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律姫 -ritsuki-
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novelistID. 8669
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夢見る明日より 確かないまを

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「おはよ、お待たせ」
「おはよう」
二人とも重いスポーツバックを持って、家の前に集合。
何年も前からずっと繰り返されていて当たり前の風景。
駅まで歩いて、電車に乗って、学校まで歩くのももうすっかり馴れて、電車の時間はもちろん、どの電車に乗れば何分に学校に着くのかまでわかってしまう。
まだ日が出たばかりの東へ向かう上り坂を、駅へ向かって二人で歩いていく。
「そういえば、最近尚樹がさー、なんか変なんだよね」
「尚樹が?」
「うん。ぜったいあれは好きな人でもできたんじゃないかと思うんだけど」
「うーん・・・」
いままでそういうのとは無縁そうだったから、上手く結びつかない。
誰にでも人気者だけど、逆に言うと特定の誰かと親しいイメージがない。
「俺さ、結構前に・・ってか5月くらいかな。尚樹の中学時代の経験話きいたけど、けっこうすごいんだよ。その尚樹があんなになってるってことは、よっぽど手ごわい相手なのかな?」
「え、その前に俺は尚樹のそんな経験話きいてないけど」
「あはは、人に進んで話したいもんじゃないだろうから、よっぽど無理に聞き出さないと話してくれないだろうねえ」
「そんなにすごかったのか」
「うん、なかなかだったよ。今度尚樹には内緒でこっそり教えてあげる」
それは、倫理的によくないんじゃないかと思う気持ちもあるが、やはりそういう話は気になるので曖昧に頷いておく。

「なんか、やっぱりだんだん寒くなってきたよねー」
季節はもうすっかり秋。制服のブレザーだけでは寒い。
「そうだな。もう高校生活も後半か」
「だねー。進路調査とか気が滅入るよね」
「この間、高校受験のために勉強してたと思ったんだけどな」
「孝志はもう進路考えた?」
「まだ全然。司は?」
「俺もまだ」
大学へ行くということは決まっているけれど・・・と二人とも困り顔。
「孝志はやっぱり理系?」
「多分。司は文系だよな?」
「・・・うーん」
得意科目でいえば、もちろん文系に進むのがいいのだろうけど。
まだ、決められない。
「ところで行田先輩って、どこの大学受けるんだ?」
生徒会を引退してからめっきり生徒会室に姿を現さなくなったから、孝志は行田の動向を知らない。
「俺も、詳しくはきいてないよ。国立受けるってことだけは知ってるけど」
本当は、第三志望と受験日まで知らされているけれど、それは言わないでおく。
「そうなのか。それじゃあ、最後まで勉強大変だな」
私立大学に比べて、国立大学の試験は遅いから勉強する期間も長いし科目も多い。
「ま、心配ないと思うけどね」
「それは同感」
どんな難しいことでもさらっとやりのけてしまうのがあの人だから。
「前はよく遊んでたみたいだけど、最近も会ってるのか?」
「うん、まあ・・・たまにはね」
隔週くらいのペースで会うけれど、それも黙っておくことにする。
行田の話をすると、嘘を重ねなきゃいけなくて嫌だ・・・。
「なにしてるんだ?」
「え?」
「いや。二人で出かけて何してるのかと思って」
「あー・・・買い物が多いかな。お昼前くらいにでかけて夕飯には帰ってくるコースだよ」
聞かれてもいないのに、言い訳みたいなことまで言ってしまう。
「あ、電車きたね。これに乗れるなら、今日は生徒会室寄ってから朝練いけるかな」
強引にでも話をそらさなきゃ、やってられない。




『今週の土曜、暇か?』
携帯にメールが来たのは、ハロウィンが終って街がリスマスムードになり始める頃。
「センター試験ってやつまであと2ヶ月らしいですけど、そっちこそ大丈夫なんですか?」
皮肉交じりにそう返す。
『たまには息抜きって必要だと思うぞ』
それをものともしない相手に苦笑しながら、承諾の返事を返した。