまって大丈夫だったか、後になって心配になっています。』
『小夜子へ
進路のことだけど今は進学を考えています。が、親との兼ね合いなどもあってまだ決めかねています。やるべきことはやっておこうとは思っているけど、その先のことはきっとなるようになるでしょう。どうにもならない先のことで気を病むよりは、今を楽しみたいと考えているしね。
とにかく、私のことを気にしてくれてありがとう。小夜子と一緒にいられる時間は私にとって本当に貴重なものだと思う。だから、今小夜子と一緒にいられるこの瞬間を大事にしたい。これからいつまで一緒にいられるかはわからないけれど、離れ離れになるそのときまでどうぞよろしく』
そして母宛ての手紙は残り一通となった。それは他のどの手紙よりも擦り切れ、テープで何箇所も破れかけたところを補修されていた。インクはところどころ滲んで読み辛い。