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律姫 -ritsuki-
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novelistID. 8669
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夢見る明日より 確かないまを

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「犯人捜しっていっても、どうするんだ?」
誰もいない1組の教室に場所をうつして、作戦会議。
部活はサボり。
「まあ、まず最初に叩いてみるのは決まってるよね?」
「埃が出そうなとこナンバー1やしな」
「え?」
わからない顔をしてるのは孝志だけ。
「じゃ、行こうか。多分まだ教室にいると思うし」
「せやな」
孝志は立ち上がる二人にならって、後をついていく。
二人は廊下をまっすぐに歩いて、6組の前で立ち止まった。
「6組?まさか・・・」
「ご明察」
「でもこの前は、違うって・・」
「だから、別に犯人だなんて言ってないよ。ただ叩けば埃が出てくるかなって言っただけで」
「まあ話してみればわかると思うで」
そういうと、教室の中に入っていく。
教室の中には3人。一人は教科書を広げていて、あとの二人は放課後の教室でおしゃべり。
用があるのは、教科書を広げている方。
おしゃべりに興じていた二人の方は、教室に入ってきた3人の異様な雰囲気に飲まれて教室を出て行った。
教室に残された一人は、自分は関係ないというポーズで勉強を続けている。
3人で彼の机の前に立って、声をかける。
「ちょっと、聞きたいことがあるんだけど」
やっと教科書から顔を上げた。
その顔はあきらかに青い。
「俺らがなんでここに来たか、わかってるみたいで何よりだよ、安東」
コツコツ、と音がする。安東恵がシャーペンを持って震えている。
その音は、シャーペンが机を叩く音。
「僕が・・・僕がやったんじゃないっ・・・」
「そう、じゃあ誰がやったの?」
安東が言葉に詰まる。
「やってないにしても安東も一枚かんでるんとちゃうの?」
「だってここでの俺と孝志の会話聞いてたのなんて、安東くらいしかいないよね?」
他にも何人かいたけど、そこは嘘も方便。
司の言葉からしばらくの沈黙の後、安東が握り締めていたシャーペンが机に落ちた。
「・・・僕はただ、なんか松下のこと教えてくれって言われて・・・この前の教室で聞いちゃったことを話しただけで・・・まさかこんなことになるなんて思わなかったんだよ」
「聞かれ方は『松下のこと』やなくて、『松下の弱みになること』やろ?」
「・・・」
無回答は肯定。
「で、その聞いたきた奴は誰?」
「・・・新聞部の小沢先輩」
ここまで口を割らせれば、十分だった。
「安東はなんでそんな先輩と知り合いなんだ?」
今まで一言も口を開いてない孝志が聞いた。
座ってる安藤相手に立ったまま話すんじゃなくて、しゃがんで安東と同じ高さの目線にしてる。
そこまでしてやることないのに、と残りの二人は思うが、口は出さない。
孝志に任せ、大人しく一歩下がる。
「別に、知り合いなわけじゃないよ。放課後教室で勉強してたらいきなり声かけられたんだ」
「なんで知り合いでもない先輩に情報を言ったりしたんだ?」
「・・・別に理由なんて、ないよ」
その歯切れの悪さは明らかに何か理由があることを表している。
「そっか。情報提供ありがとな」
そう言って孝志が腰を上げた。
「もういいの?」
司がそう声をかける。
「ああ。あとは黒幕のところにいけば十分だろ」
「せやな。知らんやつに情報漏らすなんて危険なこともうよしとき」
尚樹が安東にそう言って6組の教室を出た。
向かう先は、部室棟。

コンコン、とノックをするとドアの向こうからどうぞ、と声がした。
ドアを開けて、中に入る。
いろんなものがごちゃごちゃと積んである部屋だ。
部屋の奥に、一人の男の姿。おそらくこの人が新聞部の小沢先輩。
すらりと細い肉体に鋭利ともいえるような瞳。銀縁の眼鏡がその瞳をいっそう引き立てている。
「こんにちは。松下司くんに岡本孝志くん、もう一人は残念ながら知らないけれど」
「知らないままで結構です。あなたが小沢先輩ですか?」
怒りを隠そうともせずに司が言う。
「そうだけど?」
「いったいどういう了見であんな貼り紙をしたのかお聞きしたいんですけど」
「いきなり手厳しいね。まあ、座ったら?椅子はあと2個しかないから・・・関係ない君は出て行ってくれる?それとも松下くんはお友達がいなくなると不安で何もいえなくなるのかな?」
それが挑発だとわかっていても、聞き流せなかった。
「そういう言い方はないんじゃないですか」
孝志が言う。
「ええって、孝志。確かに俺は関係ない人間や。教室におるから」
尚樹が新聞部の部室を出た。
「これでよろしいですか?小沢先輩」
「そうけんか腰にならないで欲しいな。彼が関係ないのは確かなんだから」
「それで、質問に答えていただけますか?」
「いいとも。何だっけ?」
「どういう了見であんな貼り紙をしたのかってことです」
こういう交渉の役は大概司の役目。
孝志はおとなしく聞くだけに収まっている。
「掲示板にはみんなの知りたいことを伝える役目があるんだよ。今、全校生徒の関心は間違いなく君に向いてる。自分でもわかるだろう?だから全校生徒の関心のあることを伝えただけに過ぎない。新聞部は我が校のメディアだからね」
まったく悪びれることなく、そう答える。
「プライバシーの侵害です、それに別に俺たちは付き合ってるわけじゃない。幼馴染なだけです。捏造もいいところだ」
「へえ、幼馴染なんだ。それはいいことを聞いたかな。でも君たちが付き合ってるんじゃないかって言ったのは、君と同じクラスの安東くんだよ」
「安東が?そもそも、なんで安東に近づいたりしたんですか?」
「彼が一番有益な情報を提供してくれそうだったからかな。国立に落ちてしかたなくここへ来た彼。もちろん来たるべき中間テストでは1位がとれる、とらなきゃいけないと思っていた。なのに部活に生徒会にと勉強以外のことばかりやっている奴が1位をかっさらっていった。悔しかっただろうねえ」
「・・・それ、本人にも言ったんですか?」
その問いかけには、薄笑いの答えが返ってきた。
「俺たちを中傷するための記事を書きたかったんですね」
中傷のための情報集めをしているとしか思えない。
「まあ、そうかな。君たちっていうか、主に君を、ね」
司をまっすぐに見て、小沢が言った。
「俺に何かうらみでも?」
「アイドルのスクープはみんなが喜ぶものなんだよ」
「それだけですか?」
「うん」
あっさりと答えられた。
「もう金輪際俺たちのことを記事にしないと誓ってください」
「なぜ?」
「迷惑だからです」
「俺には何の得もないのに?」
「・・・じゃあ、何かと引き換えならいいんですか?」
「そうだな・・・ものによっては考えなくもないね」
「何がお望みですか?」
やれやれ、と言った体で司がきく。
こんな迷惑を何度も被るくらいなら、どんなに嫌なことでも少しで済ませてしまったほうがましだ。
・・・何か書かれて傷つけられるのは自分じゃない、孝志だから・・・。